2016/10/08

愛人/ラマン (原題: L’AMANT/THE LOVER)

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未成年の学生がエロビデオとして借りるべきエロティック恋愛映画。そして大人になってから見たら実はものすごい傑作だったと気づく時間差リバウンドムービー。92点(100点満点)

ストーリー

1920年代。フランス領下のインドシナに暮らす貧しいフランス人の少女。だが、富豪の中国系青年に目を付けられたときから、彼女の家庭には大金が転がり込んでくるようになった……。M・デュラスの自伝的ベストセラー小説を基に、自由を求めようとする青年と、彼の愛人となった少女の淡い交歓を描いたドラマ。

シネマトゥディより

読者のロッテンさんのリクエストで旧作を紹介します。ありがとうございました。

文句
十年に一度のペースで見たら自分の成長が計れること間違いなし。様々な年代の人に観賞してもらいたいです。あまりにも感情移入したのか観賞後、自分が失恋したみたいな切なさとやるせなさが残りました。

昔、好きだった映画を大人になってから見たら案外くだらなかった、という映画は結構あります。ジブリ映画「耳をすませば」を見て、何も感じなくなったときのあの寂しさがいまだに忘れられません。それも僕の場合、かなり早くその時期が来たのでまだ自分は若いのになんでだろう、という重い喪失感に苦しみました。

しかしその一方で昔なんとも思わなかった映画が傑作だったことに気づく、なんてことが自分に起こるなんてちょっと信じられないですね。駄作はいつ見ても駄作だと思っていたんで。

この映画を駄作と決めつけていたのは、そもそもこの映画を見る自分の姿勢がいけなかったんです。スケベな映画としてしか見たことがなかったために、かれこれ3、4回は見ているはずなのにベッドシーン以外はまったく記憶にありませんでした。まともに見たのは今回が初めてといってもいいです。

中学生の頃から僕はビデオレンタルに頻繁に通っていたのですが、アダルトものは年齢制限で借りられないので、普通の映画数本とこの手のエロティックな映画を一本選んで、何食わぬ顔をしてカウンターを通りました。そしてムラムラした気持ちで自転車をこいで、家に猛スピードで帰った記憶があります。

あれから長い年月が過ぎて、今改めて見ると色々な発見がありました。傑作は傑作でも文句をつけたくなる箇所も多々あります。なんでフランス人が家族と家で英語を喋ってるんだよとかね。一番気になったのは主人公のフランス人少女が上品すぎる点ですね。

少女を演じたジェーン・マーチは14歳からモデルをやっていたそうなので、歩き方や振る舞いがモデルのそれになっていました。もっとギスギスセカセカしていて落ち着きがない少女だったらリアリティーが出ていたでしょう。しかしその部分にリアリティーを出してしまうと、逆に話が面白くなくなっていたでしょうね。あの落ち着きはらった少女の成熟さと魔性の魅力に世の男たちはやられたに違いないからです。

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それにしてもなんてませた15歳の少女なんでしょうか。中国人青年とフェリーで出会い、すぐに車に乗せてもらっちゃうなんて軽すぎやしませんか。見知らぬ男と車内で二人だけになっても表情ひとつ変えず、笑みを浮かべるあの余裕。中国人青年の左手の薬指に指輪があることをまず確認するあの打算的な習性。次に会った時に自分から車窓越しにキスしてみせるあの挑発。恐ろしいぃ。あんな15歳いるかなぁ。

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それに対して、中国人青年はだらしなかったですね。彼は遊び人風なくせに知り合ったばかりですぐに惚れちゃうわ、二人で家に行ったときにはいきなり「君を愛するのが怖い」とか気持ちを打ち明けちゃってましたね。おっさんが15歳の少女に告白しちゃってるよって笑ってしまいました。マジになってどうすんだよお前が。

いざやるときになったら男の方がやっぱりこんなことできないよ、とか言い出すし、逆に少女の方がリードしてあげたりして、性別、年齢共にあの瞬間スイッチしていました。少女が完全に恋の主導権を握っていましたね。

そしてあの「スイッチ」こそがこの映画を成功に導いた最高の演出だと僕は思います。なぜならそうすることで視聴者に最後までこの物語はおっさんの片思いの話なんだよ、とインプットできるからです。そのうえでラストに少女の涙を持ってくる。実は愛していたのは少女もまた同じだった。それに気付いたのは船の中で悲しいピアノの音色をふと聞いたとき。失くした愛の大きさに気付き少女は涙が止まらなくなる、という最高の流れでした。

ずっと無表情だった少女が最後に泣いてくれてとても嬉しかったです。現実社会ではこの手の女の子は男と別れてもケロっとしているでしょう。もしかしたら原作では違った終わり方だったのかもしれません。いつも映画にはリアリティーを求めてしまうんですが、不思議とこの映画はそんな習慣も蹴散らしました。やられたぁぁ。

観賞後、中国人男性を演じたレオン・カーフェイとフランス人女性を演じたジェーン・マーチ(実際はイギリス人です)の現在が気になってしまいました。二人ともまだ芝居の世界で活躍しているようで、またとてもいい感じに歳をとっていました。二人ともカッコいいですね。
Hong Kong actor Tony Leung Ka Fai poses during the photocall for the movie "Tai Chi O" at the 69th Venice Film Festival jane

今もカッコいい二人ですが、本当に一番タイミングのいい時期に「愛人/ラマン」を撮れたんだなあ、という気がします。それにしても今、この二人はどうしてるんだろう、なんて思わす映画はそうないですね。