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アメリカン・ファクトリーは中国対アメリカ経済を描く工場物語!感想

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この記事は 約6 分で読めます。

中国人オーナーがアメリカで、アメリカ人社員を雇ったらどうなるのかを描いた上質のドキュメンタリー映画。中国経済が世界を支配したらと思うと恐ろしくなる話です。72点(100点満点)

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アメリカン・ファクトリーのあらすじ

オハイオ州モレーンにはかつてゼネラルモーターズが工場があり、多くの人々がそこで働いていた。

工場が文字通り、モレーンの人々の生活を支え、町の経済、雇用に大きく貢献していたのだ。ところが2008年、景気の悪化と共に工場は閉鎖し、1万人以上が失職した。

そこに救世主のごとく現れたのが中国の自動車ガラス製造メーカーのフーヤオだった。フーヤオは国際市場の開拓のためにゼネラルモーターズが所有していた工場に自社工場を開設し、モレーンに多くの雇用を生み出したのだった。

しかしいざ働き始めると、アメリカ人にとってフーヤオの労働環境は決してアメリカのスタンダードとはいえなかった。

給料は低く、安全面の配慮もされていなかった。中国人社員とアメリカ人社員はろくにコミュニケーションが取れず、お互いが不信を募らせていった。

そんな中、工場内で労働者の権利を守るために組合を発足するべきだといった声が上がってくる。それに対し、フーヤオは組合の設立に猛反対し、強い批判にさらされることとなる。

アメリカン・ファクトリーの感想と評価

オバマ夫妻の製作会社ハイヤー・グラウンド・プロダクションズによる労働ドキュメンタリー。スティーヴン・ボグナーとジュリア・ライカートの共同監督作品にして、2020年アカデミー賞ドキュメンタリー賞にノミネートした映画です。

長年田舎町の経済を支えていたゼネラルモーターズの工場が閉鎖したことをきっかけに中国企業が同じ場所に進出し、人々を救うかと思いきや、ふたを開けてみたら、労働者をただの駒としか見ていないブラック企業だった、というお話です。

できるだけ中立に描こうとしているものの、中国批判になっているのは否定できないでしょう。

それもそのはずフーヤオのアメリカ人社員に対する扱いはひどいの一言で、中国では当たり前にやっている人権を無視した社員への対応をアメリカに進出してもさも当然のごとく同じようにやろうとしているからです。

法律的にできないことは目をつぶっても法律が許す限りは、あらゆる手段を使って社員を搾取しようとしているのが見え見えで中国企業の恐ろしさが分かりました。

そもそも中国のフーヤオの工場職員は月に1、2日しか休みがないんだそうです。また、社員の多くは単身赴任でそんな労働条件で働いているため、妻や夫や子供にすらほとんど会えないんだそうです。

中国ではそれが当たり前なのかもしれないけど、早い話が奴隷労働ですよね。そんな企業がアメリカに進出して、自己主張の強いアメリカ人を雇う、という時点で無謀だし、どうなるか目に見えてるでしょう。

さすがにアメリカ人はちゃんと休みはもらえてるようですが、ガラスという危険物を扱っているにも関わらず、職場の安全は一切確保してもらえていないようです。

そのため大けがをする社員が続出し、そうじゃなくてもかなりリスクのある仕事を無理やりやらされそうになったりと、アメリカ人社員はたちまちフーヤオに疑問を抱くようになります。

創業者の曹会長がまた曲者で、最初こそ中国とアメリカの文化の融合を目指し、アメリカ人現地社長を雇ってきたにも関わらず、そのうち全員を首にして幹部を中国人だけにしてしまうという独裁者ぶりを発揮します。つまりはアメリカ人の意見なんて聞くだけ無駄、ということらしいです。

そんなオーナーに限って「社員はみんな家族だ。みんなのおかげでこの会社があるんだ」とか言いますよね。都合のいいときだけ、他人を「家族」っていう人間にろくな奴いないでしょ。

中国の本社のシーンを見ると分かる通り、社内のパーティーで社員たちが会社をよいしょする内容の余興をやらされたり、挙句の果てには結婚式を上げたりするんですよ。会社というより、もはや宗教なんですね。

そして「みんなのために、国のために頑張ろう」と言いつつ、休みもろくに与えずに働かせるんだから人を人として見てないんだろうなぁ、という印象を受けました。

中国の工場の社員は、ガラスを扱っているのにゴーグルすらつけず、特別な手袋も支給してもらえず、普通の軍手で作業してるからね。

ガラスなんて細かいから軍手の中にも入ってくるだろうし、目の中にガラスの粉が入って失明してもおかしくないでしょう。そんな状況を見て中国を訪問したアメリカ人たちは衝撃を受けていました。

また、そんな様子を普通にカメラに撮らせちゃってるってことは、そもそもそれが非常識なことだと思っていないんでしょうね。

曹会長は、実際のところ社員のことなんて微塵も心配しておらず、利益のことしか考えていないのが分かります。他人の意見は一切聞こうとしないし、分かりやすい悪徳オーナーのキャラに仕上がっていました。

ただ、実際に多くの人を雇用しているし、それで多くの失業者が救われたのも事実なわけで、もちろんただの悪者ではないんですよね。

利益を追求しないとそれこそもっと多くの社員が路頭に迷うことを考えると、オーナーはオーナーで難しい立場にあるのは間違いないでしょう。

それにアメリカの労働問題を抱えながらも黒字化を実現するって、やっぱりやり手なんですね。

皮肉なのは、よっぽど悪条件で働いている中国人のほうがアメリカ人の社員より、何倍も優秀だということです。

どこかそれは日本人の国民性とも共通するものがありますね。単純作業をしていても基本的にみんな真面目で従順だから、レベルの高い仕事をするんですよね。

フーヤオの本社の中国人の働きぶりなんて動きに無駄がないもんね。朝礼の仕方からしてもほぼ軍隊みたいだったし。

一方でアメリカ人の労働者は、そもそも労働意欲がないし、ダラダラお喋りしながらマイペースで仕事をしているような人たちばかりで、なおかつ自己主張だけは激しいという有様です。

経営者側からしたら、そんな労働者たちに高い給料は払いたくないし、ただでさえ大した仕事をしないのに、組合を作られてこれ以上権利を主張されたらたまったもんじゃない、というのも一理ありますね。

そういった中国とアメリカのギャップが一つの工場内に如実に現れていて、決して融合が取れていない両文化のぶつかり合いがすごく興味深かったです。

これまではアメリカ企業が中国に工場を開き、低賃金で中国人を使うのが当たり前だったのが、今ではアメリカに中国企業が工場を開いて、アメリカ人労働者をこき使っている、というのもなかなかシュールですね。

シュールだけど、これが現実で、世界経済のポジションが入れ替わろうとしている兆候のようにも見えなくもないです。

中国が世界経済を牛耳るようになったらアメリカだけじゃなく、そのうち日本や欧州諸国でも同じようなことが起こるだろうし、みんな中国人の奴隷みたいに働かされる日が来てもおかしくないですね。チャイナパワー脅威だわ。

コメント

  1. りゅぬぁってゃ より:

    ロン・ハワード監督の『ガン・ホー』を彷彿させますね。
    バブル期の日本企業が米国に工業を作る話で、コメディとして誇張した作風という大きな違いはありますが。(沐浴する日本人が出てきたり)

    協調性至上主義の日本と個人主義なアメリカ、最後は日米の社員が一緒にラジオ体操して〆るオチとか…。