アメリカ人男がフランスにふらっと行って、娘をちゃちゃっと救い出してくる、おバカ映画。ランボーのほうがまだましです。30点
スティル・ウォーターのあらすじ
オクラホマ州スティル・ウォーターの石油会社に勤めるビル・ベイカーはある日、フランスで収監されている娘アリソンを訪れる。
アリソンは無罪を主張しているにも関わらず、マルセイユでルームメイトであり、恋人のリナを殺害したとして逮捕され、9年の実刑判決を受けていた。
ビル・ベイカーは娘の無実を信じていた。アリソンはビルが刑務所に訪問に来たときにフランス語で書いた手紙を見せ、それを弁護士に渡すように頼んだ。
ところがビルが弁護士に手紙を渡しても弁護士は、すでに判決が下されたのでどうにもならないといって取り合ってくれなかった。手紙には、アキムという男が犯人に違いないと書かれていた。
フランス語の話せないビルは、たまたまホテルの隣の部屋にいたヴァルジニーと知り合い、彼女にアキムを探すのを手伝ってもらう。アキムはどうやら治安の悪いスラムに住むアラブの少年のようだった。
それには危険がつきまとい、ビルは知らず知らずのうちにヴァルジニーと彼女の娘のマヤを巻き込んで行ってしまう。
スティル・ウォーターのキャスト
- マット・デイモン
- アビゲイル・ブレスリン
- カミーユ・コタン
- ディアナ・ダナガン
- リル・シャウバウ
スティル・ウォーターの感想と評価
「扉をたたく人」、「スポットライト世紀のスクープ」のトム・マッカーシー監督による、フランスで服役中の娘の無実を晴らすために父親が奔走する物語。良さげな雰囲気はかもしているものの、ストーリーにリアリティーがなく、いまいち面白くない作品です。
家族ドラマなのか、サスペンスなのか、犯罪ドラマなのか、ジャンルがはっきりしない映画で、それはすなわち方向性の定まらないブレブレな内容だとも言えます。
物語は、アメリカで肉体労働をしているビルが、娘が服役しているフランスのマルセイユを訪れ、人の助けを借りながらも娘が関わったとされる殺人事件の真犯人を自分で捕まえて、娘を救い出す、というものです。
ビルはフランス語が話せないので、現地で知り合ったフランス人のシングルマザーを頼って彼女と二人で事件を解決しようとするんですが、シングルマザーがとにかくなんでもやってくれる人で、犯人捜しはおろか、挙句の果てには自分の家にビルを住まわせてあげるほど親切なのが嘘っぽかったです。そう、ビルは数日の滞在のつもりが事件解説のためにフランスで肉体労働をやりながら住み始めるのです。
いわば警察や弁護士は頼りにならないから、「俺が自分で犯人を捕まえてみせる」という勘違いお父さんのお話で、ハリウッド映画に多いですよね、こういうの。
犯人を捕まえるのはもちろん、外国で服役中の娘を刑務所から出す、なんていうゴールがそもそも難しすぎますね。
金もない、コネもない、言語もできない、知識もない男がなんでシステムをひっくり返すみたいな大それたことを一人でやろうとするのかが分からないんですよ。それも一人でやるというより、ほぼほぼシングルマザーに丸投げしてるからね。
フランス人だってどこの馬の骨かも分からないアメリカ人の男にあんなに優しくするほど暇じゃないだろ、って話なんですよ。ほんと、ハリウッド映画のアメリカ人って世界中の人々から愛されてる前提でストーリーが成り立っていますよね。
そんでもってビルはシングルマザーの8歳の娘と仲良くなり、言葉も通じないのに彼女の父親代わりになる、というありえない方向に話が進んでいきます。そして案の定、シングルマザーとできちゃっていつの間にか犯人捜しが恋人探しになっていき、恋愛している間にもたまたま犯人の少年と遭遇し、簡単に捕まえちゃったりします。
そしてDNA鑑定をするために少年の髪の毛を取り、鑑定結果が出るまで家の地下室に少年を監禁しておく、という怖い話になっていきます。あの流れは「プリズナーズ」とも似ていますね。ただし、やはり怖い方向に振り切ろうとする力が弱く、ビルがとんでもない罪を犯しているのになぜか最後は話が丸く収まってしまうのがダメダメで、なんだそりゃ?でした。
そもそも娘の証言だけを信じて、勝手に少年を捕まえてきて、監禁なんてしちゃだめだろって。人違いだったらどうするんだよ。それを家族愛みたいに言われてもね。
挙句の果てに最後の最後で、娘は実は犯人の少年とつながっていて彼女がルームメイトを追い出すように少年に依頼したんだそうです。そしたら少年が追い出すどころかルームメイトを殺してしまった、というオチになっていました。娘、黒じゃないですか、完全に。
娘と実行犯の少年のやり取りをまるで文化や言語の違いからの勘違いが生じて、殺人に発展してしまった、といったような描き方をしているんだけど、さすがに無理がありますね。そもそも少年が殺人の仕事だと思って引き受けた報酬がネックレスって。お金は後でもらう約束だったんだそうだけど、それがいくらかによっても話が大分変ってきますよね。そもそも安い額で殺人の仕事なんて請け負わないだろうし、学生の娘が高いお金なんて払えないだろうし、どっちにしてもリアリティーがないんですよ。
最初はもしかしたら実話ベースの話なのかなと思って見てましたが、すぐにそんな訳ないなと思ってしまったゴリゴリのフィクションでした。残念。
コメント
何か、ニコラス・ケイジなんかは今や「B級映画の帝王」化しているけど、今作のマットデイモンや「アオラレ」のラッセル・クロウみたいな一流どころがB級に出ていると何かしっくり来ないというか、バカになりきれない中途半端感というか。
ニコラス・ケイジは完全に違う世界に行ってしまいましたね。まだまだラッセル・クロウやマット・デイモンは主流のほうで頑張っているような気がしますが。
こいつの映画評はマジで価値がない。何故なら本人が映画の楽しみ方が分かってないから。
この映画評は、主人公ビルがキリスト教福音派の敬虔な信徒として描かれている点を見落としていると思います。オクラホマ州スティルウォーターという田舎町に暮らす純朴な父親が、娘を救出するために愛情のモンスターと化す話ではないでしょうか。ビルの保守的アメリカ魂がフランス文化の中で、滑稽なほど異様で、ある意味頼もしい姿となって現れています。