イカとクジラ(原題The Squid and the Whale)

ダメ両親とさえない兄弟によるユーモア溢れる家族ドラマ。脚本が優れている会話重視の作品です。56点(100点満点)

イカとクジラのあらすじ

ブルックリンに住むバーナードは、かつては人気作家であったがスランプが続き、今では教職で生計を立てている。一方、バーナードの妻ジョーンは新進作家として成功を収めていた。夫婦の間には緊張が高まり、二人はついに別れることを決意し、16歳のウォルトと12歳のフランクという二人の息子にそのことを告げる。

wikipediaより

読者のメボンさんのリクエストです。ありがとうございます。

イカとクジラの感想

フランシス・ハ」や「ヤング・アダルト・ニューヨーク」でお馴染みのノア・バームバック監督の離婚ドラマ。抽象的で、微妙で、曖昧な描写による家族物語です。

男癖の悪い母親とインテリぶった父親のもとに育った二人の兄弟が、両親の離婚に翻弄され、父親と母親の家を行き来する様子をコミカルに描いていきます。

劇中、元人気作家のバーナードと作家デビューしたてのジョーンは長年の確執を経て、結婚生活にピリオドをつけますが、二人が選んだのは共同親権という形でした。

お互いに別々の場所に住み、順番に二人の息子たちと時間を過ごすというスタイルです。もちろんそれによって子供たちは困惑し、強いストレスを抱えます。

そのうち兄弟は学校で奇行に走ったりと離婚のトラウマが見え隠れし始める、というのが話の流れです。

海外では共同親権は決して珍しくないですが、さすがにこの家族のように1週間を両親が二等分するなどという面倒なことをしている家族は少ないでしょう。

子供たちにとっても毎晩のように泊まる家を移動するってきついですよね。面白いのが時間が経つにつれ兄が父親を、弟が母親をひいきし始めるところです。兄は父親似でインテリ風だったの対し、弟は母親似で感情的だったこととも関係がありそうです。

特に思春期のときは両親が離婚すると、子供は父親か母親かのどちらかを恨む傾向にあるのかもしれません。そうやって自分に降りかかってきた災いを誰かのせいにしないと処理できないとも考えられそうですね。

ただ、両親も兄弟もいずれもほとんど衝突や爆発することなく、これといった決定的な感情を表に出さずに終わったのはアメリカ人らしからぬ、あるいはハリウッド映画らしからぬ、冷めっぷりでした。

どこか一つでも家族が感情をむき出しにして、ぶつかり合うシーンがあったら、もっと感情移入ができたかもしれません。

脚本の完成度は高いです。皮肉と嫌味が盛りだくさんの会話が面白いです。しかし文学、映画、音楽を引用した会話が多いので、登場人物たちが挙げる作品名やアーティストを知っている人にはツボにはまっても、知らない人にはそれほどインパクトはないでしょう。

この映画が万人受けしなかったのは会話のオタクっぽさが原因かもしれません。家族のキャラにもそれほど強烈さがなかったなぁ。

印象に残ったセリフはただ一つ、長男のウォルトが彼女に言った一言です。

「君の顔にそんなにソバカスがなければよかったのに」

あの馬鹿は一体どんな意図であんなことを言ったんでしょうか。いじったつもりだったのなら、いじり方を完全に間違えてますよね。それを聞いてショックに陥った彼女の顔が忘れられません。

いるよね、そんなこと言って誰が得するんだよっていうことをわざわざ言う奴。あいつとは別れて正解だわ!

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