つまんなくはないけど、決して面白くはないフランス映画。細かいことは一切説明しない主義で押し通し、そのせいでいまひとつノレないSFファンタジーです。40点
動物界のあらすじ
近未来、突然の変異により、一部の人々が人間に似た動物に徐々に変わり始める。人はそれを新生物と呼んだ。この病は年齢や性別を問わず、誰にでも発症する可能性があり、研究者たちは途方に暮れていた。
フランスでは、エミールと彼の料理人の父、フランソワが、変異して新生物になった母ラナを追って南部に引っ越す。ラナは新しく建設された治療施設に送られることになっていた。エミールは、母親が自分を襲い、顔を引っ掻いたというトラウマを乗り越えられず新生物とはできるだけ距離を置こうとする。
やがて父とエミールは森の中で二体の新生物に遭遇。一体は鳥のようなもので、もう一体はカエルのような子どもだった。
そんなある日、体育の授業でエミールが一人で綱引きに勝ったとき、彼は自分に超人的な力があることに気付き、後に爪の下から爪が生え始め、変異が始まったことを知る。恐怖を感じたエミールは、施設に送られることを恐れて、父にはこれを隠すことに決める。しかし、日々進行する変異により、動物的本能が強くなり、エミールは父と一緒に見つけた新生物の場所に助けを求めに行く。最初は躊躇していたものの、鳥男「フィックス」はエミールが彼に助けの手を差し伸べることで少しずつ信頼を寄せるようになる。その間、エミールはクラスメートのニナとも親しくなった。
フランソワはラナを見つけるため森の中に入っていくとそこで息子の自転車を見つける。そのときフランソワは、息子の体に異変が起きて自転車に乗れなくなったことを悟った。家のシンクのパイプからは歯と毛を見つけますますそれが確信に変わった。エミールを助けようと、フランソワは目立たないようにする方法をアドバイスするも、変異が進行していく中で、エミールは自分の正体を隠すのが難しくなっていく。
動物界のキャスト
- ロマン・デュルス
- ポール・キルシェ
- アデル・エグザルコプロス
- トム・メルシェ
- ビリー・ブラン
動物界の感想と評価
トマ・カイエ監督による、とっ散らかったSFファンタジースリラー。とある病にかかると、人間が動物の体になってしまうという設定の下、訳の分からない世界の中で方向性を見失った物語が進んでいき、最後に特にオチも用意していない作品。
テーマはずばり、もし自分の家族が動物に変身する奇病にかかったら、です。愛する人が狼だとか、鳥だとか、カメレオンのような姿になり、言葉も話せなくなっても、それでもあなたはまだ愛せますか?といったような疑問を投げかけて来るジメジメした暑苦しさがあります。
そのくせ動物の姿をしたクリチャーが一体何をしたいのか、また人間がクリチャーたちに対してどういう態度を取るのかが曖昧なせいで、テーマがぼやけるんですよね。これでバチバチに人間VSクリチャーが戦争になっていたら、それでもあなたはクリチャーに化けた家族を愛せますかというテーマが生きるんだけど、そうじゃないからね。クリチャーもクリチャーで人間を好んで襲うわけでもないし、人間もクリチャーを虐殺する気はなく、施設に入れるとか甘っちょろいことを言っていて中途半端でしたね。
こんな映画はゴリゴリのモンスター映画にしてやればいいんですよ。「グエムル漢江の怪物」みたいにさ。なにを芸術を混ぜて社会問題を反映させてるんだよって。挙句の果てには人間もクリチャーも共存するべきだみたいな意見まで飛び出すし、自国民と移民の構図になってて笑えました。あるいはパンデミックを連想させるものもありましたね。いずれにしても社会風刺とかいらないから。
あとなんでゴリゴリに鳥に化けた奴がいつまでもズボン履いてるんだよって。言葉を話せなくなって空を飛べるようになった時点でズボン脱げよ。いつまでも羞恥心だけは人間かよ。
あと、ちゃんと何が原因で変異が起こるのかを説明したほうがいいよね。嚙まれたらなるとか、引っ搔かれたらなるとか。じゃないと恐ろしさが伝わってこないでしょ。「あ、噛まれた!」とかハラハラすることもないし。だってある日突然病気になるんだったらなんでもありじゃん。それならいっそのことクリチャーを追いかけてる警官たちも途中でクリチャーになったりしないと。息子を逃がそうとしているお父さんが息子より先に化けてもいいし。
雰囲気はあります。なんだか気持ち悪いとか、不気味とか、怖そうみたいな。でもこれといった着地点がないせいで、何がしたいのかわからない家族を長々と追って、え、それでよかったの?というエンディングを見せられて終わっちゃいましたね。
一番謎なキャラクターは女性警官でしょう。なぜかあいつ、フランソワのことやたら気にかけてたよね。あの感じだと、普通は男女の仲になるのにそうもならないし、あの女の匂わせぶりといったらないです。家まで来たりして抱かれる気満々だったのかなあ? ちょくちょく絡んでくる割には別に重要な役柄でもなかったよね。まじでなんなんだ。
ところでお母さんを探すっていうゴールはどうなったの? 途中からお母さんはそっちのけで息子をどうしようみたいな話になってたじゃん。息子も森に逃がしたら、それでいいわけ? お父さんは何で満足そうな顔をしてたんだよ。何一つうまく行ってないのに。
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