2017/07/29

ダンケルク(原題DUNKIRK)

銃弾や爆弾が飛び交う中、登場人物たちが生きるか死ぬかの決死の生存劇を繰り広げる実話ベースの戦争アクション。久しぶりに見た名作です。81点(100点満点)

ダンケルクのあらすじ

イギリス軍の若い兵士トミーはほかの数人の兵士と共にドイツ軍に銃撃され、命からがらダンケルクのビーチにたどり着く。

ビーチでトミーは死亡した兵士を砂浜に埋めようとしていたギブソンと出会う。まもなくしてドイツ軍の空爆が始まり、二人は怪我人を担架に乗せたふりをして船に乗り込もうとするが、あえなく船から降ろされてしまう。それでも二人は諦めず防波堤の柱に隠れ、次の船を待つことにする。

イギリス海軍の命令で民間の船やボートにまで救助の要請が出ると、ドーソンは息子とジョージを乗せて、自らダンケルクへと救助に向かう。

途中、海に墜落した飛行機からパイロットを助けたドーソンたちは、パイロットにダンケルクに戻るのは危険だと引き止められる。

しかし強い使命感を持ったドーソンたちは何が何でもダンケルクに戻ると告げると、パイロットと舵を奪い合う事態に。そのせいでジョージが転倒し、頭を強打してしまう。ダンケルクが目の前に近づいて来るにしたがい、ジョージの意識は朦朧していく。

空ではイギリス空軍の戦闘機スピットファイアー三機がドイツ軍の戦闘機と遭遇していた。ところが三機のうちリーダーの機体が打ち落とされ、ファリアーが指揮を執ることに。

まもなくもう一機の機体も追撃されると、ファリアーは一人ドイツ軍機に立ち向かわなければならなくなる。しかし彼の戦闘機に残された燃料はあとわずか。引き返すか、それとも戦うか。戦火の中ファリアーは命がけの選択に迫られる。


ダンケルクの解説とレビュー

ダークナイト」、「トランセンデンス」、「インターステラー」のクリストファー・ノーラン監督による戦争映画。フランス最北端の町ダンケルクの海岸を舞台にドイツ軍に包囲された連合軍たちによるノンストップサバイバル劇です。

序盤に数行のテロップが流れるだけで説明はほとんどなく、最初から最後まで緊迫した戦闘シーンをセリフを最小限に抑えて、ほぼ映像のみで伝えています。

実際に第二次世界大戦中に起こった「ダンケルクの戦い」を基にしており、ドイツ軍のフランス侵攻によってダンケルクの海岸にまで追い詰められた約30万人の兵士の救出作戦を中心に描いています。

従来の戦争映画と違うのは、軍人の戦う勇姿にフォーカスしているのでなく、あくまでも銃撃の中を逃げて逃げて逃げまくる様子を映しているところでしょうか。

登場人物の勇敢さとか友情とか家族愛といった部分も強調しておらず、一応名前は付いているものの、ひとりひとりの名前もわざとらしく何度も呼び合うこともなかったです。

登場人物たちはそれぞれあくまでも30万人の兵士の一人といった扱いで、誰か一人を格好のいい英雄に仕立てあげる手法を使っていないところに好感が持てました。

強いて言えば、パイロット役を演じたトム・ハーディが自己犠牲を払ってみんなの命を救う男前の役柄だったかなというぐらいで、後は誰がどうとかあまり関係がなく、個人よりも戦いの全体像に力を入れて映していました。

映し方もユニークで空、海、陸の3つの視点から「ダンケルクの戦い」を伝えていきます。その3つのアングルが目まぐるしく入れ替わり、多少時系列が前後しながら、話が進んでいきます。

特に空の映像の迫力がすごく、飛行機が傾くたびについつい自分の体まで動いてしまうほどでした。対する海の場面は、溺れるか撃たれるかの恐怖との戦いです。

タイタニックの事故なんて比べ物にならないほど何度沈没するんだよってぐらい乗る船乗る船が全て撃沈されます。

兵士たちもやっとのことで船に乗れたかと思ったら爆弾を投下されて海に飛び込むはめになったり、とにかく心休まる暇がないので、見ていてクタクタになりました。

劇中、永延に流れ続ける時計の針のようなカチカチカチBGMがとても効果的で、終盤に登場人物の身の安全が確保されてから音がピタッと止む演出が最高です。あの音のせいで心臓が余計にバクバクしましたね。

少ないセリフの中で印象的だったのは無事生き延びた兵士たちに国民が声をかけて励ます下りです。

兵士たちを見て「よくやった!」とエールを贈る国民に対して、兵士の一人が「(よくやったもなにも)俺たちはただ生き延びることしかしてないけど」とふてくされたように話すのでした。

やはり国に仕える軍人としては戦いに勝って褒められたい気持ちがあるのでしょう。それなのに自分たちはただ逃げ回ることしかできなかったという葛藤。

民間のボートに助けてもらった軍人たちが「僕らはあなたたちをがっかりさせたよね」と残念そうに言ったのも忘れられません。本来なら国民を救うのが任務の彼らが民間人から逆に助けてもらったことは彼らにとっては決して美談にはなりえないのです。

救出作戦は成功だったけど、戦いには敗れた。その複雑な心境を抱えた兵士と国民の温度差がリアルです。

クリストファー・ノーラン監督は最近いまいちな作品ばかりが続いていました。しかし本作で名誉挽回しましたね。僕の中では今まで「メメント」や「フォローイング」が彼の最高傑作でしたが、間違いなく今ではこの作品がトップです。

僕は基本ストーリー重視で映画を見るので、これほど映像重視の作品に魅せられたのは初めてかもしれません。戦争映画の中でも名作の一つに数えられそうです。この映画はぜひ映画館で見てください。

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