2017/03/09

愛する人(原題MOTHER AND CHILD)

バベル」のアレハンドロ・イニャリトゥ製作総指揮、ロドリゴ・ガルシア監督の最新作。切っても切れぬ母子のきずなを描いた名作。90点(100点満点)

あらすじ

年老いた母親を介護し、毎日忙しく働いているカレン(アネット・ベニング)。そんな彼女には、14歳で妊娠・出産するものの、やむを得ず子どもを手放した過去があった。一方、母を知らずに育ち、弁護士としての輝かしいキャリアを持つ37歳のエリザベス(ナオミ・ワッツ)は、思わぬ妊娠をきっかけに母への慕情を意識し始める。

(Yahoo映画より)

文句

練りに練られた緻密なストーリー、他のシーンにつながるセリフ、見る者に期待を抱かせる展開、そしてなにより大好きな同監督の傑作「彼女を見ればわかること」をモチーフにした類似シーンを次々と織り込んでいることにすさまじい感動と共感を覚えました。

そうか、やっぱりこの監督はあの時に戻りたかったんだな、いろいろ寄り道したけど、原点が一番大事だということに気がづいたんだな、と思い、もしやこの映画は僕のために作ってくれたんじゃないのか、なんて錯覚しそうになりました。それだけこの映画は、はまる人には個人的なメッセージ性を含んでいると言えます。

いやあ、たくさんの名シーン、名演技があったのでどれを挙げればいいのか困ってしまいますね。オムニバス風な要素を持ち、同時進行形で様々な出来事が進んでいくために、この映画には誰が「主役」という枠がなく、また、そのおかけで出演者の誰をも、実に公平に客観的に見られるしかけになっているのがさすがでした。

セックスシーンではナオミ・ワッツがいつも通り、悪くてエロエロな女を演じきってしましたねえ。しかしまた、セックスシーンにしてもこの映画の場合、ただ視聴者の目を引くためのものではなく、後々のストーリーの重要なカギになってくるセックスなわけで、また、そういうシーンだからこそ見ている方は燃えるんです。

ナオミ・ワッツ扮するエリザベスは家族もいない、友達もいないような孤独な女だから、心の穴を埋めるべく男を貪ります。上司の男ともやるし、お隣さんの旦那も寝とってしまう。

幸せな人間に対してひがみがあるから、自分のパンティーをお隣さん夫婦のアパートにわざと置いていったりなどという怖いことも平気でしてしまう。セックスも生き方と一緒で自分で全部主導権を握ろうとする。そして最後はなにかを恐れるように自分から身を引くという性格も彼女の生い立ちに基づいた行動といえるでしょう。

ロドリゴ・ガルシア監督恐るべしというシーンが、エリザベスが二度目にお隣さん夫婦とばったり廊下で会ったときです。そのときエリザベスは会社の上司と一緒でした。

そのシーンでは後にお隣さんの旦那を寝盗ることを予兆させるかのように、エリザベスは前に会った時は挨拶した程度なのになぜか旦那の名前だけはしっかりと覚えていて、自分の上司に「彼はお隣に住むスティーブンよ」などといって紹介したのです。

だけど奥さんの名前だけは「ごめんなさい、名前なんでしたっけ」と聞きかえす。あのシーンは強烈でした。もしかすると、あれは奥さんに対して嫌がらせのつもりで、わざと旦那の名前だけ覚えている、という意地悪をやってのけたとも考えられます。うーん、どうだろう。とにかくその辺のひとつひとつのやり取りが細かい。だからもう一度見てみようという気になりますね。

「彼女を見ればわかること」を彷彿させるシーンは多々あって、カレンが自分の老いた母親を介護するシーン、上司とのセックスシーン、産婦人科のシーン、盲目の少女とのエレベーターのシーンなどなどで、そういうモチーフシーンを見比べるのも楽しいです。この映画の鑑賞前、もしくは鑑賞後に「彼女を見ればわかること」を見ることを強くお勧めします。

以前に一度このブログで、同監督ロドリゴ・ガルシアを一発屋だと批判したことをお詫び申し上げます。ロドリゴ・ガルシアは一発屋ではなく、二発屋でした。まさか「彼女を見ればわかること」から10年も待たされるとはなあ。

>>「愛する人」はHuluで視聴できます

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