2017/05/23

パターソン(原題PATERSON)

時間を置いて2,3回見たくなる、じんわりと胸に響くユーモアのこもった大人の人間ドラマ。一人で見るのもいいし、恋人同士で見るのもおすすめです。77点(100点満点)

映画パターソンのあらすじ

パターソンは詩が好きで仕事の合間を見つけてはノートに自作の詩を書き留めるのを習慣としていた。彼はバスの運転手として毎日同じルーティングワークをこなし、夜になると犬の散歩がてらバーに寄っては一杯飲んで帰ってくるという日々を過ごしていた。

妻のローラはパターソンの才能に惚れ込み、詩を発表するように促すも、パターソンはそれほど乗り気ではなく、週末に時間ができたら、溜め込んだ詩のコピーを取ることをしぶしぶ約束する。

やがてローラは白黒模様に傾倒するようになり、取り付かれたように家中を白黒にデコレーションしてしまう。

また、あるときはカントリーミュージシャンになるといってギターを始めたり、料理が下手なのにカップケーキのビジネスを始めるといって、ケーキを大量に作りだしてパターソンを困惑させる。

ところがカップケーキを売りに行くと、1日で200ドル以上も売ることができ、二人は大喜びして久々に映画デートに行くことに。

楽しい時間を過ごして二人が家に帰ってくると、あろうことか犬がパターソンのノートを粉々に食いちぎっていたのだった。

大切な詩を失くしたパターソンは悲しみに暮れながら、翌日一人思い出の公園に散歩に行くことにする。するとそこで思わぬ出会いが待ち受けているのだった。

映画パターソンは面白い!

「コーヒー&シガレッツ」、「ブロークン・フラワーズ」、「ダウン・バイ・ロー」などでお馴染みのジム・ジャームッシュ監督による緩くて、味わい深い、大人のミニシアター系映画。

独特の間と空気とテンポを楽しむ作品で、一つ一つの会話が面白く、特に何も起こらないのにずっと見ていてられる、芸術的なストーリーテリングです。

好き嫌いが分かれるタイプの作品ですが、一度はまるとジム・ジャームッシュ監督の過去作品を全部見たくなるはずです。ある人にとっては入り口がこの作品になるかもしれません。たとえそうだとしても十分に納得できます。

アダム・ドライバー扮する主人公パターソン(町の名前と同じ)と、ゴルシフテ・ファラハニ扮するローラのカップルが可愛すぎて、二人を見ているだけでも幸せな気持ちになりました。

女性だったらパターソンの穏やかな性格と寡黙でミステリアスな姿に惚れるでしょう。男性だったらローラの天然っぽさと、可愛らしい喋り方にやられるはずです。

二人はお互いに絶妙な距離を取りつつ、至って平和な共同生活をしていて、必要以上にベタベタするわけでなく、かといって冷たいわけでもない、自然な大人の男女の関係がそこにありました。

ローラはいつも思いつきで突拍子もない野望を抱きます。ときにそれは非現実的で夢物語のようです。

反対にパターソンは欲がなく現実主義で、平凡な生活を好むようなところがあります。二人はつまり正反対の性格をしているのに上手い具合にマッチにしているのが微笑ましかったですね。

ストーリー上では語られることはなかったんですが、ローラの英語はたどたどしく外国人女性であることが分かります。あの話し方がまた可愛くて彼女の魅力でもあり、典型的なアメリカ人女性とは一味違うキャラクターがかなり笑えました。

ローラ役の女優ゴルシフテ・ファラハニはイラン出身のアラブ系の女性で、実際映画の舞台であるニュージャージー州のパターソンにはアラブ系の移民が多いようです。そういう細かくて、斬新な設定もいいです。

二人以外でもコインランドリーでラップを練習するラッパー、まだ若いのに詩が大好きな少女、元彼女に未練タラタラの男など、脇役たちが渋すぎます。何がいいって誰も格好付けてないんですよ。

それぞれが自分の好きなことと自分の世界を持っていて、人口15万人にも満たない小さな田舎町で、日々色んなことを考えながら、自分の人生を一生懸命に生きている姿が素敵でした。

パターソンの町は殺風景で、景色は退屈で、多くの若者が好んで住みたがる場所ではないでしょう。それでもそんな町に対する愛と敬意が終始感じられるストーリーになっています。これはこれで町おこし映画ですね。

映画パターソンには永瀬正敏が出演している!

ジム・ジャームッシュ監督の「ミステリー・トレイン」に続いてこの映画にもなんと日本から永瀬正敏が出ています。「ミステリー・トレイン」もかなりオススメの映画で、ジム・ジャームッシュ監督の映画が好きになったらぜひ見てみてください。

さて、この映画での永瀬正敏は正直あまり雰囲気に合ってませんでしたね。監督によほど気に入られてるのか、友情出演といったほうがいいかもしれません。

永瀬正敏はなんでそんなところに日本人旅行者がいるんだよって感じに突然登場してはアダム・ドライバーとコントみたいなやり取りを交わします。あれはあれで笑えたし、ちょっといい話だったけれど、あまり必然性はなかったですね。

映画パターソンに双子が出てくる理由

ほかにもなんだろうこのシーンは、というような不思議なシーンがいくつかありました。夢や詩や会話がリンクしていくようにできていて、特に双子が何度も登場するのがひっかかります。

あれは一体何を意味しているのか。それは視聴者それぞれが自由に解釈できそうだし、してもいいと思います。

一方ジム・ジャームッシュ監督は、ある試写会のQ&Aで双子には意味はなく、もともとは脚本にはなかった要素だと明かしています。

なんでも撮影現場にエキストラの女の子がたまたま双子の姉妹と一緒に来たのを見かけて、姉妹両方起用することに決めたんだそうです。そのことがきかっけで他にも双子の出演者を増やし、ローラの夢のセリフを付け加えたらしいです。

そんな自由さと、曖昧さが嫌味にならないところが不思議で、それこそがジム・ジャームッシュ監督の実力なんでしょうね。

>>ジム・ジャームッシュ監督の過去の作品はU-NEXTで視聴できます

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