アイスランド発の田舎で繰り広げられるシュールな復讐劇。決して怖くはないけど、脚本やシナリオはしっかりできていて、ダークなおとぎ話に仕上がっています。58点
LAMBラムのあらすじ
アイスランドの山岳地帯で羊を飼いながらひっそりと暮らすマリアとイングヴァールの夫婦。今年も羊たちは順調に出産をし、多くの子羊を産んでくれていた。
しかしそんなある日、一匹の羊が特殊な子羊を産み夫婦を驚かせる。頭は子羊、体は人間というハイブリッドだったからだ。夫婦はその子羊を羊小屋ではなく、自分の家に連れて行き、我が子のように育てることにする。そして彼らは子羊をかつて病死した娘の名前から取ってアダと名付けた。
ところがまもなくしてアダのことを奪い返そうと母親の羊が家の周りをうろつくようになる。するとマリアはアダのことを取られまいと母羊を銃殺するのだった。
LAMBラムのキャスト
- ノオミ・ラパス
- ヒナミル・スナイル・グブズナソン
- ビョルン・フリーヌル・ハラルド
- イングバール・E・シーグルズソン
LAMBラムの感想と評価
バルディミール・ヨハンソン監督によるファンタジーホラー。人間と羊のハーフの子供をめぐって農家の夫婦と羊たちが巻き起こす仁義なき戦いです。
セリフ少なめ、音楽小さめ、ハプニング抑えめな作品でハリウッド映画的なテンポと演出はありません。その点、退屈な時間帯も多く、欧州映画でありがちな説明不足感も否めないです。物語が動き出すのはほぼ1時間ぐらいからでスロースタートにもほどがあります。
一方で後半の展開はなかなか気持ち悪く、興味をそそられ、どんな終わり方をするのか好奇心をくすぐられるものがありました。これでもっと前半部分を頑張ってくれたらいい映画になってたんですけどね。いかんせん前半はすべて長すぎるフリに使われてて、それ自体に見所がないんですよ。
一番のターニングポイントとなるのは、人間と羊のハイブリッド子羊が生まれた時でしょう。しかし本来なら生まれた瞬間をもっとショッキングに見せて視聴者に子羊がどんな特別な存在なのかをアピールしておくべきでしたね。でもそれをせずに夫婦の表情をドアップさせて、あえて羊を映さないんですよ。
おそらく羊と人間の赤ちゃんの映像化が上手くできなかったんでしょうね。だから子羊の姿を隠して隠して1時間引っ張るんですよ。なにがどう特別で、夫婦がこの子を我が子として育ててるのかわからないまま結構時間が過ぎ、それからしばらくして大きくなったところで子羊の全体像を初披露します。
それがもう完全にギャグになってしまっていて羊が二足歩行で歩いてダイニングに入ってくるんですが、ジーンズにセーターを着てるんですよ。絶対笑うでしょ。あれはここ一番の気持ち悪いシーンにしないといけなかったはずなのにソフトバンクの犬のお父さんのCMみたいなことになってしまってて、ホラー路線から大分ずれてしまいましたね。
また、子羊のアダは二足歩行まではできるのに言葉はちゃんと喋れないみたいで、人間らしくもあり、羊らしくもあるんですよ。夫婦はそんなアダを溺愛し、甘やかし、彼らの生きがいにしていきます。
ただ、ほかの羊たちはあくまでも家畜なのにアダだけなんで特別扱いなんだっていう点が最後まで解せませんでしたね。ハイブリッドだからって言われても羊が生んだ子なんだし。動物も家族の一員だっていうなら昔から飼ってる犬をもっと大事にしろよって思うし、そもそも最初に羊とやって羊を妊娠させた人間は誰だよって話じゃないですか。
いずれにしてもずっとアダがセーターを着てるからそれがウール素材なのかどうかが気になってストーリーがあまり頭に入ってきませんでした。あそこはせめてパーカーとかスウェット素材にするべきじゃない?
ラストも賛否両論というか笑ってしまうか、怖いと思うかの二パターンに分かれそうです。僕は笑ってしまいました。本当なら笑ったらダメなんですよ、もっとシリアスに見ないと。でもあんなのが出てきたらね、笑うでしょ。
でも笑えはするんだけど映画的にはしっかりとした物語に仕上がっているんですよね、不思議と。低予算、少人数でよく作ってあるし、批判すればいいのか褒めればいいのかなんだか難しい作品でした。
コメント
こんにちは。本作、予告で観ましたが、BGMの気味が悪い歌?が印象に残っています。何となく、「件(くだん)」みたいなオドロオドロしい話かと思いきや、ラムが服を着ているなんて、まるで「くまのプーさん」みたいですね(笑)そのギャップを楽しめるかどうかなのかなと思いました。
ぜひ見てみてください
お返事ありがとうございます。実はホラー映画は苦手な方なのですが、時間があればチャレンジと称して観てみようかなと思います。。
すみません、名前はラムではなくアダでしたね。「夭逝した子供の代わり」というコンセプトは、何となく「エスター」を彷彿とさせました。
エイダが誰と誰の子供か分からないって?
何を見てたんだw 映画の感想言う資格ないでしょw
エイダが誰と誰の子供が分からないんて一言も書いてないですよ。「最初に羊とやって羊を妊娠させた人間は誰だよ」っていう意味がもしかしたから分からなかったのかな?
微妙な内容でも、映画として成立させるのは、ノオミラパスの演技力なんじゃないかと思います。この手の映画は後味悪くて、あと引くから、観るのをちょっと躊躇しますよね。気になっていた映画なので、取り上げていただいてありがとうございました。
確かに演技は悪くないですね。
うーん、この手の映画は「あのシーンは何だったんだろう」「あれは伏線?」など自分なりに深く考察して楽しむものだと思うので、あなたのように深く考えることが不得手な方が観ても楽しめないと思います。
私は全編通じてマリアの心の闇をとても感じました。
アダの全身をなかなか映さなかったのは、凡百のホラーとは違う切り口を見せたいだけで、今時上手く映像化出来なかったなどという理由ではないと思いますよ。
ヨハンソン監督のインタビューを読みましたが、観客に想像の余地を持たせるため意図的に情報をそぎおとして作ったそうです。
アダは最初から愛らしく美しい存在として作ったと言ってますし、そもそも監督は本作をファミリードラマと考えているので、アダの登場を気持ち悪く描くはずがありません。
ご自身の好みとは違うところに監督の意図がある映画もあるのです。
初めまして。
個人的には凄く楽しめました。
もしかしたら仰る通り技術的に難しくてアダが生まれるシーンはああなったのかも
知れませんが個人的にはあの演出は正解だと思います。そしてアダの全身が
外で見つかる所であっさりばらすのが結構以外性あって良かったです。
奇形の子供を自分の娘の代わりとして思い込むのも夫婦がこどもを無くしたっ
ていう設定で説明してるので納得は出来ました。
オチはえぇ~と思いましたが虚構推理という作品で
「人の理の外に関わらない方がいい」って話を思い出して一応腑には落ちました(笑)
あとキューブリック作品みたいに基本左右対称な画面構成で不安をあおる雰囲気が
全編に出てたのは上手いな~と思いました。
長々書き込んで申し訳ありません。
これ、はまる人には、はまるだろうなあって思いながら見てました。僕は笑っちゃいましたが
あけましておめでとうございます。
今年も映画男さんのブログ、楽しみにしています。
私、これ結構好きでしたw
じんわり不気味な雰囲気がずっと漂っていて、まあ、最後はああなるしかないよな、と。
ソフトバンクの犬とかセーターの素材とか、めっちゃウケましたw
アダがだんだん可愛く見えてきて、アダのキーホルダーとか欲しいなと思ってしまいましたw
あけましておめでとうございます。これ、はまる人にははまりそうな映画ですね