面白い部分と退屈な部分が融合され、なんとも惜しい作品になってしまった邦画。最初の30分ぐらいを我慢すれば見れなくもないです。50点
ちょっと思い出しただけのあらすじ
2021年照生は劇場の照明助手をしていた。彼はかつてダンサー志望だったが、足の怪我のために引退を余儀なくされた。ダンサーを志していたときは恋人の葉と幸せに暮らしていたし、結婚も考えていた。ところが照生が怪我をして自暴自棄になったことでいつしか喧嘩が絶えなくなり、別れてしまう。
照生はしかし葉との幸せな日々が忘れられないでいた。特に自分の誕生日7月26日の記憶は鮮明だった。それは葉も同じだった。なんとなく今をやり過ごしている二人だったが、特別な日々の思い出を振り返ると、どうしようもない虚無感を抱くのだった。それでも二人は現在から出会いまでの美しい日々をふと遡らずにはいられないのだった。
ちょっと思い出しただけのキャスト
- 池松壮亮
- 伊藤沙莉
- 大関れいか
- 屋敷裕政
- 広瀬斗史輝
- 永瀬正敏
ちょっと思い出しただけの感想と評価
読者のなまにくさん、もずさんのリクエストです。ありがとうございます。
「自分のことばかりで情けなくなるよ」、「私たちのハァハァ」などで知られる松居大悟監督による恋愛ドラマ。1回目見たときは途中で断念しましたが、2回目でやっと最後まで見れました。
最初見たときなんで途中で諦めたかというと、邦画特有のじれったさやリアリティーのなさ、そして変に格好つけた気持ち悪さをすぐに感じたからです。
まず、タクシー運転手が客とお喋りしすぎるところとか、ベンチで妻を待ち続ける男とか、いかにもフィクションっぽくてダメですね。
あとなかなか本題に入っていかず、最初の30分ぐらい何を見せられているのかさっぱり分からないのも嫌でした。
本作の特徴は、現在から1年ずつ遡っていきながら逆時系列で物語が進んでいく点でしょう。それは冷静に見ると、ただ前後を入れ替えているだけで、出会いから別れを描くのが普通の恋愛ドラマだとしたら、本作の場合別れから出会いを逆に描いているに過ぎず、いわば見せ方で独自性を出そうといった意図がうかがえます。
それはそれでいいんだけど、結局はストーリーがしっかりしていないとなんともなりませんよね。ちょいちょいいらない設定やキャラが出てくるのが邪魔でした。
池松壮亮と伊藤沙莉の会話は自然です。ただそれほど見せ場という見せ場はなく、結構な時間二人がただイチャイチャしているところを見せられるキツさといったらないです。池松壮亮の格好付けぶりとか、ひと昔前のキムタク並で、地味で飾らない伊藤沙莉に大分助けられていた印象です。これで伊藤沙莉までぶりっ子キャラだったらただの悲劇だからね。
全体的に美しくかつせつない恋愛ドラマにしたかったんだろうけど、それならもっと別れた後の孤独や苦しみにフォーカスしてもよかったんじゃないかなという気もしました。少なくともあの可愛いダンサーの子には手を出さないとダメでしょ。向こうからアプローチしてきてるのになにもしないなんて男として最低だぞ。
二人のやり取りのハイライトはタクシーの中の喧嘩のシーンかな。ヒロインの葉が結構あっさり照生を切り捨てるくだりは恰好良かったです。「あ、こいつダメだわ、会話にならねえ」っていうのを悟った瞬間の決断力は素敵。
それ以外だと、葉が合コン中にタバコを吸っているときに出会う康太との会話は面白かったです。あんな出会いありそうだし、一見チャラそうな康太が一回やっただけですぐにマジになって「一生幸せにするんで。これも運命ですよ」っていうのとか笑えますね。
主役、脇役も含めてセリフや言葉の掛け合いはリアルです。しかしベンチで妻を待ち続ける男のせいで全てのリアリティーがぶち壊しになるのが残念でした。あのキャラいらいないでしょ。あの男は仕事とかなにもしてないのかよ。
劇中、ジム・ジャームッシュ監督作品の引用やら言及があったので、おそらく「パターソン」のオマージュなんでしょうね。永瀬正敏も出演してたし。そういえばヒロインがタクシー運転手なのも「ナイト・オン・ザ・プラネット」の影響か。主題歌の名前も「ナイト・オン・ザ・プラネット」って。
そういうのがちょっと寒いんですよ。そういうところだぞ、松居大悟。「ジム・ジャームッシュ、分かる人には分かるよね。彼の作品が好きな俺、オシャレじゃない?」みたいなアピールがうざいんだって。あと、お前いつまで青春映画撮るつもりなんだよ、永遠の20歳かよ。
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