性同一性障害の男性が女性として生きることを決意してからの人生を追ったカナダ・フランス合作人間ドラマ。シリアスな物語の中にアーティスティックなタッチを加えた、テーマもストーリーも少し難解な大人の映画です。47点(100点満点)
わたしはロランスのあらすじ
カナダのモントリオールで国語の教師をしているロランス(メルヴィル・プポー)は、ある日、恋人のフレッド(スザンヌ・クレマン)に対して女性になりたい と打ち明ける。ロランスの告白にフレッドは激高するも、一番の理解者になることを決める。迷いや戸惑い、周囲の反対を乗り越えて、社会の偏見に遭いながら も二人の人生を歩もうとする。
シネマトゥデイより
わたしはロランスの感想
「たかが世界の終わり」、「Mommy/マミー」、「トム・アット・ザ・ファーム」、「胸騒ぎの恋人」、「マイ・マザー」、「ジョン・F・ドノヴァンの死と生」などで知られるカナダが生んだ天才監督グザヴィエ・ドランによる複雑な人間ドラマ。
「ボーイズ・ドント・クライ」など性同一性障害をテーマにした映画はこれまでもたくありました。
ただ、この映画は男性が“性別”を変えたあとも、ガールフレンドのことを思い続け、そのまま関係を続けていく、という従来のストーリーにさらにもう一歩踏み込んでいます。
性別を超越した関係が果たして成り立つのか、という壮大なテーマを扱っているのです。
ただ、同性愛映画と同じで、そうでない人が主人公の複雑な状況を理解するのは至難の業です。自分に置き換えてみて、ということができないので、どうしても心に伝わらない部分がありますね。
BGMの使い方が上手く、視聴者をノセる演出が効果的でした。口論のシーンなんかも結構見ごたえがありました。
それに対し、ストーリーが面白味に欠けます。会話にユーモアがなく、終始シリアスなトーンで展開するだけに退屈で眠くなります。鑑賞するなら夜ではなく、朝のほうがいいかもしれません。
それにしてもロランスのあの堂々とした態度は尊敬に値しますね。女性として生きると決めたときから他人を始め、なにより自分を偽ることなく、正直に生きようとする決意が伺えました。
教師をしている男がある日突然、女の格好をして学校に行くなんて生徒のリアクションを想像するだけでも怖いですね。
それなのに女装したロランスはむしろ爽快感に満ち溢れた顔をして学校の廊下を歩いていました。いやあぁ最高、女になるっていいわあ、と言わんばかりのふっきれ方でした。
性同一性障害とは違いますが、世の中には外見がひどいのに自信満々に男にアプローチするという心と体が一致していない女たちが結構います。
自分がデブだろうと、ブスだろうとお構いなしで、世の男たちはみんな当然自分に興味があると信じてやまないタイプです。今の世の中にはああいう人たちにも病名があるんでしょうか。
ものすごいデブがセクシーを気取って、お尻をプリプリ振りながら、「ねえ、なんで私に電話してくれないのぉ」などと言ってくると、日本人の感覚では少し驚いてしまいます。
けれども僕は結構この手のタイプの人たちの揺るぎない自信とアグレッシブな姿勢が好きだったりします。引っこみ思案になるのではなく、開き直ってしまうあの潔さが気持ちがいいのです。
この映画のロランスのように、自信のレベルがあるラインを超えるとハンデがたちまち個性に逆転してしまうようです。
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