2017/01/25

ハドソン川の奇跡(原題SULLY)

sully

実際にあった「USエアウェイズ1549便不時着水事故」を基にしたヒューマンドラマ。乗客全員を瞬時の判断で救ったパイロットが事故後審議にかけられる様子を追った、ちょっといい話です。72点(100点満点)

あらすじ

2009年1月15日、真冬のニューヨークで、安全第一がモットーのベテラン操縦士サレンバーガー機長(トム・ハンクス)は、いつものように操縦席へ向かう。飛行機は無事に離陸したものの、マンハッタンの上空わずか850メートルという低空地点で急にエンジンが停止してしまう。このまま墜落すれば、乗客はおろか、ニューヨーク市民にも甚大な被害が及ぶ状況で彼が下した決断は、ハドソン川への着水だった。

シネマトゥディより

文句

クリント・イーストウッド監督、トム・ハンクス主演による、あるパイロットの正義感と責任感を描いた物語です。「アメリカン・スナイパー」、「ジャージー・ボーイズ」など最近いまひとつだったイーストウッドが撮った、久しぶりのいい映画です。

いわゆる飛行機事故映画ですが、従来の飛行機事故映画と違うのは墜落しないこと、そして誰も死なないことです。というのも鳥の群れがエンジンに突っ込んだことにより緊急事態に陥ったパイロットのサリーことサレンバーガーが瞬時の判断で川の上に着陸し、乗客全員を救出したからです。

ちなみに実際の事故の様子と無線記録がこれです。

この人が本物のサレンバーガー。トム・ハンクスが白髪にしたのは本人に外見を似せるためだったんですね。

サレンバーガーは事故後、ヒーローとして賞賛される一方で国家運輸安全委員会の役人たちからは事故の原因と彼の前代未聞の判断をめぐって厳しい追求を受けます。本来だったら水上に着陸するのではなく、近くの空港に戻れたんじゃないのかというのが最大の論点です。

サレンバーガーは事故後メディアのインタビューに引っ張りだこになると同時に自分の判断が本当に正しかったのか、もし間違っていたら、これでパイロットとしてのキャリアが終わるのではないかといったプレッシャーと不安に襲われます。そんな中、ついに事故の調査がひと段落し、公聴会が開かれる、というのが話の流れです。

パイロットの操縦シーンや事故までの過程、事故から緊急着陸し、救出するまでの一連のシーンは迫力と臨場感があります。主に回想シーンとしてサレンバーガーが事故を振り返る形で、繰り返し事故当日の様子が様々な角度から映し出されるため、ストーリー自体はとても短く、上映時間もわずか1時間半に抑えてあって、最近のなんでもかんでも長尺の映画にする傾向とは逆行しています。

それにしても素人目からすると、どう見ても死亡者を出さなかっただけ結果オーライの事故ですが、アメリカはちゃんと事故後の調査を徹底的にやるんですね。もっといい加減な国なら、ああよかったよかった、で終わりそうなもんですけどね。

アメリカの国家運輸安全委員会の飛行機事故の調査となると、別のパイロットたちを使ったシミュレーションをするらしく、3Dゲームのようなマシーンを通じて、事故があった現場からあらゆる選択肢を試して、それぞれどんな結果が出るのかが分かるようです。そういった航空業界の裏側を知れるという面においても、この映画を見る価値はあるでしょう。

調査を厳しくやるのは大いに結構だけれど、問題は鳥が飛んできたぐらいで壊れてしまう飛行機のモロさにあると思うんですよ。あれどうにかならないんですかね。バードストライクって結構よく聞くし、頻繁にあるみたいなので鳥がエンジンに突っ込んで来たらシュレッターが紙を粉々にするイメージか、あるいはジューサーのように固い果物をジュースにする要領で、強力な刃でも付けて、チキンのスライスになるぐらいのテクノロジーを開発してもらいたいです。なにがなんでもエンジンに届かせたらダメでしょ。

いやあ、それにしてもよく乗客全員助かったなあと思いました。ひとつ言えるのはもし事故が起こった場所がアメリカのような先進国じゃなかったら、おそらく救出が大幅に遅れてたくさんの死者を出していたことでしょう。事故は真冬のニューヨークで起きたので、気温はそれこそ氷点下だったそうです。

劇中、サレンバーガー機長本人が言っていたように全員が助かったのは旅客機のクルーをはじめ、救出にかけつけた隊員たちのおかげでもありますね。おそらく日本でも現場に駆けつけるまでにはもっと時間が遅かっただろうし、僕の住むブラジルだったら次の日まで救急隊員が来ない可能性大です。こういうところは素直にアメリカってすごいわって思います。

公聴会の最後に副操縦士のジェフが国家運輸安全委員会の女性からこんなことを聞かれます。

「最後に何か言いたいことはありますか。もしもう一度同じ目に遭ったらあなたはどうしますか」

「そうだなあ、(同じことをするなら暑い)7月にやるかな」

あれだけ緊張した場で洒落の利いたことを言えるって本当に格好いいですね。惚れます。

劇中でのセリフにはなかったんですが、サレンバーガー機長もこの事件を通じて数々の名言を残しているようです。中でもこれには痺れます。

「(事故のときに)急いでやらなくてはならないことの一つは、妻に電話して今日は夕飯はいらないと断ることだ」

格好よすぎるだろ、サレンバーガー。

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