ザ・スクエア・思いやりの聖域(原題The Square)

スウェーデン発の社会風刺ドラマ。売れる映画じゃないけれど、芸術性が高く、ちょっと笑えて、考えさせられる作品です。55点(100点満点)

ザ・スクエア・思いやりの聖域のあらすじ

ストックホルムにある美術館のキュレーターをしているクリスチャンはある日、道を歩いていたら大声で助けを求める女性と遭遇する。

男に殺されるといって大騒ぎしている彼女をかばうと、まもなく怪しい男がクリスチャンの前に現れる。ところがそれがただのいたずらだったことに気づき、安心したのもつかの間、いつの間にか自分の携帯や財布が盗まれていることを知る。

クリスチャンは社員に頼んでGPSで盗まれた携帯を追跡。すると、貧しい地区にあるアパートのビルに携帯が位置していることを突き止める。

アパートの住人に犯人がいると確信したクリスチャンは住人ひとりひとりのポストに脅迫文を入れることに。数日後、何者かが携帯と財布をクリスチャンに返却してくる。

ところが犯人ではない住人にまで手紙を送ったせいで、また別の住人からクリスチャンは強い怒りを買われてしまう。

ザ・スクエア・思いやりの感想

カンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞し、2108年のアカデミー賞にもノミネートしたスウェーデンの風刺社会ドラマ。

プレイ」などで知られるリューベン・オストルンド監督が作ったインスタレーションを基に構想が広がった作品で、実際に起こった出来事などを基にしたコメディとアートと社会ドラマを混ぜたような大人向け欧州映画です。

上映時間が151分とかなり長尺で、ハリウッド映画とは全く違う、一筋縄では行かない展開と結末が用意されているやや難しい内容になっています。

主人公は美術館のイケメンキュレーター、クリスチャン。彼の美術館では「スクエア」と呼ばれる「ザ・スクエアとは信頼と思いやりの聖域。皆が平等な権利と義務を共有する」をコンセプトにした四角形のインスタレーションを展示しようとしています。

ある日、クリスチャンは道端でスリに財布や携帯などを盗まれてしまいます。通りすがりの人々に助けを求めますが、誰も助けてはくれません。

美術館に戻ってクリスチャンは部下の協力を借り、なんとか所持品を取り返すことを計画します。携帯の位置を追跡すると、どうやら郊外のアパートのビルで動きが止まっています。

泥棒はそこの住人だと確信したクリスチャンは脅迫の手紙を書いて、犯人が反応するかを見ます。すると、犯人は彼の携帯と財布を返却し、全ては解決したかに見えたが、、、、というのがあらすじです。

プレイ」では子供たちのグループが別の子供たちを次々と襲っていく様子が描かれていました。そこにあるのは大人の社会と子供の社会がまるで平行して存在するかのようなパラレルワールドで、大人たちは子供たちの出来事に無関心で、子供もまた大人に助けを求めない社会がありました。

この映画でもそのコンセプトが引き継がれていて、他人に無関心で冷たい近代社会に一石を投じるコンセプトが「スクエア」というアートインスタレーションです。

もともと「スクエア」は「横断歩道」のような道路標示がアイデア源だそうです。横断歩道があるところでは車は歩行者に注意して進むのに対し、スクエアでは四角形の中に入った人は他人を思いやり、助けなければなりません。

そんなヒューマニティーの象徴的な場所について熱弁するクリスチャン自身もまた実は泥棒やホームレス、移民や貧しい人々に対する偏見を抱え、思いやりのない生活を送っていた、という皮肉がこもった内容になっていました。

劇中のスリ事件、インタビュー中の卑猥な野次、猿真似のアーティストなどは実際の出来事や実在する人をモデルにしているそうです。

セレブたちのパーティーに突如出現した猿真似の男のシーンはなかなか奇妙でしたね。あれもオレッグ・クリックというアーティストがやった犬のパフォーマンスがモチーフになっているようです。あのシーンに費やす時間の長さと意味不明さがこの映画の醍醐味ともいえそうですね。

この映画の中で描かれているスウェーデンは基本人々は他人と深く関わろうとしない傾向にある印象を受けます。

誰かが助けを求めても助けない。変な人がいても見て見ぬふりをする。そんな社会に監督は疑問を抱き、提議し、風刺を利かせた結果にできあがったのがこの作品なのではないかと感じましたね。

ハリウッド映画のように分かりやすくてすっきりする映画じゃないけど、ユニークだし、なかなか味わいのある映画でした。

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