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「下衆の愛」はキャストがいい!感想とネタバレ

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インディーズ映画の底辺で暮らす人々にスポットライトを当てた、滑稽で、無様で、愛らしい物語。59点(100点満点)

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下衆の愛のあらすじ

映画監督テツオ(渋川清彦)は実家で暮らしながら、映画祭での受賞経験という過去の栄光にすがって生きている。彼は大した仕事もせずに女優を自宅に連れ込んでは、快楽にふけるだらしない日々を送っていた。

ある日、才気あふれる新人女優のミナミ(岡野真也)と出会う。それを機に創作意欲が湧き出したテツオは、プロデューサー貴田(でんでん)やパッとしない女優の響子、ハメ撮りで稼ぐ助監督マモルらと共に新作製作に動き出すが……。

シネマトゥデイより

下衆の愛の感想

ダブルミンツ」、「ミッドナイトスワン」、「身体を売ったらサヨウナラ」などの内田英治監督によるコメディードラマ。売れたい女優と女優とやりたい監督たちが繰り広げる映画業界あるあるを面白おかしく描いた群像劇です。

物語は、売れない映画監督のテツオを中心にテツオの才能を信じて、彼の映画作りに携わるスタッフや俳優たちを追っていきます。

女とやることばかり考えているテツオは、ある日オーディションで才能豊かな女優ミナミと知り合います。ミナミの演技に魅せられたテツオは彼女を主役に抜擢し、映画作りに励むようになります。

ところがミナミはまもなくしてテツオではなく他の有名監督と男女の仲になってしまい、テツオは好きな女と才能のある女優を同時に失ったことに絶望を覚えます。

そんなときテツオに手を差し伸べたのは彼のことを信じる仲間たちだった、、、というのが筋書きです。

基本、登場人物たちはみんなダメ人間です。性欲だけは強い映画監督、役をもらうためなら誰とでも寝る女優、映画論ばかり語るケチなプロデューサー、ハメ撮り動画を売って金を稼ぐゲイの助監督などなど。

いずれも憎めないキャラクターばかりで、なによりみんな映画に振り回され、そして映画を愛しているのが伝わってくるのがいいです。

中でもテツオのダメっぷりが光っていて、いい歳して実家暮らしで、家に平気で女を連れ込むは、妹には馬鹿にされてるは、母親からは死んだほうがましだと言われるは、家の中では誰からもリスペクトされていません。

そんな彼が唯一自分の存在意義を感じられる場所が劇団で、いつか映画で一発当ててやろうと企んでいます。

テツオは俳優たちの前では偉そうな態度を取り、人の脚本を自分が書いたものにしたり、教会に製作費をせがみに行ったり、女の貯金を使わせたりと、下衆いエピソードに欠かせないキャラクターです。

売れている監督を見ると、商業映画はダメだとか、魂を売っただのといって嫉妬心を燃やす負け犬精神なんかもあるあるですよね。

一見華やかそうな映画監督の生活が実際は平凡で、自堕落で、格好悪くて、憧れるのに値しない、という描き方に好感が持てました。

それでも「映画という女に惚れてしまったからどうしようもない」という、辞めたくても辞められない、惨めで、情けなくてもこれしかない、という映画に生きる人たちの人生を感じさせる内容になっていました。

そんなストーリーのバックからは、人生といえばブルースだろ、ってな感じに渋い主題歌が流れます。これがまたいい味出していました。

下衆の愛のキャスト

なんといっても俳優たちが実力者揃いですね。こういう人いそうだなあ、というリアルな面子ばかりでした。

響子 – 内田慈(うちだちか)

まず一番注目して欲しいのは、役をくれそうな監督なら誰とでもやってしまう枕営業を得意とする女優、響子役を演じた内田慈。

この人、めちゃくちゃ演技が自然で上手いです。テツオから迫られて、笑いながら断るシーンとかめちゃくちゃリアルです。「恋人たち」にも出演していますが、素晴らしい演技を見せています。

貴田 – でんでん

日本映画界の名わき役。でんでんもまた色んな映画に出ていますが、どこにでもいそうなおじさんの役を上手くこなしますよね。本作では映画について熱く語るプロデューサーをさらっと演じています。

冷たい熱帯魚」では怖すぎるペットショップ屋のオーナーを演じていましたね。

マモル – 細田善彦

テツオのアシスタント的な役割をこなす助監督マモルには細田善彦が起用されています。人一倍映画のことを愛し、またテツオのことを密かに思い続けている一途なゲイという役柄で、怒ったときと泣いたときの演技が見事でした。

ミナミ – 岡野真也

無名の劇団員から一気にスターダムにのし上がっていくミナミ役は岡野真也。彼女の演技を見て監督がびびるといったシーンがあるものの実際の演技力はいまひとつという感じ。ただ、有名になっていくにつれて徐々に垢抜けていく感じは上手く出せていましたね。

加納巧監督 – 古舘寛治

この人も名脇役。本作ではおっとりした性格の売れっ子映画監督役です。コメディーもシリアスな役もでき、喋り方がとにかく自然ですよねぇ。「淵に立つ」ではマジな性格の男を演じていました。

楓 – 山崎祥江

バンドマンと別れたその日に監督と付き合うことになった女、楓は山崎祥江が演じています。ぶっ飛んだ男に惚れやすい性格が見ていて面白く、山崎祥江は彼女のキャラにマッチしていました。

テツオ – 渋川清彦

そして本作の主役がこの人渋川清彦。最近、色んな作品に出ていますね。作品によって演技にむらがあり、当たり外れがある俳優ですが、この作品は当りの方でした。

下衆の愛まとめ

簡単にいうと、間抜けで、泥臭くて、格好の悪い登場人物たちを笑い飛ばす映画です。暴力シーンはあっても残酷じゃないし、裸のシーンは多くても決して色気はない、ソフトなゲスムービーでした。

夢を追いかけている、というと聞こえが良すぎるほど、登場人物たちはみんな計算高く、自分のことに必死です。それでも人間らしい彼らが発せられる言葉にはときおり名言染みたものもありました。

「一回味わうと抜け出せないぞ。映画はシャブよりもタチが悪いからなあ」

「映画は戦いだよ。闘争だよ。頑張ろうよ。映画文化、この国からなくなっちゃうよ」

ただ、下衆の口からどんないい言葉を言われても全然響かないっていうのが笑えます。それがまたいいです。

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