2018/01/07

アイ、トーニャ(原題I, TONYA)

フィギュアスケート選手トーニャ・ハーディングの半生をつづった壮絶な成功と転落の物語。登場人物たちの愛情が薄すぎて、主人公が可哀相になってくるストーリーです。71点(100点満点)

アイ、トーニャのあらすじ

1991年のフィギュアスケート全米選手権。トーニャ・ハーディングはアメリカ人として史上初めてトリプルアクセルを成功させた。この偉業はトーニャの名前と共に不朽の業績として後世に語り継がれていくはずだった。

しかし、1994年に事態は暗転する。リレハンメル五輪のアメリカ予選で、トーニャはライバルのナンシー・ケリガンを襲撃して出場不能に追い込んだのである。この事件によって、トーニャの業績を正当に評価することが困難になってしまった。

順風満帆のキャリアを歩んでいたはずのトーニャが何故このような愚行に至ったのか。その影には幼少時からトーニャに言葉の暴力を振るってきた母親、ラヴォナの存在があった。

wikipediaより

アイ、トーニャの感想

ミリオンダラー・アーム」、「ラースとその彼女」などでお馴染みのクレイグ・ギレスピー監督によるトーニャ・ハーディングの伝記映画。

主演のマーゴット・ロビーの演技がいいし、スポーツものでは珍しく、競技シーンがすごく上手く撮れています。

例えばボクシング映画の試合シーンってひどいじゃないですか。でもこの映画はスケートのシーンがすごくいいんですよ。ところどころCGが使われてるのは分かるけど、ほとんど気にならないぐらい上手く撮れていました。どうやって撮ったんだろう。

1994年に起きた「ナンシー・ケリガン襲撃事件」のことを覚えている人が見たら、懐かしさと新しい発見に興奮すること間違いなしです。

「ナンシー・ケリガン襲撃事件」のことを知らない人のためにざっと説明すると、アメリカのフィギュアスケート界の二大スターの一人がヒットマンを雇ってライバル選手を襲わせて大怪我をさせた事件です。

日本のフィギュアスケートで例えたら安藤美姫がやくざに頼んで、浅田真央を襲撃して膝を壊すみたいな話です。あくまでも例えですよ。安藤美姫が悪そうとかそういうんじゃなくてね。

事件の当事者であるトーニャ・ハーディングはアメリカ女子では初めてトリプルアクセルを決めた伝説的な選手で、世界では伊藤みどりに次いで二番目にこの偉業を達成した人物です。

そんなすごい選手が実はめちゃくちゃ育ちが悪く、父親は幼いときに家を出て、母親からはずっと虐待を受けてきた、という過去があったのです。

フィギュアスケートの選手って裕福なイメージがあるからかトーニャ・ハーディングの生い立ちは衝撃でしたね。

特に母親のモンスターぶりには唖然を通り越して、冷酷すぎて笑えてくるレベルで、トーニャ・ハーディングは殴られるのは当たり前で、練習中母親にトイレにも行かせてもらえずスケートリンクでおしっこをもらしながら滑らせられたり、挙句の果てには口論の末にナイフで腕を刺されたりもしています。

そんなトーニャ・ハーディングにとって暴力は日常茶飯事のことで、初めて付き合った恋人からもまもなく手を上げられます。それでも幼い頃からそれが当たり前で育ってきた彼女は悪い男と縁を切れないのでした。

そしてライバルのナンシー・ケリガンを脅してやろうという計画を立てたのも後に夫となるこの男で、最初は脅迫の手紙を送る程度だったのが、第三者に依頼するうちに話がこじれて、襲撃事件にまで発展したようです。

ライバルはなにがなんでも蹴落とすという態度がアメリカっぽく、氷の上で美しく滑るのを競う競技にも関わらず、舞台裏では美しさとはかけ離れた醜い争いが行われている、という皮肉がたまらないです。

劇中のトーニャ・ハーディングは悪態はつくは、審査員には詰め寄るはまるで獣のようで、品のなさや態度はフィギュアスケートに相応しいとはいえないでしょう。

その一方で貧しくて大会のときに着るドレスすら買えず、自作のドレスで出場し、そのせいで審査員たちから不公平な採点を受けるなど、数々の逆境を乗り越えてきたチャレンジャーでもあるわけです。

そうした彼女の姿を見て、同情を覚えるか、嫌悪感を抱くかは意見が割れるでしょう。僕的にはスケートに関していうと、よくもあの環境から這い上がったなあ、と脱帽しました。すごいよ、あのファイティングスピリッツは。

結果的にライバルを襲うことになったのは褒められたもんじゃないけど、自分の感情に正直で、かわいそうなぐらい間抜けで、家族愛に恵まれなかったトーニャ・ハーディングに人間味を感じるのでした。

ラストにはトーニャ・ハーディング本人の演技の映像が流れます。そのときの彼女の動きがまたキレキレで、鳥肌立ちますね。あのパフォーマンスを維持できなかったのが悔やまれます。

ちなみにトーニャ・ハーディングとナンシー・ケリガンは事件後、TV番組の企画で再会しています。ナンシー・ケリガンもよく対談を許したよなぁ。出演を断ってもいいし、なんならトーニャの顔を引っぱたいてもいいでしょ。

ちなみに現在の二人はこんな感じです。

ナンシー・ケリガン

トーニャ・ハーディング

色々あったけど、二人ともよくあの中で戦ったよなあ。多くの人にとって五輪は戦場なんだ、ということを改めてこの映画で気づかされました。

平和の祭典だとか、正々堂々戦うべきだ、なんていうけど、そんな甘っちょろいこと考えてるのは日本人ぐらいなんじゃないの?

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう