
芸術的だけど、面白くはない、いかにも映画祭受けする作品。特に日本で商業的にヒットすることはないでしょう。49点
センチメンタル・バリューのあらすじ
映画監督グスタヴ・ボルグと心理カウンセラー、シッセルは、問題を抱えた結婚生活に終止符を打つ。グスタヴは離婚を口実にノルウェーを離れ、キャリアに専念する。一方シッセルは、代々グスタヴの一家が所有してきたオスロの自宅で、娘のノーラとアグネスを育て上げる。
成人したアグネスは歴史家として働き、結婚して息子をもうけている。ノーラはそれなりに成功した女優となるが、深刻な舞台恐怖症に悩まされていた。
ある日、シッセルの死をきっかけに、グスタヴは家を取り戻すためノルウェーへ戻ってくるが、長年の不在から、娘たちは彼に強いわだかまりを抱いていた。
グスタヴのキャリアは下降線をたどり、資金調達にも苦労している。彼の最新の脚本は、ナチス占領下のノルウェーで拷問を受けたレジスタンスの一員だった母カリンに着想を得たものだった。カリンはグスタヴが7歳のとき、家族の家で自死している。グスタヴは実際の家をロケ地に使い、クライマックスで母の自殺を再現する映画を撮ろうとする。そして祖母をモデルにした役をノーラに演じてほしいと頼むが、ノーラは脚本を読むことすら拒否する。
ノーラの代役として、グスタヴはアメリカ人女優レイチェル・ケンプを起用する。彼女のスター性によってNetflixが製作資金を提供するが、撮影現場は次第に混乱していく。グスタヴはNetflixと仕事をすることに不満を抱き、老境に差しかかった撮影監督ピーターを訪ねたことで、かつての仲間を集められない現実を突きつけられる。ノルウェー語を話せないレイチェルは、脚本が自分のために英語へ翻訳されたことに引け目を感じる。一方ノーラは、父が自分たち娘よりもレイチェルに対して思いやりを示すことに嫌悪感を覚えるのだった。
センチメンタル・バリューのキャスト

- レナーテ・レインスヴェ
- インガ・イブスドッテル・リッレオースエル・
- ファニング
- ステラン・スカルスガルド
センチメンタル・バリューの感想と評価

「私は最悪。」、「母の残像」、「テルマ」でお馴染みのヨアキム・トリアー監督による家族ドラマ。こじらせた親子の関係を映画を通じて修復していく過程を描いた芸術路線の作品。カンヌ映画祭グランプリ受賞作およびアカデミー賞ノミネート作品です。
「私は最悪。」もそうだったけど、ヨアキム・トリアー監督の作品は全体的になにかこうフェミニスト臭がしますよね、いつも女が主役だし。
本作は、かつて自分たちを捨てて家を出て行った映画監督の父親に強い恨みを持つ娘二人が、父親に対する怒りを抱えつつも、いかに彼を理解していくかをつづっていて、いわばトラウマ克服物語といった感じになっていました。
家族が守ってきた家、かつてナチスに拷問され自死した祖母、そのトラウマを受けて育った父親、そしてその父親からトラウマを受けた娘たちという代々受け継がれてきた傷、そしてそれぞれにセンチメンタル・バリュー(感情が染みついているがゆえの価値)があるために執着し、翻弄され、捨てたいけど捨てきれない、という感情を描いていて、なかなか複雑な心境に切り込んだ一筋縄ではいかない大人の映画といえるでしょう。欧州人はこういうの好きだよね。
駄作とは言わないけど、面白いかどうかで言ったら面白くなかったです。映像的な楽しみはほとんどないし、予想外な展開があるわけでもないからです。会話と演技重視なので、登場人物に感情移入できなかったらそれはそれは眠くなることでしょう。
まず大事な時期に不在だった父親に対する娘たちの怒りを理解できるかどうかがカギとなりそうですね。特に女優の長女のほうはもうそれはそれはお怒りになられていて、それなのにずっと心の奥底では父親に認めてもらいたがっているという子供特有の本能を持っています。
舞台女優とはいえ映画監督の父親と同じアートの世界で生きている点においても彼女はしっかり父親の意志を引き継いでいて、父親に強く反発しつつも誰よりも父親のことが頭から離れないというコンプレックスも抱えつつ、父親に捨てられたトラウマのせいか異性とも深い関係を築けず、パニック障害のような症状もありましたね。そう考えると、親の影響ってすさまじいなあとも思えるし、もういい大人なんだからいつまでも親の呪縛に囚われてるんじゃねえよとも思えます。
ちなみに僕自身も多感な時期に父親不在で育ち、10数年後に再会したりしてるので、この映画の娘たちの気持ちを理解できないわけでもないです。ただ、虐待を受けたとかじゃないんだったらあそこまで恨むこともないんじゃないかなあ。それより今一緒にいれることに感謝したほうがいいでしょ。子供のときに恨むのはまあいいでしょう。でも大人になったら、そのときの父親の立場、気持ち、人生のことも理解できるようになるでしょ。
両親から受けたトラウマや恨みは、自分が結婚して子供を持ったとき、自分の子供たちには決してそんな思いはさせないって強い信念をもって育てれば十分に気持ちが晴れるでしょ。自分が両親にしてもらえなかったことを自分の子供にしてあげればいいじゃん。
長女のノーラは未婚だからそんな気持ちになれないのはまだしも次女のアグネスまであんな恨み節なのは理解に苦しみました。僕の実の姉もいまだに父親のこと恨んでて、絶対会おうとしないんだけど、女ってそういうところあるんですかね?
ラストはどうなんでしょうか。なんか綺麗にまとめたなあ、という感じがしましたね。家族のセンチメンタル・バリューの象徴でもある家も手放したようでしたね。それこそが家族の克服を表しているようでした。
でもあれはノーラが祖母と同じ方法で死んじゃうっていうほうが悲劇で悲しくて映画的にはよかったようにも思えます。ずっとジメジメやってきたんだから、最後もバッドエンドにしないと。



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