フランスに不法入国したスリランカ人家族の壮絶な生活を描いた移民ドラマ。次に何が起こるか全く先が読めないストーリーにぐいぐい引き込まれます。68点(100点満点)
ディーパンの闘いのあらすじ
ディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)は“タミル・イーラム解放の虎”の兵士としてスリランカ内戦で戦うが、妻子を失い失意の底にいた。
一方、女性(カレアスワリ・スリニバサン)は、移住許可を取りやすくすべく難民キャンプで孤児の少女(カラウタヤニ・ヴィナシタンビ)を探し当てる。海外渡航のあっせん事務所を訪れた彼女たちは、ディーパンと共に偽装家族として出国する。
シネマトゥディより
ディーパンの闘いの感想
「預言者」のジャック・オーディアール監督によるカンヌ映画祭でパルム・ドール受賞作品です。スリランカ人が主人公の映画は初めてみました。それもフランスの監督がスリランカ人を取り上げるというのも面白いですね。
内戦中のスリランカから脱出するために主人公の男ディーパンは、見知らぬ女性と少女を連れて家族を装い偽のパスポートでフランスに渡ります。
難民キャンプにいる彼らは欧州に行けば、平和で豊かな暮らしが手に入ると信じますが、いざフランスに着いたら生活の拠点となるのは治安の悪い貧困街だった、という厳しい現実が待っています。
ディーパンがなんとか職にありつけた集合住宅ではギャングたちによる麻薬の取引や殺人が日常茶飯事で、家族は身の危険を感じフランスに来たことすら後悔し始める、というのがあらすじです。
シリア内戦や難民問題もあって、移民はもはや世界中の旬なテーマですね。それなのに日本で生活していると移民について考える機会はほぼゼロじゃないでしょうか。日本で「移民」を感じられるところといえば群馬のブラジル人コミュニティーぐらいですかね。
そういうところで生活していないと、移民と共存していくことがどういうことか想像できないから「外国人は日本に入れるな!」とか「日本ももっと難民をじゃんじゃん受け入れてあげろ!」とか両極端な意見しか出てこないんでしょう。だから日本人こそもっとこういう映画を見るべきです。
この映画は、赤の他人の3人が外国で一緒に生活をしていくうちに結束を強めていく過程やたとえ住むところを変えたところで必ずしも幸せが待っているわけではない、という厳しい教訓を上手く表現していましたね。
特に豊かさだけを求めて「アメリカに行けば仕事もあって、給料も高くて最高」なんてノリで移民する人は現地に行ってから幻滅する人が多いです。特別な技術を持っていれば別だけど、そもそも自分の国でも貧しい生活をしていた人が先進国に行っていきなり、いい仕事につけるわけがないんですよ。いいことばかり想像していくから現実とのギャップに打ち負かされるんです。
その点、ディーパンの家族も難民キャンプの悲惨な状況から逃げだしたいばかりに、素敵な世界を思い描きすぎて冷静に物事を想像することができなかったといえるのかもしれません。
また、ディーパンは内戦中に兵士として戦ってきた男だからフランスでも同じように人々が殺し合っている状況が余計につらそうでした。修羅場をくぐってるだけに普段は温厚な彼でも一度スイッチが入ると、戦闘モードになって完全にキレてしまう展開も説得力があります。
「預言者」でもそうでしたがジャック・オーディアール監督は、人間ドラマを深く掘り下げていくのが本当に上手いですね。でも最大の彼の武器はアクションシーンの撮り方だと僕は思っています。
ラストの銃撃シーンなんて、これまでのアクションシーンとは別次元の迫力でした。ただ、ちょっとやりすぎたせいでターミネーターみたいになってしまったのが残念でなりません。あんなに無茶苦茶やったらまずフランスから出られないでしょ。
コメント