ラスト・タンゴ(原題UN TANGO MAS)

タンゴ界の大スターであるカップルの人生をつづった、大人向けのドキュメンタリー映画。話も面白いし、ミュージカルとしてただ流しておくのも良さそうです。68点(100点満点)

ラスト・タンゴのあらすじ

アルゼンチンタンゴの代名詞的存在として知られるマリア・ニエベスとフアン・カルロス・コペスは、お互いまだ10代のころに出会った。ほぼ半世紀にわたりダンスペアを組んで苦楽を共にしてきた二人だが、長い時間の中で愛し合うこともあれば、憎み合うこともあった。そんな彼らの長年の歴史を、証言をベースにしたタンゴダンスなどを通じてひもとく。

シネマトゥデイより

読者のポピーさんのリクエストです。ありがとうございます。

ラスト・タンゴの感想

ヘルマン・クラル監督による、タンゴ界を代表するペアのインタビューと再現映像を交えたミュージカルドキュメンタリー。愛と憎しみとエゴと人生を感じさせる、どこか悲しい映画に仕上がっています。

タンゴの重鎮マリア・ニエベスとフアン・カルロス・コペスにフォーカスを当てていますが、主人公はマリア・ニエベスと言ってもいいでしょう。

ほとんどのシーンが彼女のインタビューで構成されていて、フアン・カルロス・コペスはおまけのような扱いになっていました。つまりのところ女性目線、マリア・ニエベス目線のタンゴ人生劇場になっています。

10代で出会った二人は恋に落ち、プロのタンゴダンサーになり、公私共に長い時間を共に過ごしてきました。その間にはしかし喧嘩が絶えず、愛し合ってはまた衝突するといったことを繰り返しながら、ついに男女の関係が破綻します。

それでもダンサーとしてはペアを続け、プロとして世界中の舞台に立つのでした。結局、フアン・カルロス・コペスは他の女性と結婚し、その女性との間に子供が生まれます。

マリア・ニエベスは長年のパートナーが自分から離れていったことに絶望を感じ、嫉妬を覚えながらも踊り続ける、というのがおおまかなストーリーです。

インタビュー映像と再現VTRを交互に流す形で物語が進んで行くのですが、物語をタンゴで表現しているため、ミュージカル映画という見方もできそうです。

映像が美しく、特にブエノスアイレスの夜景がいいです。そしてなにより昔を思い出しながら喜びと悲しみに暮れれる感情豊かなお婆ちゃん、マリア・ニエベスのキャラが良くて、映画としては最高の題材になっていました。

マリア・ニエベスの恨み節や未練タラタラ感に人間味があり、ずっとタンゴとパートナーのフアン・カルロス・コペスばかりを追いかけた末、独り身になった彼女の後姿が孤独なアーティストの末路を見せ付けられたようでした。

都会のアパートで一人タバコをふかし、物思いにふけっている彼女がまたいい絵になっていましたね。

奇しくもマリア・ニエベスとフアン・カルロス・コペスがペアを解散したのは日本公演の後だったそうです。最後の公演を終え、スピーチで締めくくったマリア・ニエベスはトイレに駆け込んで吐いたそうです。

あまりの緊張と大事なものを失った実感がともなったことが吐き気を引き起こしたのでしょうか。それでも舞台の上では堂々たる振る舞いを見せてるんだから、やっぱりプロだよなぁ。

僕が一番最初に住んだ外国はアルゼンチンだったので、何度かタンゴを見に連れて行かれました。自分からタンゴに興味を持ったわけではないので、連れて行かれたというのが正しい表現だと思います。10代の若者にはタンゴの良さなんてちっとも分からなかったのです。

僕は当時アルゼンチンのロックに夢中で、同年代のアルゼンチン人の友達の中にもタンゴを聞いていた人はいなかったように記憶しています。

おそらく現在でもアルゼンチンの若者でタンゴを聴く人は少数派でしょう。一部の若者たちやおじちゃんおばちゃんたちから深く愛され続ける音楽。それってなんか日本の演歌みたいですよね。

年を重ねてからもタンゴに興味が向くことはありませんでしたが、この映画を見て、ちょっといいなあと思ってしまいました。

よく見ると、タンゴって男女がかなり体を密着させ、キスする寸前まで顔を近づけ、目をじっと見つめ合う、なかなかエロティックな踊りなんですね。

あんなふうに踊っていたらパートナーのことを好きにならないほうがおかしいでしょう。そして一度好きにさせたら一生自分の虜にさせてしまうフアン・カルロス・コペスはなかなかの罪深い男です。まさに「女は踊りで落す」ってやつですね。

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