ベタな感動狙いの映画にひっかかる層にしかウケない、エセヒューマンドラマ。登場キャラがもれなく腹立ちます。11点
ザ・ホエールのあらすじ
英語教師チャーリーは肥満症のせいで自分で歩くこともままらないほど体の自由が利かなかった。彼は自分の外見を恥ずかしく思い、オンラインコースの生徒たちには自分の姿を見せないようにカメラをオフにして指導していた。
そんなチャーリーの面倒を見ているのは彼の友人であり、看護師のリズだ。リズは献身的に彼の家を訪れ、身の回りの世話をしてくれた。しかしうっ血性心不全で今にも死にそうなチャーリーを心配した彼女は病院に行くことを勧めるが、チャーリーはお金がかかるとして断固として拒否するのだった。
というのもチャーリーは離婚をきっかけに離れ離れになった娘のエリーにどうしてもお金を残そうと思っていたからだ。
ホエールのキャスト
- ブレンダン・フレイザー
- セイディー・シンク
- ホン・チャウ
- サマンサ・モートン
- タイ・シンプキンス
ホエールの感想と評価
「π」、「レクイエム・フォー・ドリーム、「レスラー」、「ブラック・スワン」、「ノア 約束の舟」、「マザー!」などでお馴染みのダーレン・アロノフスキー監督による人間ドラマ。同名舞台劇の映画化です。
肥満症で引きこもりの男が、いつ死んでもおかしくない健康状態のまま、周囲の人々の同情を買いながら娘と仲直りしようとする偽善感動ポルノで、共感よりも嫌悪感を抱く作品でした。邦画でよくある余命数ヶ月の末期がん患者のストーリーと同じ臭いがプンプンします。
プロットは子供用のプール並に浅く、演技は学芸会レベル。中途半端に同性愛ネタを使ってはLGBTにゴマをすりつつ、アジア人を起用しヘイト問題にも考慮し、できあがったのがこの駄作です。最後まで見るのに結構苦労します。
まず、主人公チャーリーのキャラがかなり鬱陶しいですね。彼はもともとの体質的な肥満症ではなく、自分のパートナーが亡くなったことでやけ食いを起こした末に肥満体型になったらしく、いわばゆっくり自殺しているみたいな設定になっていました。
本作はいわばそんな主人公を哀れに思わすことで感動を誘うのが目的なんですが、同情できる箇所が一つもないので感動しようがありませんでした。だって本人がそれを望んでいるんだったらどうしようもないし、勝手にしろよって話じゃないですか。
ダイエットもせず、生活習慣も変えず、周囲のアドバイスも聞かず、体調を崩そうとも決して病院には行かず、死ぬという選択をするのなら、それはそれで彼の人生でしょう。
ただ、チャーリーの場合、誰にも迷惑をかけずにひっそりと死ぬのではなく、自分の死を餌にして周囲の注目を集めて構ってもらおうとするんですよ。「みんな、見てみて僕もうすぐ死ぬからね。ね、可哀想でしょ? だから僕の最後の頼みを聞いてよ」みたいなノリなんですよ。
それはまるで自殺をほのめかして別れたパートナーの気を引こうとする奴みたいですごく卑怯な手だなあ、という気がしました。
実生活にもいるじゃないですか、こういう奴。「私、もうなにするか知らないからね。死んでやるんだからね」とかいう奴。
友人の看護師に身の回りの世話をしてもらってるのに助言は一切聞きません。自分が捨てたせいで疎遠になった家族とは仲直りがしたいらしく、特に娘とは最後に時間を過ごし、彼女のことをもっと知りたいんだそうです。それも娘には嫌われてるからなんとか注意を引こうと自分の貯金をあげるからとお金をダシにする、という姑息な手段を使おうとします。
娘も娘で何がしたいのかよく分からないキャラになっていて、自分から父親に会いに来たくせに終始まるで無理やり連れて来られたかのような態度で、敵対心むき出しで彼と接しているのが意味不明でした。にも関わらずお金の話をされるとコロッと態度を変えて、一緒に時間を過ごそうとします。親子揃ってアホですね。
そもそも娘のことを知りたい、仲良くしたい、失われた時間を取り戻したい、という気持ちがあるんだったら食生活変えろよって。死のうとしているのにまあまあ色々な願望や愛着や執着があるってどういうことよ。どうでもよくなったから死を選択したんじゃないの?
なにがせめて彼女にしてやれることはお金を残してやることだ、だよ。だったらもったいぶらないで生前贈与すればいいじゃん。そうじゃなしに「お金あげるからパパと一緒にいてよ」って、気持ち悪ぅ。
物語が部屋の中でしか展開せず、ずっと同じ暗い部屋の景色なのもこの映画を退屈にしています。映像の暗さはラストシーンの明るさのコントラストに使われているんだけど、それが効果的というより、致命的なミスになっていました。
絵的につまらないとなると、後は会話と演技で勝負するしかないんだけど、会話は平凡で、演技もいまひとつでしたね。娘と宗教家の男の子の絡みとかいらないじゃん。あいつらの会話、あれなによ。
結局のところブレンダン・フレイザーが太った、というちょっとした話題性しか生みませんでしたね。これでアカデミー賞主演男優賞獲ってるんだから、ちゃんちゃら可笑しいです。
コメント
自分もこの作品を観ました。
終始暗く、不愉快でちっとも面白さや感動を感じなかったのでレビューに共感できました。アロノフスキー監督作品はインパクト重視の作品が多いけどこれは大いに外れだったと思います。
「エブエブ」しかり、今年のアカデミー賞は「時代」に媚び過ぎて、全く納得できない結果だったと思います。もう権威も何もあったもんじゃなくなりましたね。
ところで当該作品の話と逸れますが、映画男さんはネットフリックスの「殺人犯の視聴率」はご覧になりましたか?
最後まで観てもなんだかモヤモヤするし、不気味な内容だったけど、情報量がハンパなくて、面白かったし、何かと考えさせられたしで非常に興味深いドキュメンタリーでした。
ブラジル在住の映画男さんがどう思われたかを聞きたいので、もしご覧になったらご感想をお聞かせ下さい。
「殺人犯の視聴率」の事件はuブラジルで有名なので知ってます。だから今更見てもあんまり衝撃はないかなあ。
今日見てきたところですが、つまらなくて何回か寝ました。映画男さんのおっしゃること、まさにそれ。良かったあ、感動しない私は変なのかなと思ってたから。主人公は同じようなことグダグダ言ってるし、登場人物の誰にも共感できない。アメリカ映画に登場する若い娘ってみんなジコチューで主張の激しいタイプ。取って付けたようなアジア人女優のキャスティングにもうんざり。せめて美人看護師で目の保養をさせてもらいたかった。映画終わったら隣に座ってた女性が涙を拭いていたので「なんで?」と思いました。
これは寝ても仕方ないです。ほんと、「なんで泣くの?」って映画ですね
こんにちは。本作、まだ予告しか見てませんが、看護師の話は聞かないのに、娘には振り向いてほしいなんて、ワガママだなぁと思います。ここに対する「批判視点」があるならまだしも、それが「美談扱い」されてしまうと、モヤりますね。以前、「自然派治療」に拘って、病院で治療を拒否して亡くなった、とある親子の実話を思い出しました。
また、設定を見ていると、何となく邦画の『こんな夜更けにバナナかよ』を思い出しました。主人公が動けない、余命僅か、24時間体制でケアが必要な点とか。後は、『ギルバート・クレイプ』の主人公の母親でしょうか?
まぁ、作品同士が「似てしまう」ということはよくありますが、それぞれが「独自の視点」を持っていれば良いんですけどね…
勿論、「余命僅かや障害」=「感動ポルノ」という訳ではないですが、伝えたい点のバランスをどこに置くかで視聴者の感想は大きく変わってしまいますよね。改めて難しいジャンルなんだなぁと思いました。
闘病映画は難しいジャンルですよね。感動狙いだと特に
後悔や自尊心欠如で辛くて死にたいけどその勇気もなくただただ自罰的に生きるしかない苦しみ、己を恥ずかしく思い贖罪の欲に駆られる気持ちなど(主人公)や、周りを振り回すほど怒りに満ちて己の情緒が自分自身にすら理解できず、その混乱からくる攻撃性(娘)を知らない(心にそれらを感じたことがない)方々には、ザ ホエールはこういう風に映るのだな、と興味深くご感想拝読しました。
事実、私が本作品を鑑賞した際に「ここで起きていることとかけ離れた生き方をしてきた人にほど刺さらない作品なんだろうなあ」と思いながら観ていました。
(「私は悲劇のヒロインで貴方は何も辛い思いしてきてないですね」と言いたいのでは全く!本当に全く!ないということをご理解いただければ幸いです)
貴重な記事、ありがとうございます!
主人公はなぜ、そこまで太る必要があったのか?パートナーが死んだから?その理由、白い帽子の女と似ているよ。観ていて全く同情できない。アカデミー賞て…どこに感動したのか教えて欲しい。実はパートナーなど愛してなかったとしか思えない。愛してたら、きちんと生活して供養してるはず。墓参りはどうなってるんだ!娘も意味不明。宣教師との絡みはさらに…意味ないやん。最後に宣教師を助けたぽいけど、伏線ぽいけど、それが感動か何かを狙ってるのか?母親もだ。彼を恨んでるのに思い出話しにホロッとしてるシーンは、ホントにこのストーリーで納得して演技してるのか、君たちは?と問いたい。アランの妹もアジア人てとこが意味ありげでいて、これから面白くなる、なにかの伏線かな、と期待もしたが…。宗教団体もな、つまらんよ。ホエールって題名は、主人公の身体がクジラみたいだからだよね。老人と海とか、インテリな筋らしかったけど、主人公の身体のことだよね、と思った。俳優さん達、ほんとに上手かった。こんなストーリーを真に迫って演技してて、仕事だからやってるんだろうな、と感心した。
色々、意味不明でしたね
感動するどころか、ギャーギャー騒いでるだけで、みんなが何がしたいのかよくわからなかったです。
途中何度も寝てしまいました。
寝て当然の映画ですね
wowowで観ました。映画館行ってたら後悔してたね。何度か途中で観るの止めようと思ったけど、一応アカデミー作品なんで何かあると思って最後まで観たけどマジでつまらん映画でした。エブエブ(最初の20分で強制終了)もやけど、この年のアカデミー作品はマジで最悪ですね。
最近のアカデミー賞はおかしいのが多いですね