静かなる叫び(原題POLYTECHNIQUE)

無差別殺人事件を被害者と加害者の目線で交互に描いた人間ドラマ。大げさな描写を避けている一方で、登場人物の描き方が薄く、作り手の意図とメッセージが伝わりにくい映画。38点(100点満点)

あらすじ

1989年12月6日、カナダ。モントリオールの理工科大学に通うヴァレリーと友人のジャン=フランソワがいつものように学校で過ごしていると、ある男子学生がライフル銃を女子学生に向けて発砲する。構内は一瞬でパニック状態となり、最終的に14人もの命が奪われてしまう。重傷を負ったヴァレリーと、負傷した学生を救ったジャン=フランソワは心にも深い傷を負い……。

yahoo映画より


文句

メッセージ」、「ボーダーライン」、「複製された男」、「プリズナーズ」でお馴染みのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による白黒映画。実際にあった大学での無差別殺人事件を基にした人間ドラマです。

被害者を描きたいのか、加害者を描きたいのかがはっきりせず、ジャンルや視点も定まっていないため、どういう映画にしたいのかしっくりきませんでした。

物語は、最初にライフルを持ってモントリオール大学に乗り込もうとしている男子生徒を映し、彼の心境をつづっていきます。そのまま彼目線でずっと話が進んでいけばいいものの、途中で視点は被害者生徒に切り替わり、それも一人ではなく、数人にバトンタッチしていくように描かれていきます。

そのせいで加害者のことも、被害者のこともろくに分からず仕舞いで、登場人物に深く切り込むことに失敗していました。見せ場といったら銃撃シーンに限ります。

加害者生徒は、フェミニストを心の底から憎み、特に女生徒を狙って問答無用に殺害していきます。その無慈悲なところと、無表情でライフルをぶっ放していく姿がリアルで、十分な恐ろしさを作り上げていました。

どうせならこの映画は銃撃シーンだけで、最初から最後まで行くぐらいでもよかったと思います。被害者を追うのなら、事件後、私は苦しんでます、みたいな描写だけでは不十分です。事件前と事件後の生活、考えの違いをもっと詳しく描かないと意味がありませんね。

一方で加害者の家族や友人は事件前と事件後ではどんな状況の変化があったのかも知りたかったです。全体的に情報が抜けている感を残してしまっているのが残念で、それならあえて登場人物を掘り下げないという手もあったのに中途半端に掘り下げたのがいけません。

似たような学校の銃撃事件の映画に「少年は残酷な弓を射る」というのがあるけれど、こっちのほうはちゃんと加害者少年を生い立ちから描いているから面白いんです。「エレファント」にしても複数の登場人物を通して銃撃事件当日に焦点をあてているからなかなか見ごたえがあるんです。

それにしても2009年製作のこの映画が、2017年にもなってどうして日本で公開されることになったんですかね。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が最近、日本で注目を浴びるようになってきたからなのでしょうか。

たとえ監督の名前に便乗したのだとしても、この映画はまず売れないでしょう。フランス語だし、ストーリーが抽象的だし、売れない要素が満載です。じゃんけんで後だししたのに負けた、みたいで恥ずかしいです。