いまいち盛り上がりに欠けるホラー映画。もうちょっと見せ場が欲しかったです。42点
マザーズのあらすじ
シングルマザーのエレナはハウスキーパーとして雇われ、住み込みでルイスとカスパー夫妻の家で働くことになる。ところが夫婦の家には電気もなく、自給自足をしていたりと原始的な生活を送っていてなにかと大変だった。携帯も充電できなければ家は森に囲まれていて、夫婦はおかしなスピリチュアルに傾倒していた。
ルイスは病気がちで辛そうにしていた。ときどきスピリチュアルヒーラーを呼んでは悪いエネルギーを体から放出しようとしていた。
エレナはそんなルイスを見て、可笑しく思った。その一方でルイスの優しさや人の良さは理解していた。子供を実家に預けているエレナは寂しさを感じていたが、この生活にもある種の楽しみを見出していた。
そんなある日、ルイスが冷凍保存した卵子をもとに自分の子供を代理出産してくれないかとエレナに頼む。その代わりにエレナが子供と一緒に住めるアパート代に相当する報酬を払うと言った。
エレナは迷ったが、普通に働いていたら何年も住み込みしなければならないことを考えると、悪くない提案だと思い受け入れることにした。しかしそれがとんでもないことを招くことになるとはそのときは知る由もなかった。
マザーズのキャスト
- エレン・ドリト・ピーターセン
- コスミナ・ストラタン
- ピーター・クリストファーソン
- ビョルン・アンドレセン
マザーズの感想と評価
「ボーダー二つの世界」のアリ・アッバシ監督による長編デビュー作。ひょんなことから代理出産を引き受けたシングルマザーと夫婦の身に起こる恐怖体験をつづったホラー映画。
なにかが起きそうな気味の悪さや怖い雰囲気を終始かもしだしているものの、それほど話が膨らまずに終わっていく惜しい作品。アリ・アッバシ監督の才能の片りんは見えますが、まだ開花していない感じが伺えます。
ジャンル的には憑依ホラーなのかなぁ。それとも悪魔系ホラーなのでしょうか。最後までストーリーがはっきりしないのでなんとも言えないんですよね。その曖昧さがこの作品も問題点でもあります。
あと、邦題が最悪ですね。「マザー」がタイトルにつく映画、世界中に何本あるよ。検索したらまずひっかからないでしょ。株式市場の東証マザーズが出てきちゃうじゃん。原題は赤ん坊の名前のShelleyなんだからそのままでいいのにね。
主な出演者は3,4人で舞台となるのも田舎の一軒家のみ。低予算で作っているわりには安っぽさがなく、映像も演技も決して悪くないです。しかし肝心なストーリーが物足りなさを感じさせますね。
恐怖エピソードも弱いし、色気もありません。夫婦の家に住み込みで働く若い女の子の話なんだったらちゃんと夫と浮気してくれないと。そこ義務でしょ。
ストーリーが本題に入っていくのはヒロインのエレナが妊娠してからで、エレナは妊娠した途端に体調を崩し、次々と彼女の身に奇妙な出来事が起こります。
最初はホルモンの問題だとして片付けようとしましたが、他人の子供を身ごもることにストレスが増していったのか、あるいはみごもった子供が悪魔的な存在だったのか、やがて狂って自らお腹の子供を殺そうとする、というのが話の流れです。
確かに代理出産ってストレス半端なさそうだなあ、というのは想像できました。妊娠中は自分の子供でも不安が一杯なのに他人の子供となると余計に色んな心配がつきまといますよね。それも自分の生活を続けながら出産するだけならまだしも夫婦と一緒に生活しているんだからなおさらのことです。
赤ん坊が悪魔で全部赤ん坊が悪さをしていたとしても、なにか因果があってそうなったという起承転結があってもよかったかもしれませんね。全ての出来事が突然で、文脈もなく起こっていくのでどうしても「なぜ」が知りたくなってしまいます。
ただ視聴者のそういう疑問に答える気はさらさらないタイプの映画で、とにかく自分で考えろといった突き放した印象を受けました。そういえば「ボーダー二つの世界」もどっちかというとそのタイプでしたね。
あれはそもそも設定や世界観がぶっ飛んでいたからそれでもよかったけど、この作品の場合はあくまでも日常の中で起こった恐怖体験だから真相が知りたくなってしまってもどかしさがありました。
展開があまりにも少なく、妊婦がお腹を痛そうにしているだけの絵がずっと続くので途中で飽きてきます。それにあれだけ体調を崩してたら普通入院するよね。産婦人科に体調は問題ないですよって言われたんだったら病院変えようよ。やぶ医者ってことなんだから。
冷静に見ると、赤ん坊をめぐって頭がおかしくなる人々の表情に頼っているだけの恐怖でした。「この赤ん坊のせいで私は気が狂いそうだ、うわー」っていうだけの。それならもうちょっとグロさも必要だし、狂い方もあんなもんじゃダメでしょ。妊婦が逆立ちで階段を上ったり下りたりしないと。
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