2016/03/12

トラッシュ!この街が輝く日まで(原題TRASH)

trash

29点(100点満点)

ストーリー

ブラジル・リオデジャネイロ郊外でゴミ拾いをして暮らす3人の少年は、ある日ゴミ山で一つの財布を見つける。その財布には世界を揺るがすとんでもない秘密が隠されていたことから、警察も総力を挙げて捜索に乗り出す。少年たちは「正しいことをしたい」と財布に隠された謎を解明すべく、警察のしつこい追跡をかわし命懸けで真実を追い求めていくが……。

シネマトゥディより

文句

「リトルダンサー」、「愛を読む人」、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」でお馴染みのスティーヴン・ダルドリー監督のブラジルのファベーラを舞台にした最新作。上映時間が長く、リアリティーがなく、アクションもありきたりで、ブラジルで全く話題にならなかった作品。

この映画の売りは、世界的に有名なスティーヴン・ダルドリーがブラジルの映画を撮った、という点だけです。 お金もそこそこかけた、ブラジルの有名な俳優も集めた、世界的なプロモーションもかけた。しかし結果は散々で、どこの国でも泣かず飛ばずだったはずです。

突っ込みどころも多かったです。そもそも外国人が外国を舞台にした映画を撮る、あるいは脚本を書くこと事態が間違っていますね。そこの国の文化や習慣を理解していない人がそんなことに挑戦しても、ほとんどの場合は知識のなさや感覚の違いをさらけ出すだけに終わってしまいます。この映画がブラジル人にほとんど見向きもされなかったのは、そもそも主人公のファベーラの子供たちの描写がぶっ飛びすぎているからです。

ゴミ山でゴミをあさって生活しているファベーラの子供の一人がある日、財布を見つけます。そこにお金と一緒に入っていたのは動物の絵、暗号のような数字が書いてある紙と謎の鍵。その鍵を見て別の少年は駅にあるロッカーの鍵であることを突き止め、ロッカーを開けに行く。するとそこには一通の手紙が。手紙の宛先は刑務所になっていたので、刑務所に行くと、そこには汚職などに反対している活動家がいて、彼が暗号の解き方の重要なヒントをくれる、といった具合に話が進んでいきます。

そもそも暗号やら手紙やら、子供たちには全く無関係で、なんのことかさっぱり分かっていない時点で警察に命を追われながらも、拷問を受けながらもなぜか彼らはこの暗号を死守しようとします。また、彼らのIQの高さが異常で、どこの鍵かも分からないような鍵でも、難しい暗号でも、すぐに答えを解明してしまう天才ぶりを発揮していて、異次元の世界でした。そんなに頭がいいならゴミ拾いしてないでしょ。

一つ題材が悪いなあ、と思ったのは暗号の解読に「動物」と「数字」を使っている点です。おそらく日本の視聴者もよく理解できなかったと思うので説明すると、ブラジルの伝統的な賭け事に「Jogo de Bicho ジョーゴ・ジ・ビショ」と呼ばれるクジがあって、最低二桁の数字を当てると賞金が出る遊びなんですが、それぞれの動物に「犬」は「17, 18, 19, 20」、「ライオン」は「61,62,63,64」といった具合に数字が振り分けられていて、たとえば「犬」を買った人は、クジの数字の下二桁が「17, 18, 19, 20」なら当たり、といったルールになっています。劇中に聖書の中で「牛」や「ライオン」といった動物を見つけて、携帯電話の番号を割り出していったのはこの数字なのです。

ただ、こんな数字にピンと来る人はブラジル人でもよっぽど年季の入ったギャンブラーぐらいで、賭け事もろくにやったことのない子供たちがそもそも理解できるはずのないものなのです。ブラジルの文化をストーリーに取り入れようとした外国人制作者がいかにもやりそうな企画ミスですね。

一番馬鹿馬鹿しかったのは子供たちの勇気ある行動から政治家の汚職を暴露して、そのニュースが世界中を駆け巡り、一件落着、というラストです。ブラジルの汚職問題はなにも一人の政治家に限ったことではなく、政治全体にはびこっているものなので、一人の悪者を退治して解決するほど甘いものではなく、あの程度のことが世界中のニュースを賑わすなんてことはまずないです。だって日常茶飯事だから。

そういえばアメリカ人神父役にチャリー・シーンの親父のマーティー・シーンが出ていましたね。シスター役は「ドラゴンタトゥーの女」のルーニー・マーラがやっていました。あれもアメリカ人俳優を起用する理由が全く見当たりません。ブラジル人の神父でいいじゃん。登場人物にアメリカ人を使って、ほかの登場人物にも英語を喋らすことで、世界的なマーケティングがしやすくなるという狙いなんでしょうね。そういういやらしさが見える映画は見る気が失せますね。ポルトガル語もまともに話せないファベーラの子供が英語を話したりするなんて、「ラストサムライ」の明治天皇が英語ペラペラだったときぐらい腹が立ちました。おそらくこの映画が好きだというブラジル人は「ラストサムライ」が好きだという日本人と気が合うはずです。