希望の国

sono

38点(100点満点)

ストーリー

泰彦(夏八木勲)と妻(大谷直子)は酪農を営みながら、息子夫婦(村上淳、神楽坂恵)と一緒に慎ましくも満たされた暮らしをしていた。そんなある日、大地震が村を襲う。泰彦の家は避難区域に指定されたが、長く住んだ家を離れることができない。葛藤(かっとう)の日々を送る中、息子の妻いずみの妊娠が発覚。 二人は子どもを守るためにあることを決意する。

文句

ヒミズ」、「恋の罪」などでお馴染みの園子温監督による原発事故によって人生を翻弄されたカップルたちの恋愛ドラマ。

園子温監督といえば人間の厭らしさや気味悪さをドロドロの展開で描くことに長けていますが、今回は衝撃もなく、普通のドラマに成り下がっていました。上映時間が長いのは相変わらずで、なによりストーリーが震災後に散々話題になったエピソードばかりをかき集めただけの出来合いのものばかりで、それをいかにも映画的なわざとらしい演出で仕上げていたのがつまらなかったです。「ヒミズ」のときもそうでしたが、園子温監督はさすがにしつこいですね。あれは狙って意図的にやってるんでしょうね。登場人物が同じセリフ何回言うんだよっていう場面が結構あります。「愛があれば大丈夫だよ」などと連続で言う妻とか「もういいから」ってなります。

震災、そして原発によって自分たちの住む場所を追われ、様々な情報が交差し、6人の男女たちはそれぞれの信念のもと行動します。危険地域だとされても家を出て行こうとしない老夫婦。生まれてくる子供を守ろうとできるだけ遠くに逃げようとする新婚夫婦。津波に流されただろう両親を探し回ってさまよう若者カップル。みんなが意地になって自分の信じる道を歩もうとし、自分の考えを貫こうとする姿が印象的でした。

震災後食事や放射能に過剰に神経質になった人とそうでない人の違いは一体なんなのでしょうか。「俺はここから一歩も出て行かない」、あるいは「こんなところからは今すぐ出て行かないと」といった極端な行動に出たりする場合が多々あるけれど、あれは情報うんぬんではなく、ほとんどの場合本能的に行動を決めているような気がしないでもないです。

僕の知り合いに誰もが羨むおしどり夫婦がいました。二人は東京で自営業を営みながら仲良く暮らしていました。しかし震災が起こってから夫のほうが放射能を嫌って沖縄移住を決断します。順調に行っていた店をたたむことに奥さんのほうは反対しました。最初は夫の言うとおりに奥さんも沖縄について行きましたが、やがて夫の過剰な放射能恐怖症に付き合い切れず、離婚してしまいました。夫は沖縄から東京に荷物を取りに帰った際、空港に降り立ったときにガスマスクを装着したほどの恐がりようだったそうです。かといって夫のほうが異常で奥さんが正常という話でもありません。もしかしたら夫が正解なのかもしれない。それにみんなが気付いていないだけで。

人は大きな出来事があったり、なにかの節目で生活拠点を変える、変えないの決断に迫られることがあります。決め手となるのは正しい間違いではなく、さっきもいったように本能、信念、あるいは信仰が影響してきそうですね。「私はこの土地を捨てることはできません。この土地には代々の先祖が眠っているし、ここを動くわけにはいきません」というのはとても宗教的な発想だと思います。「なんだか知らないけどここにいちゃいけないんだ。インドに移住しよう」というのもまた同じでしょう。

もしあのとき震災がなかったら僕の知り合いの夫婦は今も東京で一緒に暮らしていたことでしょう。そんなカップルが日本中には一体どのくらいいるのだろうかなどとつい想像してしまいます。その夫婦の奥さんのほうは離婚後、東京に帰り新しい男性と結婚して子供を産んだそうです。対して夫のほうは沖縄でキャバ嬢と付き合っているそうです。真面目な男だったのが沖縄に行ってからチャラい男になってしまったと聞きました。もしあのとき震災が、原発事故がなかったら、と思ってもしょうがないけれど、ときどき思わずにはいられません。この映画の場合はカップルたちは別れる気配もほとんどなく、一組くらい男女が別々の道へ進んでもまたよかったんじゃないかな、というのもありました。色んな意味でインパクトに欠け、園子温監督らしくなかったですね。

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