自分が何を求めているのかはっきりしない若者たちによる一風変わった大人の恋愛ドラマ。ラストの締めくくりは見事でしたが、それ以外はまあまあです。50点
パリ13区のあらすじ
コールセンターで働くエミリーは自分のアパートで一緒に暮らせる女性のルームメイトを募集していた。しかし現れたのは男のカミーユだった。カミーユは高校教師をしていて知的で魅力的な男だった。
エミリーは仕方なくカミーユの話を聞くことにするが、たちまち意気投合し、ついつい男女の関係になってしまう。エミリーはカミーユにのめり込んでいくが、カミーユは真剣に付き合う気はさらさらなかった。そんな中、カミーユはアパートに別の女性を連れ込んで来てはエミリーの嫉妬を買ってしまう。
一方、33歳のノラは法律を学ぼうと大学に通い始めていた。大学は年下の若者たちで溢れ、ノラは自分だけがどこか浮いている感じがした。
それでもクラスメイトたちと溶け込もうとノラは金髪のウィッグをつけてパーティーに参加する。しかしその姿があまりにもセクシー女優のアンバー・スウィートと似ていたことからSNSで拡散されてしまい、大学にいられなくなってしまう。
パリ13区のキャスト
- ルーシー・チャン
- マキタ・サンバ
- ノエミ・メルラン
- ジェニー・ベス
パリ13区の感想と評価
「ディーパンの闘い」、「君と歩く世界」、「預言者」、「ゴールデン・リバー」などで知られるジャック・オーディアール監督による恋愛群像劇。
男女3、4人による決して感情をぶつけ合わないドライな恋愛ドラマで、何を考えているのか、何を思っているのか不可解な人物、心理描写によるストーリーはとても現代風で個性的です。
注意したいのはベッドシーンは多いけど、色気はないという点ですね。もしセクシー映画として見ようと思っているならおすすめできないです。ものすごくカジュアルにみんな裸になっているのでまるでヌーディストビーチにいるような感覚なんですよ。
そしてその感覚を登場人物の性に対する感覚として描いていて、好きかどうか分からないけどとりあえずやってみるをモットーにしている男女が自分の心と体に正直に生きる姿を見せていく掴みどころのない話になっています。
男女が恋に落ちて交際して喧嘩して別れてまた寄りを戻してみたいな分かりやすくてドラマチックな恋愛映画と違って、なんなんだろうこの二人の関係は?と思わせる出来事の連続で、登場人物が常に冷めているのが特徴です。
そういう意味ではなかなか作るのが難しそうなハイレベルな大人のラブロマンスではありますね。妙にリアリティーもあるし、なにより話の展開が読めません。
ヒロインのエミリー役を演じたルーシー・チャンは中国系フランス人の美女で魅力たっぷりでした。童顔で子供っぽいのに性に奔放で次から次へと男をあさっていく肉食系というギャップがなかなかいいです。
対する相手役カミーユを演じるマキタ・サンバは背が高く、スタイルが良く、特別ハンサムとかではないのにやけに女性にモテそうな雰囲気のある黒人男性でしたね。二人ともすごく良かったです。
そんな二人が演じるエミリーとカミーユのツンデレな関係を楽しむのが醍醐味だといってもいいでしょう。二人ともどこか強がっていて、まるで他人に依存しないクールな若者風に振る舞っているんだけど、実はそうじゃないところが可愛らしかったです。
特にインターフォンでエミリーが何度も相手の思いを言わせるくだりは、急に純粋な女の子に戻ったみたいでものすごくキュートでしたね。あれはなかなかの名シーンだったと思います。
一方、セクシー女優と間違われた女ノラのエピソードはちょっと無理があったかな。そもそもそんなに似てるかあっていう問題と、似てるのと本人っていうのはやっぱり大きな隔たりがあるから大学にいられなくなるほど話が広がるかなあっていうのがひっかかりました。
さらにその後、ノラがセクシー女優本人と知り合いになり、友達になり、挙句の果てには恋仲になるっていうのはちょっとねえ。カミーユとノラもあんまりお似合いじゃなかったし、ノラのパートはいらなかったなあ。結局のところエミリーとカミーユの物語のスパイスとしてノラが使われた感がありますね。ノラのパートのせいで間延びしたし、テンポが悪くなってしまったのがとても残念でした。
映像が白黒なのもあまりよくなかったかなあ。できれば綺麗なカラー映像でパリの景色を見たかったです。音楽のチョイスがセンスあるのに今風の映像とセットにしないのはもったいないですね。別に芸術路線の映画っていう感じでもないのになんであえて白黒を選んだんだろう。
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