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英雄の証明は完成度の高いイラン映画!ネタバレ感想

この記事は 約5 分で読めます。

話の構成が素晴らしすぎて文句のつけどころがない作品。映画が好きならハリウッド映画じゃなくて、こういう映画を見たほうがいいです。78点

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英雄の証明のあらすじ

ラヒムは借金を支払えず刑務所に服役中のシングルファザー。そんな彼は仮出所中、婚約者が見つけたかばんの中に入っていた金貨を売って返済にあてようとするも寸前で考えを変え、かばんの主を探すことにする。

ラヒムはかばんが落ちていた周辺に張り紙を配って回った。張り紙には刑務所内の電話番号を書いておいた。するとある日持ち主が現れ、ラヒムが取った行動が刑務所内で称賛されるようになる。このストーリーにメディアが飛びつき、たちまちラヒムは英雄のように持ち上げられた。

しかし一連のストーリーに対して首をかしげる男がいた。ラヒムに金を貸しているバハラームである。バハラームはラヒムが自分の名誉回復のために話をでっちあげたのではないかと懐疑的だった。バハラームはラヒムの元義理の兄でもあった。妹がラヒムと離婚したことで二人の関係性は悪化していたのだ。

ラヒムのストーリーがメディアで取り上げられると、その反響からラヒムの借金返済のためにチャリティー団体が動き、寄付を募ってくれた。刑務所もラヒムの釈放のために協力してくれた。

ところがラヒムのストーリーがフェイクニュースなのではないかといった噂が広がり始め、チャリティー団体の斡旋で働くことになっていたラヒムの仕事先がストーリーの裏付けを取ろうとし、かばんの持ち主を連れてくれるように要求するのだった。

英雄の証明のキャスト

  • アミール・ジャディディ
  • モーセン・タナバンデ
  • サハル・ゴルデュースト
  • マルヤム・シャーダイ
  • アリレザ・ジャハンディ
  • サレー・カリマイ
  • サリナ・ファルハディ

英雄の証明の感想と評価

セールスマン」、「彼女が消えた浜辺」、「ある過去の行方」、「別離」、「エブリバディ・ノウズ」などで知られる、アスガー・ファルハディー監督による人間ドラマ。カンヌ国際映画祭のグランプリ受賞作品です。

毎度質の高い映画を撮るアスガー・ファルハディー監督ですが、今回もいつも通りのハイクオリティな内容になっていました。

ほぼほぼ脚本と演技だけで勝負していて、なんら派手なシーンはありません。それでも面白いです。ほんと、どうやったらこんなストーリーを思いつくのか不思議でしょうがないです。まるでおとぎ話や昔話のようなシナリオを現代社会に絶妙に当てはめていて最後まで話にくぎ付けにされました。

イラン社会、あるいはアラブ社会を象徴する出来事がベースになっていて作品を通じてイランを知れるのもありがたいです。

まず、驚いたのはイランでは借金の未払いが理由で刑務所に送られるんだそうです。なんでもイランの法律は、小切手の不渡り、結婚持参金の未払い、銀行融資の未返済をなどを理由に債務者を容赦なく収監するそうで、本作の主人公ラヒムもそうした理由から刑務所送りになった一人でした。ある意味、決して人を金銭的に騙すことができない法律とも言えますね。

そんな厳しい社会において借金を返せず刑務所に行くということは人生の汚点となり、不名誉になります。しかしながら主人公のラヒムは借金を抱えながら大金(金貨)が入ったかばんを拾ったのにも関わらず持ち主に返したことで称賛され、思わぬところで名誉挽回をしてしまうのでした。

それがきっかけでラヒムに対する社会の評価が一転し、そうかと思ったら今度はかばんの話はフェイクだと炎上し、再びどん底に突き落とされる、というのがあらすじです。

人に対する社会的評価や物差しがいかにいい加減なものなのかを上手に描いていて、それによって褒めたたえたり、手のひらを返して冷たくなる人々や調子に乗ったり、暴走したりする主人公が興味深いです。

ただ、ラヒムは調子に乗りすぎるところがあって話を盛りすぎてましたね。根は悪い奴じゃなさそうだけど、アホだから肝心なところで失敗するタイプです。なによりポンコツのくせに変にプライドが高いから要所要所で失態を犯すんですよ。

婚約者が見つけたかばんを自分で見つけたと言っちゃったり、かばんの持ち主が出てこなかったから自分の婚約者に持ち主のフリをさせたり、借金をしている相手に暴力を振るったり、そんなことしたら後々大変になるでしょっていうのが想像つかないんですかね。

面子やプライドや名誉を重んじる社会の面倒臭さが光っていて、特に男たちは自分の名誉を守るためなら不名誉なことまで平気でする、というパラドックスに堕ちっているふしがあります。その結果、なにが嘘で、何が本当か分からないレベルにまで話がこんがらがっていくのが見事でした。でももとをたどると、なんてことのない落とし物を返したっていうだけの話なんだけどね。

イランでは落とし物を返すのが普通じゃないのかなあ。それが普通だったらあんなに大騒ぎしないと思うんですよね。例えば僕の住むブラジルではお金を拾って警察に届けたら、それがニュースになるんですよ。

つまりそれだけ正直者が少ないっていうことなんだけど、イランほど厳しい国だったら落とし物も返して当然と言う認識があってもよさそうですけどね。

それでもラヒムが称賛されたのは、借金を抱えていたのにねこばばせずに返した、というプラスアルファなシチュエーションがあったからでしょうか。いずれにしてもあんなアホな男だったら借金も返済できなそうだし、借金取りのおじさんが怒るのも無理はないです。だってあいつ、借金あるのに再婚しようとしてるんでしょ。まず、返してからにしろよ。

コメント

  1. ISHIMAMI より:

    他の作品もそうですが、アスガー・ファルハディー監督は人のちょっとした行動や、考え方を突っ込んで描き、小さな綻びが取り返しのつかない結果になるのを、じわりじわりと見せてくれます。私たち観客も最初はその糸口を傍観しているだけですが いつの間にか 取り返しのつかない方向へ進んで行き、半ば 恐怖にも似た気持ちで劇中に入り込んでしまいます。

    宗教、習慣が違う世界の 人の考え方や行動を見るたびに考えさせられる監督です。ラストの長回し、もうどうにもならない、と諦めたような、達観したような 主人公の表情が 今も心に残ります。

  2. きのこ食べ過ぎ より:

    「ウォーデン」とか「ジャスト6・5」とか、イラン映画の良作多いですね。
    イラン在住経験のある日本の女性漫画家の話だと、今でこそ「イスラム原理主義」的なイメージの強いイランですが、実際市井の人達はあんまそういう意識なくて、むしろ「うちら古代ペルシャの末裔だし~」みたいなプライドの方が強いそうです。
    要するに、「いやいや、石油成金の遊牧民上がりと一緒にされてもw」みたいな、大阪を蔑む京都人的なプライドが。

  3. 岩清水 より:

    ほとんど警察出てこないですね。当事者同士で解決を図ろうとするとめますよね。それから就職希望先の人事担当があんなに威張ってて詮索するのが驚きです。