ベルリンの壁崩壊前の東ドイツを舞台にした政治ドラマ。反体制の疑いがある人々を盗聴し、怪しい人間は次々と牢獄へぶち込んでいったドイツの暗黒時代を描き、世界中で評価された作品。50点(100点満点)
善き人のためのソナタのあらすじ
シュタージ(国家保安省)の局員ヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)は、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と恋人で舞台女優のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。
ヴィースラーは盗聴器を通して彼らの監視を始めるが、自由な思想を持つ彼らに次第に魅せられ……。
シネマトゥディより
willow42さんのリクエストです。ありがとうございます。
善き人のためのソナタの感想
「ある画家の数奇な運命」のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督によるスパイ映画。僕はこの映画をスパイ映画としてみました。
自分たちの国益を守るため反勢力を抑えようとする、そのための活動が盗聴であったり、監視であったりと東ドイツのネチネチぶりがよかったです。
スパイ活動というのはそもそもこの映画のようにじーっと誰かの会話を記録するなどネチネチしたものだと思っているので、銃撃戦とかに頼っていないところに共感が持てます。
その一方である矛盾的にも気づきました。あれだけ盗聴設備も整っていて、ビデオカメラも使っているような時代なのになぜ録音機能が付いていないのかという点です。
主人公のヴィースラーが会話を逐一タイプして、上層部に報告するという流れはストーリー上仕方なくそういう設定にした、というのが見えてしまって残念でした。もし録音できてたら、上層部も全ての会話を把握できるわけで、それだとストーリーが成り立たなくなるからです。
こういうのを実話に基づいて作ったとか言っちゃだめですね。どこか「パラノーマル・アクティビティ」の矛盾的と似ていて、視聴者を冷めさせてしまうほどの大きな失態だと思います。あと共産主義時代の芸術家があれほど優雅に暮らしていたとはとても思えないんです。
もっとカツカツで貧乏生活していて、身なりも汚く、女もブスで、会話も「お腹空いたなあ、これじゃあ脚本なんて書けないよお」とかだったら面白かったんですけど。
ヴィースラーもスパイとしては三流ですね。すぐに裏切っちゃうんだから。バリバリの共産主義体制の中で生きてきた男が、ちょっと芸術に触れただけで、考えを変えてしまうなんて東ドイツの教えも甘ったるいです。
なにが舞台だよ、とか軽蔑してるぐらいの男だったらよかったんですけどね。あんなにすぐに思想が変わっちゃうとはね。
面白かったシーンを挙げるとすれば、ヴィースラーがカップルの会話を聞いて、切なくなって酒場に飲みに行ったり、寂しくなって売春婦を家に呼んだりする下りですかね。盗聴する側だってつらいんだぜ、というのをああいう形でちゃんと描いたことは評価に値しますね。
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