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映画「怪物」は邦画LGBT作品最高傑作!ネタバレ感想

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普遍的な人間の光と闇をとても日本的に描いた文句の付け所がない映画。やっぱ是枝裕和すごいわって思わせる作品です。80点

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映画「怪物」のあらすじ

ある日、町で雑居ビルで大規模な火災が起こる。シングルマザーの麦野沙織は、息子の湊(みなと)と一緒に消火活動を自宅から他人事のように眺めていた。その日から湊に不審なことが起き始める。

突然、髪の毛を自分でばっさり切ったり、耳から血を流して学校から帰ってきたり、いじめを疑わせる出来事が続き、沙織は学校に事情を聞きに行くことにする。

沙織が校長や教員たちから話を聞いているうちになんでも担任の保利先生から息子が暴力を受けたということを知る。しかし保利先生は言葉を濁し、校長は暴力ではなく、間違いがあったと強調した。校長は最近孫を交通事故で亡くしたばかりで、まるで人間味がなかった。

一方で保利は、湊がクラスメイトの星川依里をいじめているのではないかと疑っていた。彼は生徒に優しく接して来たし、ちゃんと一人一人に向き合ってきたつもりだった。しかしクラス内でのいじめを見抜けていなかった。依里をいじめていたのは湊ではなく、別の生徒たちだったのだ。

ある日、保利は湊が教室で暴れているのを目撃し、抑えようとしたところ手が彼の鼻にぶつかってしまい、湊に鼻血を出す怪我を負わせてしまう。これがきっかけで保利は暴力を振るったことにされ、どんなに説明しようとしても校長もほかの教員たちも聞く耳を持ってくれなかった。彼らは事実関係がどうであれ、親に謝罪をして穏便に済ますことしか望まなかった。そんな中、保利は湊と依里の秘密を知り、自分が勘違いしていたことに気づくが、、、、

映画「怪物」のキャスト

  • 安藤サクラ
  • 永山瑛太
  • 黒川想矢
  • 柊木陽太
  • 黒田大輔
  • 森岡龍

映画「怪物」の感想と評価

真実」、「空気人形」、「そして父になる」、「海よりもまだ深く」、「万引き家族」、「三度目の殺人」、「海街diary」、「ベイビーブローカー」などで知られる是枝裕和監督による怖くて、重くて、悲しい人間ドラマ。複数の人物の視点によって同じ出来事でも「事実」が異なってくる様子を「怪物」というタイトルに乗せて表現した芸術とエンタメの両方の要素を含んだ名作です。

前半、これでもかというほど不快感を抱き、中盤になって自分の偏見に気づかされ、後半、それまでの伏線が回収されていく爽快感がありつつ謎を残して終わる演出が見事で、是枝裕和監督の才能と手腕に改めて驚かされました。思えば是枝作品って8割ぐらい良作ですよね。映画監督としては異常な成功率ですよ。駄作って言ったら「海街diary」と「ベイビーブローカー」ぐらいじゃない?

特に複数の登場人物の視点によって意味合いと解釈が変わって来る「羅生門」的手法がストーリーとテーマにがっちりはまっていて面白かったです。さらにそこに日本特有のいじめやそれに対する学校の対応の仕方を見せたうえで、世界的にも注目を集めやすいLGBT要素を絡めてくるところが憎いです。

そのおかげで普遍的なんだけど、日本的という作品に仕上がっていて、海外でも評価されると同時に、外国人には分からないだろうなあ、という部分も多々あって、カンヌ国際映画祭で賞は取りつつもパルム・ドールは逃しているのにも納得できました。ちなみに同年のパルム・ドールは「落下の解剖学」。

一つ嫌だったのは、パルム・ドールでクィア・パルム賞などという賞を受賞したがためにそれ自体がネタバレになっちゃってることでしょうか。事前に情報を入れずに鑑賞したけど、クィア・パルム賞を受賞したことだけはなんとなく知ってたので、ということはLGBT要素があるんだろうなあ、だとしたらこの子がそうなのかあって分かっちゃったもんね。

ただし、ネタバレがあろうとなかろうと、オチに重点を置いた作品じゃないので、なんならストーリーまるまる知ってた上で見てもまだ十分に楽しめると思います。それだけ演者の演技も演出も上手でした。

今までは全く印象になかったけど、本作では永山瑛太がいい仕事してましたね。序盤は腹立つキャラで、中盤以降は優しくて可哀想な先生、終盤は正義感溢れる役って感じで、一つの役ながら一人三役分ぐらいの表現をこなしていたのにはびっくりしました。

クズがたくさん出てくるのもいいですね。前半の学校職員、もれなくクズじゃないですか。クズもクズで見方によってはクズじゃなくなり、まともな人間に見えてしまうという人間社会を反映していて、人間の醜さが強調されていましたね。クズMVPを決めるとしたら教員の保利の立場がヤバくなったのを察知して、早々に彼を見捨てた彼女ですね。あいつはなかなかの薄情女ですよ。でも実際にいそうだから怖い。

校長先生の闇も深そうでしたね。スーパーで足をかけて子供を転ばせる場面とかホラーじゃないですか。あんな場面を目撃したら夜なんて寝れないよ。

演出の面では、火事は誰が起こしたのか、校長は孫を轢いたのか、ラスト二人は死んでしまったのか、といったように議論を引き起こす余韻をまき散らしているのが嫌らしくもあり、絶対鑑賞後「怪物 ラスト 意味」とかで検索する奴いるだろうなあって笑えました。もし検索してたらまんまと術中にはまったってことだからね。そういう意味でもいつもの是枝作品よりエンタメ度を上げてきたなあ、と感じました。

冒頭は火(火事)で始まり、最後は水(雨)で終わる、というコントラストもなかなかいいですよね。少年二人はキスぐらいしてもよかったんじゃないかなあ。あそこはもっと踏み込むべきだったんじゃないかなあ。キスした後に自分の中に宿る同性愛を湊が否定して、依里を押すっていうのがベストだったでしょう。

あのぐらいの年齢だと、好きか嫌いかの感覚でしかなく、「同性愛」と定義するのも正しいかどうかわからないです。別に本人たちはそれを「同性愛」と決めつけているわけでもなく、周囲が勝手にカテゴライズしているだけで依里をまるで病気のように扱っているのが社会の縮図のようでした。

今思うと不思議な感覚なんだけど、僕も小学生のとき、仲の良い同級生の男の子と結構がっつりキスしたことがありました。キス自体への好奇心だったのか、性の目覚めだったのか、その子のことが単純に好きだったのか、あるいは相手の男の子が同性愛者だったのかは今でもよく分かりません。そしてその子はその後田舎に引っ越したので、その体験も記憶も時間と共にフェードアウトしていって、いつしかほとんど思い出さなくもなりました。

それ以降も同性愛に傾倒することもなく、人一倍女好きになったことを踏まえると、ふとあれは一体なんだったんだろうって思うことがあります。そして本作の湊と依里の関係もそれに近いものがあったのではないかと僕の目には映りました。同性愛うんぬんじゃなくて、単純に一緒にいたかったし、一緒にいることが幸せだった、二人の場合、ほかに味方がいなかったというのも大きかったでしょう。

そこに理由や言い訳は不要で、自分を同性愛と認める必要すらないのです。特に二人だけの世界である鉄道車両の中では、世間の目を気にすることもなく、自分たちの気持ちを定義づけたり、形容するなんていう面倒なこともしなくていいのです。

でも一歩その世界を出たら、ステレオタイプの価値観でがんじがらめになった社会という名の地獄が待っていて、マジョリティーの迫害を受けることが分かっており、依里はそれすらもすでに受け入れる覚悟を持っていて、湊はまだまだそこまでは難しいという状況でしたね。

だからある意味あの鉄道は、二人を天国へと連れて行ってくれる乗り物として機能していて、そう考えるとラストも自ずと二人は二人だけの楽園へと走り去ってしまったと勘ぐってしまいます。そしてそれこそが二人にとって一番ハッピーなエンディングだったんじゃないでしょうか。

コメント

  1. エル より:

    これは去年の邦画で一番喰らいましたね
    終わった後の余韻が凄まじく、しばらくその場から動けなかったです。

  2. ちー より:

    期待通り素晴らしかったです。
    あぁ、これが日本が描くLGBTであり、学校という独特の社会なんだと改めて感じ、舌を巻きました。
    私も、特に学校での様子は日本社会の縮図、日本あるあるだから外国人にはいまいちピンとこないんじゃないかなあと思いました。

    映画序盤から引き込む力がすごく、安藤サクラ目線の前半は、子供を持つ母親の喜怒哀楽の全てを感じて息苦しくなるくらいでした。

    私はあそこでキスしないのが、またもや日本的だなあ、とプラス要因として受け取りました^_^