ホラー要素が薄く、ミュージカル要素が強いヴァンパイア映画。見やすくけど、終盤ダレました。58点
罪人たちのあらすじ
1932年、一卵性双生児で第一次世界大戦の退役軍人であるスモークとスタック・ムーアは、シカゴで働いていた数年間を経て、ミシシッピ州クラークスデールに戻ってくる。彼らはギャングから盗んだ金を使い、人種差別的な地主ホグウッドから製材所を購入し、地元の黒人コミュニティのためのジューク・ジョイントを始める。彼らのいとこでギタリスト志望のサミーも、ブルース音楽は邪悪だと警告する牧師の父ジェディダイアの反対を押し切って参加する。
スタックは、白人の元恋人メアリーと再会する。彼女は、彼が自分を守るために離れたことに対し、恨みを抱いていた。双子は、ピアニストのデルタ・スリムをパフォーマーとして、地元の中国系商人夫妻グレースとボー・チャウを仕入れ先として、野良働きのコーンブレッドを用心棒として、そしてスモークの別れた妻アニーを料理人として雇う。アニーは、自身のフードゥーの力で双子が無事だったと信じているが、スモークは亡くなった幼い娘を救えなかったことから、その力に疑いを持っていた。
その頃、アイルランド移民の吸血鬼レミックは、チョクトー族の吸血鬼ハンターから逃れ、クー・クラックス・クランの夫婦と身を寄せる。彼はその夫婦を吸血鬼に変えてしまう。
ジューク・ジョイントのオープニングナイト、サミー、デルタ・スリム、そしてサミーが惹かれる歌手のパーリンがステージで演奏する。サミーの音楽は超越的で、無意識のうちに過去と未来の霊を呼び寄せ、観客に紛れさせる。しかしその演奏は、レミックとその手下の吸血鬼たちも引き寄せてしまい、彼らは入場と引き換えに金と音楽を提供すると申し出る。スモークは怪しみ、これを拒否する。
双子は、店の客が会社の代用通貨しか持っていないため、利益が出ないことに気づく。スタックと話し合った末、メアリーはレミックと密会し、吸血鬼にされてしまう。そして彼女は店に戻り、スタックを誘惑し噛み殺すのだった。
罪人たちのキャスト
- マイケル・B・ジョーダン
- ヘイリー・スタインフェルド
- マイルズ・ケイトン
- バディ・ガイ
- ジャック・オコンネル
- ウンミ・モサク
罪人たちの感想と評価
「フルートベール駅で」、「クリード チャンプを継ぐ男」、「ブラックパンサー」シリーズでお馴染みのライアン・クーグラーの監督によるミュージカルファンタジーホラー。序盤から中盤にかけてすごく面白いのに、その後平凡な作品に成り下がっていくもったいない映画。
時代は1930年代、シカゴに住んでいた悪名高い双子が地元のミシシッピ州の田舎町クラークスデールに戻ってきたのをきっかけに、盗んだ金で土地を買い、そこに上質の音楽を演奏する酒場をオープンするというのが前半の流れで、知り合いのブルース演奏者や料理人たちをスカウトして仲間を集めていく様子は、鬼退治に行く桃太郎そのもので、見ていてワクワクしました。
セリフはオシャレでユーモアがあるし、早いテンポの中でそれぞれのキャラクターの背景もほどよく含めてあって、各キャラに親近感がわいてきます。双子が無茶苦茶する度にバイオレンスもあり、ソフトな男女の絡みもあり、エンタメを隈なく散りばめています。
とはいえ全体的にはこの時代のブルースを贅沢に用いたミュージカル映画だなという印象を受けました。それもわざとらしく出演者が歌って踊り出すミュージカルではなく、ストーリーの中に自然に音楽を組み込んだセンスのいい音楽映画に仕上がっていました。特にサミーが歌うと急に格好よくなるのが痺れますね。さすがプロのミュージシャンだわ。ミュージシャンたち、みんないい味出してたわ。さらに現代ミュージックと上手に融合させる一コマもあって、センスのいいミュージックビデオのようでもありました。
ストーリーは、黒人の双子が音楽を流す酒場を切り盛りして、そこに差別主義者の白人たちが邪魔しにやってくる、という話にすればよかったんですけどね。それがどういうわけか、白人をヴァンパイアに置き換えちゃったんですよ。
ヴァンパイアが登場した途端、話が突然ファンタジーになるもんだから、それまで築き上げてきたものがもろくも崩れ去っていく感じがなんとも寂しかったです。なんでせっかくの美しい話を台無しにするかなあって。
基本、ハリウッドの描くヴァンパイアもゾンビも同じなんですよね。噛まれたらダメで、あるとしたらどんどん仲間たちがヴァンパイア化、ゾンビ化していくっていうソフトな恐怖じゃないですか。あの茶番劇、全然入っていけないんですよね。
なにがずるいってヴァンパイアとかゾンビって敵にするのに最適で、架空のキャラだからどれだけ酷い扱いしても角が立たないんですよね。敵を特定の人種やグループにしちゃうと、その人達から反感を食らうリスクがあるからね。これ以上のリスクフリーで殺し放題の敵キャラってないんですよ。でもだからこそ面白味に欠けるんですよ。どちらの立場も取ってないから。その癖、風刺だ比喩だっていう言い訳で逃げようとするでしょ。
ヴァンパイアが出てきたことによって、完全に「フロム・ダスク・ティル・ドーン」の二番煎じになってしまいましたね。後半のハチャメチャぶりもタランティーノっぽかったし。ああもったいない。
それにしてもライアン・クーグラー監督は、マイケル・B・ジョーダンと恋仲なのかなあっていうぐらい彼を起用しますね。マイケルとじゃないと嫌だ!とかわがまま言ってそうで怖いもん。
コメント