気合で事件を解決しようとする刑事たちによるリアルでシリアスな人間ドラマ。まあまあ面白いです。58点
12日の殺人のあらすじ
2016年10月12日の夜、グルノーブル警察の警官たちは上司の退職を祝っていた。ヨハン・ヴィヴェスが上司のポストを引き継ぐことに決まっていた。同じ夜、クララ・ロワー（21歳）は、友人たちとのパーティーが開かれていた家を出て、自宅に帰ろうとしていた。途中、彼女は親友のステファニーに動画メッセージを送る。その直後、彼女はある男と遭遇し、突然彼から火をつけられるのだった。
グルノーブル警察がこの事件の捜査を担当することになった。被害者を特定し、彼女の親族に連絡した後、彼らはステファニーの助けを借りて、被害者が付き合っていた男性たちのリストを作成。彼らを一人一人尋問し始める。ヨハンと同僚のマルソーは、クララの悲惨な死にショックを受けていた。
クララの元彼たちの尋問では犯人を見つけることができなかった。彼女と別れた後に彼女を「焼く」と脅すラップソングを書いた元彼もいた。しかしラップだけでは決定的な証拠とはいえなかった。
やがて刑事たちのもとに匿名の手紙が届き、中にはライターが入っていた。送り主はクララを知っていた浮浪者だった。クララは彼とも関係を持っていた。
事件現場には花などさまざまな物が供えられていた。ある日、クララの父親はそこで血のついたTシャツを見つけ、警察に届ける。血液は、クララと関係を持ったことのある男のものだった。刑事たちは男のアパートに乗り込んでいったが、男は否認した。マルソーは憤慨し、男を殴ってしまい、これが原因で異動となる。そしてそのまま事件はしばらく迷宮入りするのだった。
12日の殺人のキャスト
- バスティアン・ブイヨン
- ブーリ・ランネール
- テオ・チョルビ
- ヨハン・ディオネ
- ティビー・エベラー
12日の殺人の感想と評価
「悪なき殺人」のドミニク・モル監督による実際にあった事件をつづったノンフィクション本を基にしたフランス産サスペンス。火をつけられて焼死体で見つかった女性殺害事件の犯人を追う刑事ドラマで、次から次へと胡散臭い新容疑者が出てくる、見ごたえある物語です。
ハリウッド映画のような派手さや刺激的な演出は一切なく、あくまでも静かにねっとり話が進んでいくのでそれなりにフランス映画に慣れていないと退屈と感じる人もいるでしょう。とはいえフランス映画にしてはテンポはかなり速い方だし、見やすい方だと思いました。さも犯人面した怪しい奴らがどんどん登場してくるので休む間がほとんどなく、集中して最後まで見れました。
刑事ドラマなんだけど、DNAなど科学的な証拠を集めて犯人を追い詰めるタイプの話ではなく、あくまでも容疑者を尋問にかけて自白を迫って解決しようとする昭和っぽさがあって、刑事たちは頭脳派のように見えて案外肉体派です。証拠が少ない殺人事件の捜査ってあんな感じになるのかなあ。捜査の仕方がちょっと雑というか、行き当たりばったり感は否めなかったです。
よく言うじゃないですか、「完全犯罪などない。捜査が不十分だった犯罪があるだけだ」って。そういう意味では刑事たちは結構アホなのかなあとも見れなくもないキャラになっていて、常に冷静でいるべき男たちが感情むき出し、私情むき出しで事件の捜査にあたっているのが問題でしたね。それぞれのプライベートな問題とかにも触れていたけど、そんなの事件とは関係ないからね。
この事件の場合、ただ殺害するだけでなく焼殺だったというのが一つのポイントになっていて、そこまでやるのは加害者が相当な恨みを持っていたに違いないと考えられそうです。それを踏まえて刑事は被害者クララの過去の交際相手を洗っていくんですが、その数があまりにも多く、また大部分が彼女をセフレとしか見ていないような男ばかりで、クララに対する偏見が膨らんでいきます。
早い話、「この女も結構やばいんじゃない？」っていうのを警察が感じ出すんだけど、いくら被害者の貞操観念が低いといっても本来それが殺人を正当化することにはならないわけです。しかしそんなことは分かっていてもどうしても悪いイメージを持ってしまうのが人間で、そういった偏見や差別が捜査に影響がなかったとも言い切れないところがありました。
責任者のヨハンは一応信念を持って捜査に取り組んでいるように見えるものの、途中から事件に取りつかれていき、執着し、なんのために犯人を追っているのか自分を見失うような姿も見せ、それが直接拍子抜けのラストにつながっていきます。
ラストシーンはハリウッド映画ではありえない、フランス映画を代表するような終わり方になっていて、あれはさすがに物足りなかったです。なにをお前はすっきりした表情を見せちゃってるんだよって思っちゃいました。こっちは全然すっきりしなかったからなって。
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