海外での評価は高く、面白そうな雰囲気をかもしているものの、実際は期待外れのイタリア映画。全体的に退屈でした。35点
The Hand of Godのあらすじ
時は1980年代のイタリア・ナポリ。ファビエットは兄のマルキーノ、父のサベリオ、母のマリアと幸せに暮らしていた。ファビエットは地元にアルゼンチンの英雄ディエゴ・マラドーナが来るのではないかといった噂が立っていたことからソワソワしていた。しかし本当に彼のような偉大な選手が来ると思っている者は少なかった。
ファビエットにはあまり友達はいなかった。恋人もおらず、漠然と早く初体験を済ませたいと思っていた。大学に行ったら哲学を学ぼうと思っていたが、実際のところ自分は何がしたいのかよく分からなかった。
そんな中、ある日突然ファビエットの家族に不幸が訪れ、彼は数奇な運命に振り回されることになる。
The Hand of Godのキャスト
- フィリッポ・スコッティ
- トニ・セルヴィッロ
- テレーザ・サポナンジェロ
- マーロン・ジュベール
- ルイーザ・ラニエリ
- レナート・カルペンティエリ
- マッシミリアーノ・ガッロ
The Hand of Godの感想と評価
「LORO 欲望のイタリア」、「グレート・ビューティー/追憶のローマ」などで知られるパオロ・ソレンティーノ監督によるナポリを舞台にしたイタリア映画。第78回ベネチア国際映画祭銀獅子賞に輝いた作品です。
ティーネイジャーの主人公の運命と成長を描いた家族ドラマで、コメディ色が強く、イタリアンギャグ満載になっています。まずそれが理解できるかどうかか大きな鍵で、僕にはあまり刺さりませんでした。多少笑えたとしても一つか二つのシーンですね。電気喉頭を使って喋るおじちゃんと、少年の童貞を奪っちゃうおばあちゃんのくだりかな。
おばあちゃんが若い男の子とやるとき、「はい、好きなの女の子の顔を想像して、彼女の名前を呼んで」って言ってたんだけど、ああいうギャグは万国共通なんですね。僕の中ではあのシーンが色んな意味でクライマックスでした。
本作の最大の問題は欧州映画にありがちなスロースタートなところです。30分経ってもストーリーがどこに向かっていくのかが全く見えません。誰が主人公なのかも分からないぐらいで家族紹介みたいなエピソードが全体の半分を占めます。てっきり最初はお父さん、お母さんの話なのかなあと思ったぐらいです。
後半を過ぎたあたりからやっとのことでこれが末っ子のファビエットの青春ドラマであることに気づくぐらいで、多感な彼が経験したことを描きつつ、成長を見せて行きたかったんだなあということが分かります。しかしそれまでに時間をかけすぎだし、フォーカスが定まっていませんね。
視点がずっとファビエット視点ならまだしも冒頭は美人の叔母さん視点で話がスタートするし、途中で兄視点になったり、母親視点になったりするのが余計に物語を遠回りさせています。
全体的に掴みどころがなく、どんなストーリーだったかを簡単に説明するのに困ります。言い換えると一つの軸になるストーリーらしいストーリーがなく、関連性のない小さなエピソードを時系列順に見せただけなんですよね。
タイトルの「神の手」はマラドーナのいわくつきのゴールから取ったものですが、かといってマラドーナ押しの映画ということでもなく、マラドーナはあくまでも時代背景に過ぎません。
ファビエットの運命がまるで「神の手」によって転がされている、といったような二重の意味もあるのかもしれませんが、タイトルもストーリー全体を上手く要約しているとも言い難い内容になっていました。
イタリア人たちがアルゼンチン代表の試合を見て、大歓声を上げているんだけど、あれ本当なのかなぁ。
ナポリの人々にとってマラドーナは神で、代表戦でもマラドーナを熱狂的に応援していた設定になっているんだけど、W杯で他国の試合であんなに盛り上がることって珍しいですよね。そこまでマラドーナ熱がナポリではすごかったんですかね。
一方で映像はとても美しく、ナポリの景色と80年代の雰囲気は味わい深いです。当時のナポリを知る人からすればおそらくものすごい哀愁を感じるんだろうなあという想像はつきますね。ただ、褒める点といえばそれぐらいだったかなぁ。
やはりどうしてもイタリア人向けの映画になってしまっていて、ほかの国の人々にはそれほど良さが伝わらないタイプの作品ですね。これでイタリア映画お得意の可愛いイタリア少年の話だったらもっと大衆受けのいい映画になっていたことでしょう。そういう意味では映画祭では高評価が得られても大衆の心を掴むことには失敗する類の芸術路線映画という気がしました。
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