2016/03/11

アルバート氏の人生(原題ALBERT NOBBS)

55点(100点満点)

ストーリー

19世紀のアイルランド、アルバート(グレン・クローズ)は、ダブリンにあるホテルでウエイターとして働いていた。だが、人付き合いが苦手で、もの静かな アルバートには誰にも明かすことのできない大きな秘密があった。ある日、アルバートはホテルの改装工事にやって来た陽気で端正な容ぼうの塗装業者ヒュー バート(ジャネット・マクティア)と出会い……。

シネマトゥディより

文句
彼女を見ればわかること」、「愛する人」などの名作を世に出したロドリゴ・ガルシア監督による時代劇。女性が自活の道を閉ざされていた時代に、男として男装して生きてきた一人のウエイター、アルバートの人生をつづったドラマで、系統としては「ボーイズ・ドント・クライ」などの性同一性障害系の映画に似てなくもないです。ただ、大昔の閉鎖的な時代背景が加わって主人公がさらに複雑な心境に立たされていた。そんな時代の中を生きてきた女性をグレン・クローズが見事に演じていましたね。

基本的に時代劇ものは苦手なんですが、この映画は最後まで見られました。序盤で主人公が実は女だという奇異な「秘密」を出したのが、その後の鑑賞の集中力を保つ要因になりました。視聴者と主人公が同じ秘密を共有することで、スリルや緊張感が生まれるのです。

それにしても「彼女を見ればわかること」しかり、「愛する人」しかり、ロドリゴ・ガルシアは、とことん女性の不幸で、不運なエピソードを並べてきますね。ドSの男からしたら女が痛み、苦しみさぞかし嬉しい限りでしょうが、女性にとっては胸が苦しくなるような話じゃないかと想像します。

はたしてアルバートの恋愛の相手が可愛らしいメイドのドーズじゃなければいけなかったんでしょうか。真面目に生きてきた人間がよりによってただ若くて可愛いだけが取り柄みたいな馬鹿に惚れるなよ。お前の価値観はどこに行ったんだよ、という感じもしました。長年男として生きてきただけに恋愛対象も自然と女になったとしたら、生き抜くためにしょうがなく「男」を演じているのとは違うんじゃないのか、というふうにも思えました。もしくはしょうがなく「男」を演じているうちに心まで男になり、性同一性障害に陥っていったのでしょうか。

印象的だったのがアルバートが女性の服を着て、同じく男として生きてきた女ミスター・ペイジと二人して勇気をふりしぼってビーチに散歩に行くシーンです。あのときのアルバートの解放感に満ちた気持ちよさそうな顔が忘れられません。あれは自分のアイデンティティーを取り戻したときの満足した表情じゃなかったのか。「やっぱり私って女だったんだ、ああ、ステキ」という言葉が聞こえてきそうでした。いや、それでも今さら女として生きていけわ、という心境なのでしょうか。その辺の複雑な心理をあれこれ考えるのは面白そうですね。色々な意見がありそうな映画です。ただ、できればこれを現代を舞台にして見たかったですね。生理的なものなのか東洋、西洋に関わらず俳優たちが大昔の服を着て、大昔の髪型をして、セットの中で演技しているのを見ると、冷めるんだよなぁ。

ロドリゴ・ガルシア監督の作品
美しい人
彼女を見ればわかること
愛する人
パッセンジャーズ