全体的に安っぽくて、嘘っぽくて、どこにもメッセージが刺さらない感動狙いの駄作。泣きたい人のためのファーストフードです。5点
永遠の0のあらすじ
健太郎は祖母が亡くなった葬式で実は祖父の賢一郎は自分の本当の祖父ではないことを聞かされる。
それを聞いてもやもやしていたところにライターの姉、慶子から一緒に祖父のことを調べようと誘われ、渋々引き受けることに。
まずはずっと祖父だと思っていた賢一郎のところに話を聞きに行くと、彼の本当の祖父は特攻隊の宮部久蔵だと知る。
二人は宮部久蔵のことを知る人たちに会いに行き、片っ端から話を聞きに行った。多くの人は宮部久蔵のことを臆病者だといった。彼はパイロットでありながら死ぬのを嫌がり、生き残ることにこだわったという。それは戦時中では珍しく、型破りなことだった。
一方でパイロットとしては優秀で、多くの若手パイロットたちを育成した立派な教官でもあった。健太郎はそんな宮部久蔵の話を聞くうちに宮部久蔵の数奇な人生と運命にたどり着いていく。
永遠の0のキャスト
- 岡田准一
- 三浦春馬
- 井上真央
- 吹石一恵
- 風吹ジュン
- 夏八木勲
- 染谷将太
読者のたかはしゆ。さんのリクエストです。ありがとうございます。
永遠の0の感想と評価
「DESTINY 鎌倉ものがたり」、「ALWAYS 三丁目の夕日」などの作品で知られる山崎貴監督による、戦争ドラマ。作家百田尚樹の同名小説の映画化です。
大げさな演技、演出をベースに孫姉弟たちが祖父のルーツを調べるために戦争時中の知り合いを訪ね、いかにも作り話っぽい都合のいい思い出話を聞いて感動する、といういかにも泣きたくて仕方ない視聴者向けに作られた作品です。
元日本兵の話を聞き>回想シーン>別のおじいちゃんの話を聞き>回想シーン>また別の人に話を聞き>回想シーン、というパターンの繰り返しで構成的な捻りが一切ありません。
戦時中のエピソードは宮部久蔵が「俺は死にたくないです」と誰かに言って喧嘩、また別の誰かに「俺は生きたいです」と言って喧嘩、という展開の連続で、もしや上官に怒鳴られたり、殴られたりするのを趣味にしている人なのかなって思えるほどでした。お前の信念は分かったけど、別にわざわざそれ言わなくてもよくないって突っ込みたくなりましたね。
戦時中のシーンはもれなく現実味に欠け、登場人物たちがどんな口調で喋ったらいいのか演技指導が行き届いていません。すごい昔の田舎の若者みたいな奴がいるのに対し、現代風の奴までいて時代錯誤も甚だしいです。基本、ずっと誰かがギャーギャーわめいて、笑うときはみんな集団で同時に笑ってうるさいだけで、「シン・ゴジラ」や「64ロクヨン」とかと演出が同じですね。邦画の基本演出があれだもんね。
兵士たちはみんな肌艶良くて、髪の毛サラサラで、清潔で、健康そうな顔してるし、役作りもダメダメです。健太郎と慶子の姉弟会話がものすごく気持ち悪くて、あの関係性と距離感が不自然でなりません。二人とも高校生ぐらいなのかなって思ったら社会人であんなノリで話してるんですね。ああ、キモい。
この物語の不思議なところは母の清子をすっ飛ばして、なぜか孫の健太郎と慶子が祖父のことを調べるというプロットです。なんで清子が調べねえんだよ、お前のお父さんのことだろうが。自分の実の父に今の今まで無頓着だった奴が二人の子供にリサーチさせて話を又聞きして泣き出したりしてるからね。
「ええ、私、お父さんと会ってたんだぁ。知らなかった。まじ卍」とか言い出しそうでしたもんね。
まるで自分の父のことじゃないような距離感なんだよね、あのお母さんが。なにが「お母さんに本当のお父さんのこと聞いたことあるけど、なにも教えてくれなかった」だよ。お前の好奇心はそれぐらいのものなのかよって。
あと清子の夫は登場しませんが、シングルマザーという設定なんでしょうか。それならそうと祖父のルーツよりも姉弟はまずは実の父親のことを調べたほうがいいよね。もしかしたら実の姉弟じゃないかもしれないしね。順番的にはそれから祖父だろ。いろいろすっ飛ばしすぎだから。
あとね、祖父の話を聞きた過ぎて夜遅くに他人様の家に衝動的に行っちゃうなんてことはありえないから。ちゃんとアポ取ってから行けよ。それも合コン会場から直行ってなんだそりゃ。合コン会場もあきらかに私語厳禁みたいな高級レストランだったし、滅茶苦茶だからな。
一度も会ったこともない、見たこともない祖父の話を赤の他人から聞かされている状況で孫が興奮して大声を出したりしないじゃないですか。
「そんな、じゃあお爺ちゃんはそれがなければ死んでいなかったかもしれないのぅ。まじでー!」とかよそ様の家に夜遅くにお邪魔して言わないでしょ。そもそもそこにその時間にいる時点で失礼なの。そんなんだから司法試験落ちるんでしょ。絶対、試験会場に遅刻するタイプでしょ、あいつ。
物語のクライマックスとなるのは宮部久蔵が特攻隊として出撃する当日の出来事でしょう。その日、宮部久蔵は自分が乗るはずの戦闘機を、ある兵士の戦闘機と交換しました。その兵士こそが姉弟がずっと祖父だと慕ってきた賢一郎だったのです。
そのシーンがまた最高で、「おいちょっと、俺、このゼロ戦機に愛着があるからこれ使わせてよ。お前は俺の戦闘機に乗っていけよな」などといってあろうことか直前で戦闘機を交換してしまう、というバカげたエピソードになっていました。
ほんとさ、お前らは命懸けの特攻ミッションをなんだと思ってんだよ。なにを「ちょっとお前のチャリ貸してよ」みたいなノリで戦闘機を交換しちゃってんの。そんなことが許されるわけねえだろ。どんな甘い軍隊だよ。スイーツ選び放題のレストランかよ。
そのおかげで命拾いをした賢一郎は戦後、命の恩人の宮部久蔵の妻と娘を訪ねます。宮部久蔵にもし俺になにかあったら妻と娘の面倒をよろしくと頼まれていたからです。それを何を勘違いしたか賢一郎は自分の命の恩人の妻を寝取ってしまい、挙句の果てには結婚までしてしまいます。そう、つまり夜の面倒まで見ちゃったそうなのです。宮部久蔵はそんなところまで面倒を見てくれって頼んだんじゃないと思うよ。
あれを美談にするなら宮部久蔵の妻をもう絶世のブスにするしかないんですよ。もっというと性格も口も悪くて、どうしようもない下品な女ぐらいでちょうどいいんですよ。それでも命の恩人のためなら俺が一生面倒見ますっていうのならそれはそれはすごい話だと思うよ。「大先輩のためだから仕方がない、自分一生目をつぶります、押忍!」とか言ってね。
もしそうなってたらなんて素敵な話でしょうか。もしかしたらスーパードライな僕でも涙を流していたかもしれません。
でも松乃を美女にした時点で、あわよくば感が出てしまい、なにをお前はどさくさに紛れていい思いしてんだよっていう話になっちゃってるんですよね。永遠のリアリティーゼロでした。
コメント
永遠の0もFukushima 50もなんですが、政治的に物議を醸す以前に、作品自体がお粗末ですよね。大袈裟な演技に、安直(だけど無駄なとこ複雑)なストーリー…そもそも論評されるようなレベルではないですね。
偉そうな事書いてすいません。
いや、ほんとおっしゃる通です。これが戦争賛美とか、特攻隊員を美化した、とか議論になる以前の問題なんですよね。そもそも子供向けみたいな作りなので政治論語る価値がないっていう。
返信ありがとうございます。
ですよね、もう本当にうんざりしてきます…見応えのある邦画が見たいものです😑
小説でずっこけました、これは観ないですねー。
リクエストにお応えいただきありがとうございます。高橋です。
見事に撃沈ですね。笑
でも、映画男さんのレビューはどんな映画でもしっかり作品と向き合ってくださるので好きです。
これからも時折リクエストを送ると思いますので、またよろしくお願いします。
リクエストありがとうございました。
つまらなかった。その一言ですね。残念ですが。
最初に出てきた空母がそこそこ見せるCDでしたのが、唯一の印象です。後は、忘れました‼️(笑)
僕ももう忘れました。
いつも楽しく見ています。
これ映画館でみました。
一緒に映画にいった人がよかった!!というのでモヤモヤしていましたが、このレビューを見てスッキリしました。
すっきりしていただいて嬉しいです。
泣ける!って宣伝されている邦画って、どの紹介ページを見ても信用できなくて…ですがあなたのレビューは一番的確で安心できます。
なので厚かましいお願いです。映画男さんがご覧になった作品で、マジで泣ける邦画教えてください!
泣ける邦画思いつきませんねえ。泣かせようとする邦画はたくさんあるけど