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ザ・レポートはCIAの闇を描いた良作!感想とネタバレ

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この記事は 約6 分で読めます。

テロとの戦いのために権力を間違った方向で使ったアメリカ諜報機関の闇を描いた、怒りとやるせなさがこみあげてくる衝撃の実話。

地味で、淡々としたストーリーだけど、とても面白くできていて、権力者たちの争いがリアルでした。76点

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ザ・レポートのあらすじ

ダンことダニエル・J・ジョーンは、ダイアン・ファインスタイン上院議員の下で、CIAが長年秘密裏で行ってきた尋問プログラムについての調査をすることになった。

尋問プログラムとは名ばかりで、実際はテロの容疑者や勾留した者を拷問する危険なプログラムだった。

特に2001年に同時多発テロが起こってからというものCIAは国民を守るためといって、拷問を正当化してきた。

CIAが拷問にかけた容疑者の中にはテロ組織とほとんど無関係の人たちもいた。ダンはCIAの膨大な資料を何年もかけて分析し、数千ページのレポートにまとめ、CIAのエージェントやCIAが雇った専門家たちの責任を追及しようと試みる。

しかしダンが闇の歴史について調べていることを知ったCIAはあらゆる手段を使って調査の発表を阻止しようとする。

ザ・レポートのキャスト

  • アダム・ドライヴァー
  • アネット・ベニング
  • ジョン・ハム
  • ジェニファー・モリソン
  • ティム・ブレイク・ネルソン
  • ベン・マッケンジー

ザ・レポートの感想と評価

「不都合な真実」のプロデューサーとして知られるスコット・Z・バーンズが監督した、実話ベースの政治ドラマ。

CIAがやってきた拷問の数々を人生をかけて暴露しようとした勇敢な男の戦いを描いたシリアスで社会的意義のある作品です。

いわばCIA VS 上院 VS 大統領府の戦い、ともいえる内容になっていて、お互いがお互いの面子を守るために、ときには牽制し、ときには脅しをかけ、ときには妥協して、なんとか解決へと向かっていく様子をつづっていきます。

CIAの拷問の実態が凄まじく、一連の拷問シーンは、見ていて虫唾が走ります。同時に怒りが込みあげてきて、これを見てアメリカを嫌いになる人がいても不思議じゃないです。

CIAの拷問プログラムが特に積極的に採用されていたのはブッシュ政権下のテロとの戦いの真っ最中のときだそうです。

CIAは身柄を拘束したアラブ系の容疑者たちをアメリカの法律に及ばない他所の国の秘密刑務所に連れて行き、そこで大音量の音楽を24時間流し続けたり、容疑者を裸にして屈辱を与えたり、水攻めやして溺れさせたりなど、やり放題やっていたわけです。

その数は100人以上に上り、拷問の被害者たちは正式な裁判にかけられることもなく、CIAのさじ加減で殺されたり、ひどい怪我を負わされたりしていたのです。

そもそも決定的な証拠があれば正式な裁判をすればいいだけの話です。しかし大した証拠もなく、また次なるテロ事件を防ぐために焦っていたCIAは裏の手段で情報を引き出そうとしていたわけです。

そのときに使われた尋問プログラムと呼ばれる拷問の数々が、実は全然情報を引き出すためにも全く効果的じゃなかったことが分かり、問題になったわけです。

CIAのスタンスとしては、たとえ拷問をしても、テロを防げればそれでアメリカ国民が救われるのだったら問題ない、という考えだったようです。

もちろんテロリストや凶悪犯に甘ちょろい尋問をしても決して口を割らないだろうから、ある程度厳しい取り調べが必要なのは理解できます。

ただ、CIAの場合、無実の人々まで拷問にかけ、殺しちゃったりしてるんですよね。あんなことやってるから怒りを買われて、怒りの連鎖によってまた新しいテロリストを生むんですよね。

そしてその事実をCIAは闇に葬ろうとしたのに対し、上院の捜査官のダンことダニエル・J・ジョーンは事実を公表しようとした、というのがこの映画のストーリーなわけです。

ちなみにこの動画に出てくるのがダニエル・J・ジョーン本人です。

例えば、ドキュメンタリー映画「グアンタナモ、僕達が見た真実」では、2年以上キューバにあるアメリカ軍の施設で拷問を受けた無実の人達の体験が語られています。こちらも必見の映画なのでぜひ見てみてください。

テロを受けたアメリカが、自分たちのプライドと面子を守るために、どれだけ異常な状態にあったかですよね。

CIAからしたら世界一の諜報機関として、同時多発テロを食い止められなかったのは恥ずべき出来事だったようで、そういった心情が拷問を容認するに至った理由の一つなんでしょうね。

アメリカがタチが悪いのは、CIAにしても、大統領府にしても、みんなそれぞれの正義感と強い愛国心を持って動いていることで、正義のためなら悪事も平気で働く、というパラドックスが生まれることです。

だから拷問を実行しているときは本気で拷問が有効だって思ってるもんね。水攻めが有効だと主張しながら、100回以上同じ容疑者に水攻めするっていうね。有効ならそんなにする必要ないはずだろっていう突っ込みどころに気づかないんですよね、本人たちはマジだから。

また、同じ国のために働く職員でありながら、いかにアメリカの政府機関や組織が複雑にできており、またそれぞれの組織の権限をコントロールすることが難しいかが分かります。

それぞれの組織に法律の専門家がいて、法律を都合よく解釈するから、違法行為だろうが、非人道的行為だろうが、なんとでもなるんですよね。

すごく印象的だったシーンは、CIAや大統領府の横やりが入って、レポートを公表できるか分からなくなったダンがメディアに情報を暴露するかどうか悩む下りです。

彼にとっては人生をかけてきてまとめたレポートだから公表されなかったときの絶望と無力感にはとても耐えられそうにありません。それならいっそのことメディアにリークしてでも世間に知らせるべきなんじゃないか、という彼なりの正義感が生まれるわけです。

しかしそれをしてしまうと、場合によっては国家反逆罪に問われてしまうリスクもあるわけです。

シチズンフォー」のスノーデンがアメリカ政府からスパイや反逆者扱いされているのも、結局はアメリカ政府の不都合の真実を暴露したからであって、正義の観点では決して間違ってないと思いますけどね。

アメリカの正義ってアメリカ政府のためになるかならないかっていう定義の下に成立していて、英雄と反逆者が紙一重みたいなところがありますよね。

ダンも危うく反逆者扱いされるところだったし、自分自身の正義と、アメリカ政府の立場を天秤にかけて苦しむ様子は痛いほど伝わってきました。

それにしてもCIAの保身隠蔽体質はひどいものがありますね。あれだけの非人道的なことをやって誰一人お咎めなしって。果たしてダンはあの結果をどう思ったのでしょうか。

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