映画「名前」は演技はいいのに脚本と演出が絶望的!感想とネタバレ

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ポテンシャルはあるのに、見事に可能性をつぶしている人間ドラマ。辻褄や説得力のある展開がないせいで、だんだんストーリーに付き合いきれなくなっていく作品です。38点(100点満点)

映画「名前」のあらすじ

映画『名前』予告編

中村正男は、経営していた会社をつぶしてしまい、逃れるようにしてやってきた茨城で、偽名を使って偽りの第二の人生を送っていた。

妻が入院中だと嘘をつき、工場の仕事に就くと、まもなくその嘘が工場内でバレてしまう。

ところがそんな危機一髪のタイミングで、娘を名乗る少女、葉山笑子が工場で中村正男を尋ねに来る。それをきっかけに二人は度々時間を共にするようになるが、葉山笑子が中村正男に付きまとうようになったのにはある理由があった。

映画「名前」のキャスト

  • 津田寛治
  • 駒井蓮
  • 勧修寺保都
  • 松本穂香
  • 内田理央
  • 池田良
  • 木嶋のりこ
  • 金澤美穂

映画「名前」の感想と評価

戸田彬弘監督による、ひょんなことから偽名を使う男と女子高生が交流する疑似家族ドラマ。原案は直木賞作家の道尾秀介。

序盤は面白そうな映画の雰囲気をかもしつつ、後半になると、ああやっぱり面白くないわ、と失速していく、プロットの穴とストーリー構成ミスの多い映画。

物語は、会社経営に失敗した男が名前を変えて自分を偽りながら田舎で生活していると突然彼を自分の父親だと信じる女子高生が現れ、行き場のない二人が心を通わせていく、という内容になっています。

最初は、偽名を使って嘘ばかりを通して生きる男、中村正男を追っていくような視点で話が進んでいき、一体なぜ彼がそんな生活をしているのかが謎めいていて興味をひかれるのに対し、途中から女子高生、葉山笑子の高校生活にフォーカスし始めたことで、どんどん話が面白くなくなっていきます。

だって普通に考えて、名前を偽って生きるミステリアスな男の話と、うざつのあがらない普通の女子高生の話のどっちが見たいよって話じゃないですか。

二人とも孤独を抱えて、行き場がないから、お互いに惹かれ、お互いを頼るようになったとか、いくらでも付け足すことはできるけど、あの二人が交流をするならお互いが血のつながりを確信し、確認し合っていなければありえないですよね。

父娘なら一緒にいたくもなるかって納得できるけど、なぜか実は葉山笑子は実の娘じゃなかった、っていう、いらないオチにしているところにセンスのなさを感じました。

この映画の最大の問題点は、そもそも中村正男が偽名を使う理由がどこにもないっていうことです。

それも一つの偽名ではなく、複数の偽名を使って、小さな田舎町で暮らすというかなり面倒で、リスキーなことに挑戦している割には、それに見合うだけの理由や動機を用意していないのがダメダメですね。

罪を犯して逃げてるとか、借金を踏み倒してやばい人たちに命を狙われてる、とかならまだ分かるけど、「違う自分になりたかった。そのほうがみんなが幸せになれるんじゃないかと思って」などと少女漫画みたいな理由をさらっと言っちゃうところが普通にキモイです。そんなおっさんこの世にいねえよって思いましたね。

外国に住んでると、たまに日本から逃げてきたみたいな人と出くわすんですよ。実際、偽名を使って生活している日本人と何度か知り合ったことがあるんですが、やっぱりそういう人たちってなにかしら日本でやらしてるんですよね。

だから自分の過去や経歴や正体を知られたくない、という心理状態から別人になっちゃうみたいです。

でも日本でやらかしてきた奴らって、海外に行っても大抵再びやらかすんですよ。それであの人変だよねえ、みたいな噂が広まって、「偽名使ってるらしいよ」ってすぐにバレちゃうっていうね。

また、偽名を使うときってかなりのネーミングセンスが問われるようで、変身願望がある人って、憧れの人の名前とかをすぐに付けたがるから、明らかにミスマッチな名前になったりするんですよね。外人の名前付けてた奴いたからね。そりゃバレるだろって。

中村正男の場合は、中村正男のほうがむしろ偽名っぽくて、偽名の久保のほうが本名っぽいのがいけませんね。あれは脚本家のネーミングセンスのなさが出ましたね。

そもそも中村正男は、どの名義で家を借りたり、車を買ったりしてたんだろう。それに複数の名前を使って、普通の人たちとわざわざを人間関係を築いてたみたいな設定になってたけど、その意図が不明確でしたよね。なにからなにまで雑なんだよなぁ。

お前はどんだけ外で知り合いと出くわすんだよって思ったし、一つ一つの設定をちゃんと詰めてないから、漫画みたいな世界になってるのが残念ですね。

それに対して女子高生のバックグランドは、学校で浮いていて、友達が少なく、母子家庭で育ったっていう映画の題材としては弱すぎで、正直全く彼女のエピソードに興味が湧かなかったです。演劇の話とかまじどうでもいいでしょ。

こういう曖昧な映画って、ラストはなんとなく問題が解決したみたいな雰囲気で終わらせようとするよね。

でも中年の嘘つきおじさんと孤独な女子高生が実は親子じゃなかったっていうことが分かっただけで、本当は何も変わってないのにね。

それなのになぜか翌日学校に行ったら、全てのわだかまりが消えていて、みんな仲良しに戻ってたのが意味不明でした。

墓参りしたら全部清算されるっていうノリなのかなぁ。ああいういい加減さが信じられないんだよね。

一方で俳優たちの演技は良かったです。主役からわき役までみんなちゃんとしたパフォーマンスを見せていました。

だからこそもっと脚本と演出を頑張れよっていう映画でしたね。これに関しては演者は全く悪くないです。監督と脚本家のせいです。

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