仲の悪い家族をじっと観察するだけの舞台劇風人間ドラマ。カナダの若き天才グザヴィエ・ドラン監督のいまひとつな作品です。40点(100点満点)
たかが世界の終わりのあらすじ
劇作家として成功したルイ(ギャスパー・ウリエル)は、家族に自分の死が近いことを伝えるために12年ぶりに里帰りする。母マルティーヌ(ナタリー・バイ)は息子の好物をテーブルに並べ、幼少期に会ったきりの兄の顔が浮かばない妹シュザンヌ(レア・セドゥ)もソワソワして待っていた。さらに兄アントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)とその妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)も同席していて……。
シネマトゥデイより
読者のブルージャスミンさんのリクエストです。ありがとうございます。
たかが世界の終わりの感想
「Mommy/マミー」、「トム・アット・ザ・ファーム」、「胸騒ぎの恋人」、「わたしはロランス」、「マイ・マザー」、「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」などでお馴染みのグザヴィエ・ドラン監督の作品です。
口の悪い家族たちが口論するだけの話で、「8月の家族たち 」のフランス人バージョンといった感じの内容になっています。
物語は、次男のルイが家族に死が迫っていることを告げるために12年ぶりに実家に帰り、久々に会った兄妹や母親とぎくしゃくして、散々な一日を過ごすというものです。
ストーリーは本当にただそれだけで、家族のまとまりのない会話が延々に繰り返されるだけです。元ネタは同名の舞台劇らしく、そのせいか終始いかにも舞台っぽいオーバーな演出がされているのが目に付きます。
母マルティーヌをはじめ、兄のアントワーヌ、妹のシュザンヌの全員が口が悪く、会話の中には汚い言葉のオンパレードです。確かにああいう家族はラテン系の国の貧困層によくいますが、それをずっと見せられるのは結構きついです。
彼らは事あるごとに口論になり、罵り合い、また仲直りする、というかなり消耗するライフスタイルを送っていて、その度合いが病的な域に達していました。
唯一、温厚なのは兄アントワーヌの嫁のカトリーヌぐらいで、主人公のルイがまともにコミュニケーションが取れるのが血のつながっていない彼女だった、というのがなんとも皮肉は話です。
全体的にどうしようもない家族のネガティブな話なので、見ていて楽しいかといったら楽しくないです。
かなり引っ張って引っ張って、ラストにとんでもないオチが待っているのかと思いきやそうでもなかったので正直がっかりしました。見所はラストではなくむしろそこに行き着くまでのプロセスだったのです。
それでもプロセスが面白ければ問題ないんですが、この映画の場合、序盤から終盤までストレスを与えて与えて最後に「飴」を用意していないから、ただの家族喧嘩に成り下がっていましたね。
唯一褒めるとしたら演出のオリジナリティーと俳優たちの演技でしょうか。キャストはヴァンサン・カッセル、マリオン・コティヤール、レア・セドゥ、ギャスパー・ウリエルなどフランスを代表する俳優たちばかりで、かなり豪華です。ラストの口論シーンの爆発力もいいです。
でもそんな豪華なキャストをもってしてもこの映画をまともな映画にすることができなかったのが残念ですね。それにしてもなんで今回は主人公をグザヴィエ・ドラン自身が演じなかったんですかね。まあ、たとえそうしてても結果はあまり変わらなかったでしょうが。
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