2016/03/11

戦場のアリア(原題 Joyeux Noël)

chris

23点(100点満点)

ストーリー

第1次世界大戦下、フランス北部の最前線デルソーで、敵対するフランス・スコットランド連合軍とドイツ軍兵士たちはクリスマスを迎えることになった。そんな中、ソプラノ歌手アナ(ダイアン・クルーガー)と彼女の夫でドイツ軍兵士のテノール歌手ニコラウス(ベンノ・フユルマン)は、塹壕で聖歌を披露するのだが……。

シネマトゥディより

読者のyukoさんのリクエストです。ありがとうございました。

文句

実際に起きたと語り継がれる、クリスマスの日だけ停戦をして敵軍同士が交流を深めたとされる「クリスマス休戦」をテーマにした戦争ドラマ。殺し合いをしている敵同士を通じて友情とか愛情とかヒューマニティーとかを描く、甘っちょろい内容で、純粋無垢な日本人がいかにも心動かされそうな一本。

クリスチャンにとって一年の中で最も神聖な日であるクリスマスにフランス軍、ドイツ軍、スコットランド軍が銃を置いて、お互いに近づき、酒を注ぎあって、歌を歌いながら一晩を過ごした、「へえそんなことが実際にあったんだ」で終わる映画です。事実を基にした映画のほとんどがそれに当たりますが、この手の映画は「事実」のインパクトに頼りすぎて、内容がおそろかになるのが常です。

生きるか死ぬかの緊張感のない戦争映画は、店長のいないコンビニのバイトぐらいユルユルです。それぐらい登場人物に覇気がなく、戦場を生きている男たちの獣の目をした人が一人もいないのが気になりました。歌の上手いドイツ軍の軍人とその恋人が戦場に出向いて兵士たちに歌を聞かせる、という下りも実際にあったんでしょうか。あそこはいかにもフィクションっぽいですよね。「事実」を材料に使う人って、すぐに調子に乗って、スパイスかけまくりますよね。そのせいで元の味がなんだったのか分からなくなるんです。休戦の話だったのが、いつのまにか「きよしこの夜」をみんなで歌った話になってましたからね。

あれって現代に置き換えたら、シリアの国境でヨルダン軍と自衛隊とイスラム国の兵士がバレンタインデーだからといってお互いにチョコレートを渡すぐらいの話で、そこに国生さゆりが乗り込んで行って「バレンタイン・キッス」を歌うぐらいのレベルでしょ。まあ、実際にそんなことがあったら感動しますけどね。国生すげえなあって言ってね。

話そのものは「いい話」に違いありません。ただ、それだけなら新聞で伝えればいいだけで、映画にする必要ないよ、と。教室で学校の先生が生徒の前で話せばいいだけで、映像にする必要ないよ、と言いたいわけです。


こういう話を学校の先生が授業ですると、必ず何人かの女子生徒が感動して泣き出します。僕はどっちかというとそういう生徒に突っ込みを入れていたタイプなので、この手の映画には心を全く動かされません。戦争中に相手軍と友情を結ぶとか甘っちょろいこと言うなと思います。こういう映画を見て感化される人は「どんな猛獣でも愛情を持って接すれば絶対に噛み付くことはありません」とか言う人です。「テロリストだって同じ人間なんだから誠意とリスペクトを持って話し合えば分かり合えるはず」とか言う人です。そういう人にはぜひライオンの檻にでも入ってもらいたいですね。