ちょっとした怖さと気味悪さ、そして謎を解いていく満足感のある上質のホラー映画。楽しみながら怖がりたい人にはいいと思います。75点
ウェポンズのあらすじ
ペンシルベニア州メイブロックで、教師ジャスティン・ガンディが担任する小学校3年生のクラスの児童17人が、午前2時17分に突然自宅から走り出て姿を消した。残されたのは、アレックス・リリーただ1人だった。
事件からほぼ1か月後、校長マーカス・ミラーは児童失踪に関与したのではないかとの地域住民の疑念を受け、ジャスティンを停職処分にする。うつ状態に陥り、孤立したジャスティンはアルコール依存に逆戻りし、既婚の元恋人で警察官のポール・モーガンに慰めを求める。
ある日、唯一クラスで行方不明にならなかったアレックスの身を案じ、ジャスティンは彼を自宅まで尾行する。すると窓が新聞紙で覆われ、両親が暗闇の中で動かずに座っているのを目撃する。彼女はマーカスに安否確認を求めるが、再びアレックス宅を訪れた際、車の中で眠ってしまう。夜半、アレックスの母親がよろめきながら家を出て車に乗り込み、ジャスティンの髪の毛を一房切り取った。
一方、失踪した子供マシューの父親アーチャー・グラフは、警察の捜査の遅さに業を煮やし、独自の調査を始める。監視カメラ映像を確認した彼は、マシューと別の子供が走る経路がある地点で収束していることに気づくが、行き先は特定できなかった。偶然にもジャスティンとアーチャーはそれぞれ、失踪した子供たちと道化のような化粧をした謎の女の夢を見る。しかしそれがなんなのかはわからなかった。
パトロール中、警官のポールは麻薬中毒の浮浪者ジェームズを窃盗未遂で逮捕するが、車載カメラの前で暴行したため釈放せざるを得なくなる。その後ジェームズはアレックス宅に忍び込み、地下室でアレックスの両親と失踪した子供たちが昏迷状態でいるのを発見する。5万ドルの懸賞金欲しさに警察へ通報するが、報告を恐れるポールに追われ、森へ逃げ込む。逃走中、例の女とすれ違い、テントに隠れるが捕まってしまう。ジェームズは失踪児童の居場所を知っていると訴え、ポールは彼を車に手錠でつなぎ、アレックス宅に向かうことにする。
学校に現れた謎の女は、アレックスの大叔母で一風変わった世話役のグラディスだった。校長のマーカスが安否確認を主張すると、彼女は話を濁すばかりで核心に触れようとしなかった。後日、グラディスは突然マーカスの家を訪れ、家の中にずかずか入ってきたかと思うとボウルに水を入れてくれと頼んだ。そしてなにやら怪しい儀式を始めたのだった。
ウェポンズのキャスト
- ジョシュ・ブローリン
- ジュリア・ガーナー
- オールデン・エアエンライク
- オースティン・エイブラムス
- キャリー・クリストファー
- エイミー・マディガン
ウェポンズの感想と評価
ザック・クレッガー監督によるエンタメ度高めのミステリーホラー映画。最初から最後まで視聴者の集中力を切らさず、テンポ良く話が進んでいくのが心地よく、話の続きを知りたくなるようなストーリー構成になっているキモ怖い作品です。
物語の掴みが上手で、冒頭のシーンでいきなり強い興味をそそられました。というのも、ある晩、とある田舎の小学校のクラス全員が一人を除いて同時に行方不明になるという怪奇現象が起こったというぶっ飛んだエピソードからストーリーが始まるからです。それも子供たちはどうやら自分の意思で家を飛び出しており、その様子が防犯カメラに収められていたのです。
彼らはみんなちょうど同じ時間帯に両手を広げながら暗闇の中へと走っていき、そのまま行方が分からなくなったらしく、姿を消したのはなぜか特定の一クラスの生徒だけでした。そこで担任の女教師に責任があるんじゃないかと両親たちが責め立てはじめ、女教師はその学校にいられなくなる、という流れが素晴らしかったです。
クラス全員が一人を除いて同じ時刻に行方不明になるというゴリゴリのフィクションと、なんの責任もない教師が生徒の両親たちから理不尽な非難を浴びるという現代にありがちなリアリティーが上手に混ざっていて、ぐいぐいと話に引き込まれました。その後の展開も文句のつけようがなく、釘づけにされましたね。
ストーリーのポイントは、生徒たちに一体なにがあったのかというのと、なぜ一人だけ無事な生徒がいたのかという点で、複数の登場人物の視点で少しずつその答えを導きだそうとする演出、脚本が見事です。あのストーリーテリングのおかげで結構終盤まで、核心部分が分からない仕組みになっていて、かといって退屈せず、じれったくもならず、ほどよいペース配分がされていましたね。
一体どんなホラーなのかというと、ずばり黒魔術系のホラーです。最近で言うと、「トーク・トゥ・ミー」と同じ系統かな。話や設定は全然違うんだけど、呪いとかそっち系の話で、見たことあるようでなかった新鮮味や斬新さを感じられました。この手の話ってすでにあると思うんだけど、まさに「ウェポンズ」ともいえる呪いの使い方がよかったです。
キャストの中ではヒロイン役のジュリア・ガーナーとジョッシュ・ブローリンが素晴らしい仕事をしていました。しかしそんな二人のパフォーマンスを押しのけ、とんでもない存在感を発揮したのがグラディス役のエイミー・マディガンでしょう。もう風貌も話し方もキャラもぶっ飛んでて最高でしたね。あんな気持ち悪い婆なかなか見る機会ないです。でも本当にいそうだから怖い。
「なんだよこの婆は!」ってこんなに言いたくなる映画も珍しく、登場シーンから最後の最後まで翻弄されっぱなしで、おばあちゃんの恐ろしさを見せつけられましたね。ただし、お前の目的はなんなんだよっていうのと、今までどうやって暮らしてきたんだよっていう突っ込みどころはあったし、あんな奴が家族、親族にいたら、すぐに「関わらないほうがいいよ」って噂になるだろって思いました。
アメリカでR指定がついたらしく、もしかすると、とんでもないグロさとなんならお色気シーンもあるんじゃないのかと期待して見たんですが、その点についてはどちらも大したことなかったです。おそらくR指定になったのはラストの見せ場のシーンが原因でしょうね。あれはグロいはグロいけど、ちょっと爽快な感じと滑稽さも相まって素敵なグロさがありました。そのほかは目を覆うようなシーンは一つか二つです。もちろん小さな子供にはおすすめできないけど、中学生、高校生ぐらいは見ても全然大丈夫じゃないかなあ。ダメかなあ。
いずれにしてもこれは売れるでしょ。久々に見た面白いホラー映画でした。
コメント
こんにちは。久しぶりの高得点作品ですね。キャプチャーのおばあさんの顔が、キラークラウンことジョン・ウェイン・ゲイシーに見えました。子供が行方不明という筋書きもどこかオマージュなのかなと思う感じです。(シリアルキラー話でなかったらすみません。)日本でも公開されるといいですね。
シリアルキラー話じゃないですが、オマージュの可能性はありますね