2016/01/24

それでも夜は明ける(原題12 YEARS A SLAVE)

12-years-a-slave-trailer

78点(100点満点)

ストーリー

 1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。狂信的な選民主義者エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は自身の尊厳を守り続ける。やがて12年の歳月が流れ、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バス(ブラッド・ピット)と出会い……。

シネマトゥディより

文句

奴隷制をテーマに、その時代を行き抜いたある男の壮絶なサバイバルドラマ。よくある差別映画の殻を突き破った希望と勇気と感動の物語。今年のオスカーはこれでいいと思います。

まだ「アメリカン・ハッスル」とこれしかノミネート作品は見ていませんが、おそらくこれ以上の作品はないんじゃないでしょうか。そういっても過言じゃないほど、ハリウッド映画のスタイルを保ちつつ、社会問題を提起したうえで、リアリティーもそれほど崩すことなく、長時間の上映時間をも苦にならない内容に仕上げています。

ハリウッドでは 黒人VS白人の差別映画は毎年のようにリリースされますね。思い返せば昨年のアカデミー賞では「ジャンゴ 繋がれざる者」と「リンカーン」の二つのノミネート作品が奴隷制を題材にしていました。二つとも胡散臭く、見れたもんじゃなかったんですが、この「それでも夜は明ける」はちょっと一味違う差別映画になっています。

僕はこの映画をサバイバル映画として見ました。奴隷という環境の中でソロモンが希望を捨てずに知恵を絞って生き延びていく姿に心惹かれたのです。ただ勇敢なだけじゃなく、ただ正義感が強いだけじゃなく、ときにはゴマをすり、ときには反抗し、ときにはリスクを犯して、なんとか家族のもとに帰るという自分の夢を実現しようとする彼の処世術が面白かったです。この映画で映されている奴隷の生活はどこか企業や組織の中で生きる人間の縮図のようにも見えました。まるでブラック企業を極端にした例のような。

奴隷は制度こそ廃止されただけで、今でも姿を変えて世界中にはびこっています。日本でも奴隷のような扱いを受けているサラリーマンや外国人はたくさんいます。時代を昔に設定しているから、遠い過去のことのように感じても、奴隷制度というのは人間の普遍的なテーマといえますね。大きく分けたら世の中にはご主人様と奴隷の二つのタイプしかいないんじゃないのかと思う時もあります。だからこそこの手の映画をついつい怖いものみたさで見てしまうのかもしれません。

劇中では殴る蹴る、鞭打ち、吊るし上げ、などの残虐なシーンが長く続きます。 それだけだとまるで「アミスタッド」のような映画で終わるところでしたが、ソロモンが次から次へと違う主人の家をたらいまわしにされる展開が見事で、それぞれの主人がまた性格や黒人の扱い方にくせがあり、「次はどんな主人なんだろう」と奴隷目線で見てしまう自分がいました。この映画にもいわゆる「優しい白人」が出てきました。しかしわざとらしさがあまりなく、なんだかんだいっても奴隷を囲っているという下劣な部分を保っていたために現実感がありました。

白人の主人に個性的な出演者たちを起用して、それぞれが短いシーンのみで勝負していたのもユニークでした。終盤はここぞとばかりにブラッド・ピットが出てきて、それこそ視聴者全員のハートを奪うような優しくてカッコイイ男を演じていました。演技も悪くなかったし、カッコよかったんですがあれは完全に反則です。なぜならこの映画でブラッド・ピットはプロデューサーも務めているからです。悪党白人を散々だして、最後の最後で善人の白人を出す。そこに自分を起用するという魂胆は腹黒すぎます。

「2時間ある上映時間の中で1時間50分は悪い白人に焦点を当てて、最後の10分で俺だから。そうすれば世界中の女なんてイチコロだから。シャラポアだって?あんなの3秒だよ。3秒。やばい俺、今超カッコイイこといってない?今どんな顔してるのか見るから鏡持ってきてくれない?」などと監督やスタッフと話していたのかもしれません。この映画に文句をつけるとしたらそこだけです。

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