2017/10/23

あの日、欲望の大地で(原題 The Burning Plain)


バベル」、「アモーレス・ぺロス」の天才脚本家ギジェルモ・アリアガが監督した人間ドラマ。筋書き通りにシーンを見せず、前後を入れ替えた編集方法は相変わらずです。54点(100点満点)

あの日、欲望の大地でのあらすじ

レストランのマネージャーのシルビアは毎日のように違う男と情事を重ね、自分を慰めている。そんなある日、彼女の元に自分の娘と名乗るマリアが現れ、逃れられない過去との再会を果たす。4人の子どもを持つジナは、乳がんで胸を失ってからというもの夫との間に大きな溝ができていた。その溝を埋めるかのように彼女は別の男性に愛情を求め、やがて家族を顧みぬほどのめりこんでいく。

あの日、欲望の大地での感想

現在と過去を平行して見せる群像劇です。理解するのに多少時間がかかる作りになっていて、面白味が出てくるのもエンジンがかかる中盤以降となっています。

題名の「Burning」にひっかけて、ところどころに“火”がわざとらしく登場してくるので、「燃える」というのがひとつのテーマになっているのが分かります。そういう意味深なメッセージも視聴者に後味を残す強力なスパイスになり、もう一度見ようかなと思わせる魅力になっていますね。

ただ、話の流れに色々と辻褄が合わない部分もちらほらありました。夫と上手くいかなくなった妻が他の男に愛情を求めるのは理解できるとしても、男たちがカウボーイハットをかぶっているような閉鎖的、保守的なニューメキシコの田舎で果たして白人の中年女性がメキシコ人の男と不倫をするだろうかというのがすごくひっかかりました。二人は接点もまるでなさそうだし、実際にどこで知り合ったかは触れられていませんでしたね。

すごくひっかかるのだけれども、不倫相手をメキシコ人の男にした訳は、監督自身がメキシコ人だからに違いありません。

そしてまたアレハンドロ・イニャリトゥやギジェルモ・アリアガが偉いのは、ハリウッドに進出した後でも一貫して映画の中で自分たちの国民、すなわちメキシコ人(あるいはメキシコ系アメリカ人)のことを描いていることです。

アメリカのいいなりになるような映画を撮るのではなく、メキシコ社会の叫びを代弁するような作品を全米に、いや世界中に送り届けているところにむしろ感銘を受けるのです。

最近ハリウッドに進出した日本人監督の中には彼らのような意義のある大仕事をこなした人はいません。そういう意味ではメキシコ国民はアレハンドロ・イニャリトゥやギジェルモ・アリアガのような映画人を持ててとても幸せだと思います。

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