2016/05/02

マグノリア(原題 Magnolia)


何度見ても楽しめる、極めて完成度の高い娯楽映画。こんなにいい作品がこの監督から生まれたのはまぐれなのか? それとも実力か? 最初から最後まで休みなく急ピッチに話が進んでいく、あのリズム感がなんともいえないです。90点(100点満点)

あらすじ

クイズ王の天才少年スタンリー、人気司会者のジミー・ゲイター、癌に冒され臨終を控えている大物プロデューサーのアール、迫り来る夫の死が受け入れられない若妻のリンダ、女の口説き方を伝授するセックス界の教祖フランク、おっちょこちょいな警官ジム、コカイン中毒の女クローディア、バーテンの若い男に恋心を抱く中年男ドニーなど、LAを舞台に様々な苦悩を抱える不器用な人間たちが忙しく、エキサイティングな一日を繰り広げる。訳ありの過去を持ち、後悔に苦しみながらも彼らは自分なりのやり方で状況と折り合いをつけようとする。

文句
簡単に映画の中に吸い込まれてしまい、3時間を越える上映時間が全く気にならなかったです。「偶然」や「後悔」などをテーマにした点においてもセンスがいいです。アメリカ映画の中には「自分がやってきたことは間違っていなかった。私は自分の人生を全く後悔していない」といった考えのものが多く、実際それがかっこいいと思っているアメリカ人も少なくないです。

そんな中で、過去を振り返ってうじうじ悩んでいる、未練たらたらの人々を取り上げたところが意外で面白かったですね。過去の汚点は棚に上げて、自分の人生をただ成功だったと自信満々に語る人より、「もっとあいつに優しくしておけばよかったなあ、私ってバカだなぁ」と嘆いている人間の方がずっと正直だし、同情できますね。

俳優陣も文句なしでした。ジュリアン・ムーアも相変わらずの仕事ぶりでしたが、一番いい仕事をしたのは間違いなくトム・クルーズでしょう。もう最高のパフォーマンスでした。

父親との再会シーンは圧巻。自分の父親が死にそうなのに「死んじまえ、このクソ野郎!」とかいう映画なんて今まで見たことなかった。それだけに余計に悲しくて、悲しくて。それ以上に黒人記者のインタビューに応じている最中に徐々に表情を曇らせていくあの迫真の演技には度肝を抜かれた。あのシーンは何度見てもすごいです。

蛙が空から降ってくるシーンですが、あの部分については様々な憶測が流れましたね。特に有力だったのが「聖書から引用した」というもの。しかしポール・トーマス・アンダーソン監督は後にあるインタビューでその説を否定しています。

たまたまそういうアイデアが浮かんだだけで、聖書に載っているとは知らなかったそうです。なんでもかんでも聖書だ、コーランだ、といって深読みする人たちってどうにかならないんでしょうか。かなり面倒臭いです。

全体的には不幸な人たちに焦点を当てていて、話が進むにつれてどんどん内容がドロドロしていく。でも、きちんとハッピーエンドで締めているところがまたニクイ。

ラストシーンはコカイン中毒で、実の父親に悪戯された経験を持つクローディアの「笑顔」なんだけど、最初から一度も笑わなかったクローディアが最後の最後で微笑んだ、あれだけで暗いはずの映画がパッと明るくなった気がしますね。

関連記事

トム・クルーズ出演のおすすめ映画作品ランキング