仮想世界の歌姫がDV親父を倒しに行く、というなんのこっちゃいな話。いつから映画ってストーリーがなんでもよくなったんだろう、ということを考えさせられる作品です。0点
竜とそばかすの姫のあらすじ
高知の田舎に住む女子高生の鈴は、幼い頃に母親を水難事故で亡くし、父親と二人暮らししていた。母親の死後、鈴は心を閉ざし、父親ともほとんど口を喋らなくなっていた。昔は明るく、社交的だった彼女も今ではすっかり内向的になり、人付き合いが苦手だった。
あれだけ音楽に夢中になり、歌を好きだった鈴は歌さえ人前で歌えなくなっていた。そんな鈴に幼馴染の忍だけは優しくしてくれた。でもイケメンで人気者の忍に自分なんかが釣り合うわけがないと思って積極的に接することができなかった。
そんなある日、鈴は「U」と呼ばれる仮想世界を使い始め、「ベル」という名前で登録する。鈴は仮想世界の中なら臆せずに歌うことができた。
ベルの歌声に多くのユーザーが惹かれ、彼女は一躍有名になった。瞬く間に世界的な歌姫となり、彼女がライブを開けば世界中の人々が聞きに集まった。
数億人のユーザーが集まるコンサートを開いたとき、突然会場に邪魔が入った。「竜」と呼ばれる謎のユーザーは自警団「ジャスティス」に追われていた。竜の体は痣だらけで、鈴はどこか彼に興味と親近感を抱いた。
竜は「U」の中では秩序を乱す存在として批判の対象となっており、「U」から排除されようとしていた。そんな竜を鈴は助けてあげたいと思うになる。
竜とそばかすの姫のキャスト
- 中村佳穂
- 成田凌
- 染谷将太
- 玉城ティナ
- 幾田りら
- 森山良子
- 清水ミチコ
竜とそばかすの姫の感想と評価
「未来のミライ」や「バケモノの子」や「時をかける少女」の細田守監督による、ナンセンスミュージカル。幻想的な絵に心地よい音楽をかぶせればとりあえず売れる、と思っている人たちが作った低クオリティー映画です。
あまりにもつまらないので10回に分けて見ないと、とても最後まで見れません。冒頭で仮想世界の説明をしてから現実世界に入るっていう作りが「サマーウォーズ」と全く同じで、パラレルワールドの設定は「未来のミライ」や「バケモノの子」の路線と一緒だし、セリフリメイクかよっていうぐらいアイデアが進化していません。
ストーリー構成が絶望的で、まともな脚本が書けないんだったら他の人に書かせればいいのになんで監督本人が書き続けるのかが謎でした。
- 舞台は田舎
- 主人公は学生
- 学校ではさえない存在
- 悩みやトラウマを抱えている
- 片思いの相手がいる
- あることをきっかけに成長する、または世界(誰か)を救う
最近の邦画アニメって基本全部これですよね。手を変え品を変え、毎回同じストーリーを買わされてるって消費者は気づいたほうがいいですよ。毎回、お金を払って同じまずいものを食わされてるのに全然怒らないんだな日本人って。
本作がダメな点はどれだけ話が進んでもストーリーの方向性が全く定まらないことです。色んなストーリーラインを引きすぎて、もはやなんの話なのかが見ているこちらに伝わらないのです。
お母さんが死んだエピソード、同級生に恋するエピソード、仮想世界のエピソード、ヒロインが歌うことが好きなエピソード、竜が仮想世界で暴れているエピソード、DVを受けている少年のエピソード、少年を救出するエピソード、どれもつながりがないんですよ。
お母さんの死んだトラウマはなにか解決したんですか? 恋は実ったんですか? 仮想世界はなんだったんですか? 音楽活動はどうなったんですか? DV親父は逮捕されたんですか? 結局、なにも解決されてないのに解決された態でハッピーエンドみたいに終わっていくでしょ。
細田守監督って映画における伏線を、公園で鳩にあげる餌かなんかと思ってるんですか? ばら撒けばいいってもんじゃないから。
僕的にはもう冒頭の仮想空間「U」の説明でつまづきました。
仮想世界<U(ユー)>はこの世の知性をつかさどる5人の賢者「Voices」によって創造された究極の仮想世界。アカウント数50億を突破し、なお拡大を続ける。
あのさ、フェースブックですら28億とかなのに50億って盛りすぎじゃない? 世界人口何人の設定なんだよ。世界中のおじいちゃん、おばあちゃんもやってるわけね。
「U」が仮想世界というだけしか分からず、ユーザーは何をして楽しむのかはっきり見えないところで、いきなりヒロインがアカウント作った直後に歌い出したりするんですよ。それでみんながそれを聞いてくれて、一気に世界的に有名になるっていうね。Youtubeに試しに一本動画出したら1億再生行きましたみたいな話ですよ。
世界中にいる50億人が24時間同時接続してるっていうイメージなのかなぁ。そんでもってみんなに全ユーザーのマイクの音が拾われるってことだよね。じゃないとベルがいきなり歌い出して、「お?」ってならないもんね。とんでもないやかましい世界じゃないですか。誰がそんなサービスを利用するよ。
外国人ユーザーが文章を書くときは母国語なのに、喋るときは日本語になるっていうご都合主義もさすがです。それに全世界のユーザーが日本人の女子高生のベルの歌に興味を持ってるんでしょ? 世界の中心は日本なんだあ、すごいね。
アバターを作って匿名で遊ぶサービスなのに自衛団の独断で個人情報をほかのユーザーに開示されちゃうっていうのが最高ですね。裁判所の開示命令とかじゃなくて、一般ユーザーによる自衛団だからね。奴らに目をつけられたらアンベイル(正体を明かす)されちゃうんでしょ? どんなリスキーなサービスだよって。
ベルと竜のやり取りは、ディズニーの「美女と野獣」そのまんまだし、オマージュというより、訴えられてもいいんじゃないかなぁ。あまりディズニーを舐めない方がいいですよ。
ベルが竜の正体を知りたいっていう発想がよく分からなかったですね。そもそもお前が実社会で自信がないから仮想世界で自分の正体を隠して伸び伸びやってる側の人間なのに、同士ともいえる竜の正体を突き止めたいっていうのはどういう神経から来るものなんだろう。誰もがみんな秘密を持っている、とか言ってる本人が他人の秘密には土足で入っていくっていうね。それでそこからいつしか「救いたい」などという結論に至るのがぶっ飛びすぎてました。
救いに行くのは結構なんだけど、無力な女子高生が会いに行くだけでよその家のDV問題が解決できちゃうと思ってるんですかね。私がハグすればきっと大丈夫、みたいなノリがむかつきますね。こういうのを見て真似しちゃう高校生とか出てこないよね。心配だわ。
細田守監督がなんで仮想世界にこだわるのかさっぱりです。将来的にメタバースを予言したとか、「竜とそばかすの姫」で描かれたことが現実になった、とか言われたいのかなぁ。AKIRAみたいに神話化、カルト化、または後世に語り継がれることを狙ってるんですかね。
とはいえ設定がこのレベルの詰めの甘さだからストーリーは目をつぶるしかないです。となると楽しむにはキラキラした絵に見とれるとか、歌声にうっとりするぐらいしか方法はなくなります。それでいい人にはいいんだろうけど、ちゃんとした映画だと思って見た人には気の毒な作品といえるでしょう。ただ、あまり文句ばかり言ってると僕のオリジンもアンベイルされちゃうので、このぐらいにしておきます。
コメント
細田作品が高く評価されていた初期作は、実写映画でも評価される脚本家の奥寺佐渡子さんが脚本を手掛けていました。
勘違いした監督が、「バケモノの子」あたりから自ら脚本に手を出し始め、今の惨状に至るという流れです。
あちゃー
映画男さん今晩は。実はリクエストした作品でした。ご覧になってくださってありがとうございました。点数は大体予想できていたので、映画男さんならこう評価するだろうなと思いました。
問題点はご指摘なさる点そのもので、納得です。まともに仕事をしているのが主演の中村佳穂さんの歌唱パートと、監督下のアニメーターさんくらいで、もう本監督作品からは卒業しようと決心しました。もう細田監督は脚本にダメ出しできるスタッフを雇うか、もう専門家に書いてもらって、作画や演出に回った方が良いと確信しました。
細田監督の描く「リアリティ」は中途半端で、観ていて必ず「引っかかる」場面が出てきます。監督が描きたいことを描くのは表現の自由ではありますが、そのためにキャラのリアリティラインを無理に曲げていて、違和感だらけです。どうも彼の世界では、大人も公的機関も信用ならない存在か、既に絶滅種なんでしょうね。既にスタジオが彼のワンマンショー状態で、彼もスタッフも作品を俯瞰的・客観的に見れていないのではないか、と感じます。
また、取り扱う題材(片親家庭・親の死・児童虐待などのセンシティブなもの)に対するリスペクトや配慮を感じません。3年周期という短いスパンで作品を作っているせいか、ろくに取材していないのがバレバレです。
大変申し訳ないですが、今の彼には「リアルな時代考証や人物描写が必須」な歴史アニメ・戦争アニメ・社会派アニメは描けないと思います。
さらに、ディズニーアニメの美女と野獣のトレパクや名前のパクリ問題も、指摘なさっている観客が結構いらっしゃいました。ベルのキャラデザは公式に担当されている方がいらっしゃるので、まだ良いんですが、トレパクはマズイでしょと突っ込みたくなりました。
リクエストいただいてたこと忘れてました。すみません。最後まで見るのかなりきつかったです。日本の監督は一度売れるとあとは落ちていくだけみたいな人多いですね。
映画男さんお返事ありがとうございます。いえ、此方こそ、ここまでつまらない作品をリクエストしてしまい、大変申し訳ございません。今後は、もっと「面白い」作品を探しますね。
そうですね、確かに「一度売れると落ちていく」映画監督は多いですね。だから、「あまり期待しすぎない」という反面教師作品にはなったと思います。でも、出来ればそういう思いはあまりしたくないです。
客観的ですばらしい分析でした。一部の作品ヲタがアホ丸出しな人格攻撃に逃げてるコメも抱腹絶倒な醜態でひたすらあわれでした。
人格攻撃多いですよね
劇場で観(させられ)ましたが、観ているこっちの頭がおかしくなりそうになりました。
こんなに意味不明な脚本に予算が付く日本アニメ界は不思議です。。
不思議ですよね。またそれがそこそこ売れちゃうっていうのが怖いです。
スッキリしました、感想をありがとうございます!
息子にせがまれて観に行ったけど、すぐに「なんだこりゃ」となりました。チケット代と時間が惜しくて惜しくて…。
もう二度とみたくないです。
ほんと、なんだこりゃ、な映画ですね。
これ序盤で帰りたくなるくらいしんどかった
一応金払ってるから最後まで見たが、監督はなにを伝えたかったのだろうって感想。
まんま美女と野獣だし、姿晒したライブはトロールズの終盤ライブと被るし、DV男のとこへJK一人で行かすとか危険すぎるだろう
あれもやりたいこれもやりたいでグチャグチャだね
おっしゃる通り、DV男のもとへ女子高生一人で行かせるって周囲の大人たちの感覚がやばいですよね。
批判言うのは簡単だね(笑)
じゃあお前がこれ以上に売れる映画作ったらええやん(笑)
頑張れ!
はい、でたでた。
お前はまずいラーメン食わされて、その店主におんなじ事言われて納得すんのか?
じゃあ、お前が俺より美味いラーメンつくったらいいやろって。
ほんまに厨二くさい奴。
都合悪いと何も言い返せないの草
皆さんおっしゃるように監督は脚本から手を引いた方がいいと思います。
ただ私はテンプレートに忌避感はそれほどありません、この作品に於いても大まかな骨組みは良かったと思います。
問題は出来事→結果への流れが適当すぎです。「これがやりたかっただけ」ってくらい途中経過、心境が少しずつ変わる所の描写をすっ飛ばしています。
そこがまともに考えられたら、どうでも良い所で派手な演出したり、電話繋がっただけの事で、サマーウォーズで衛生の落下阻止した時のようなテンションで喜ぶ奇妙なシーンは生まれなかったし、諸々の無駄で所々2Dアニメーションでごまかすシーンが出る事も無かったと思います。
脚本書ける人が少ないんですかね、日本は。
・悩みやトラウマを抱えている
・あることをきっかけに成長する、または世界(誰か)を救う
この2つは邦画に限らず、あらゆる創作の基本要素です
誘われて細田作品を初めて見ました
映画男さんの言われていることにほとんど同意です
監督がこういうネタ入れたいというのが一つ一つ混ざることなく表現されているというかぶつ切りです
歌は素晴らしかったと思うので母の死を乗り越え人前で堂々と歌えるようになるという歌姫の部分だけに話を集中して欲しかった
というかそこだけもっと丁寧に見たかったという感じです
せっかく仮想世界でワールドワイドな活躍をしていたのに、DV問題を解決しに行くのが日本国内というのも何ともスケールが小さいと思う
外国人も日本語で話していたので助けに行くにしても海外に行くのかなと思ってました
同級生が見てすぐ場所が特定できるような映像なのに何で今まで分からなかったのかとも思います
外国人が日本語話しているのは私はおかしいとは思いません
この世界ではリアルタイム翻訳技術が出来ているのでしょう
それにこの映画が外国で上映されれば吹き替え版は全てその国の言葉になると思うので、日本映画としては外国人が日本語話すのは許容範囲です
>心境が少しずつ変わる所の描写をすっ飛ばしています。
うーん、むしろこの映画は鈴の心境の変化しか描いてないと思う。
他のキャラクターの心理描写は最低限に制限されてる。
何でこんなに人によって見方が変わってしまうのだろう。
この映画は作中にヒントがないことが最大のヒント、つまり現実世界の延長や比喩が設定に仕込まれている気がしてならない。
例えば、母親が川に飛び込むシーンは東日本大震災時の津波の際に起きた様々な事例を思い起こさせるし、ジャスティンのキャラクターはアメリカニズムを表してるし、鈴と例の人物との対峙は天安門事件やニューヨークの少女像を想起させる。
ご都合主義はあるんだけど、このクソッタレな現実世界の中で人々が望む希望をファンタジーとして描きたいんだなと受け止めた。