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判決、ふたつの希望(原題L’INSULTE/THE INSULT)

この記事は 約4 分で読めます。

日常の小さな争いをもとにレバノン人とパレスシナ人の歴史や人種問題を浮かび上がらせるヒューマンドラマ。

敵意むき出しストーリーが徐々に優しくなっていく展開が希望に満ち溢れていて、良かったです。68点(100点満点)

判決、ふたつの希望のあらすじ

レバノンの首都ベイルート。その一角で住宅の補修作業を行っていたパレスチナ人の現場監督ヤーセルと、キリスト教徒のレバノン人男性トニーが、アパートのバルコニーからの水漏れをめぐって諍いを起こす。

このときヤーセルがふと漏らした悪態はトニーの猛烈な怒りを買い、ヤーセルもまたトニーのタブーに触れる “ある一言”に尊厳を深く傷つけられ、ふたりの対立は法廷へ持ち込まれる。

判決、ふたつの希望公式サイトより

判決、ふたつの希望の感想

ジアド・ドゥエイリ監督によるアカデミー賞外国語映画ノミネート作品。レバノンを舞台にした政治、社会、人間ドラマで、ささいな喧嘩がエスカレートし、人種問題へと発展していく様子を描いています。

物語の主人公は自動車整備士のレバノン人トニーと工事現場の監督でパレスチナ人のヤーセル。

ある日、ヤーセル率いる建設会社が条例に違反している住宅を修復しようとしたところ住人であるトニーが猛反発し、工事の邪魔をします。

それに腹を立てたヤーセルがトニーを侮辱したことで二人はトラブルになります。トニーは工事の邪魔をしたことを棚に上げ、相手に謝罪を求めたものの、ヤーセルは自分は悪くないと言ってこれを拒否していると、上司から問題が大きくなる前に謝るように促されます。

ヤーセルはレバノンに住むパレスチナ難民だけに立場が弱く、下手をすれば職を失ってしまいます。

しぶしぶ上司に連れられたトニーに謝りに行くと、今度はトニーがヤーセルに「パレスチナ人なんて(イスラエルの元首相)アリエルシャロンにみんな消されてしまえばよかったんだ」などと酷い言葉を浴びせます。

謝罪をしようと思っていたヤーセルもこれには逆上し、勢いでトニーを殴ってしまいます。トニーは肋骨を骨折する大怪我を負い、ついにヤーセルを起訴することに。

もともとトニーの目的は謝罪をさせることだけだったのが、政治的思想の強い弁護士が双方の弁護に付くと、裁判は一気に泥沼化し、町ではレバノン人とパレスチナ人が衝突する事態にまで発展する、というのがストーリーの流れです。

パレスチナ人とレバノン人のいざこざがテーマになっているだけにその背景には複雑な人種、宗教、歴史の問題が存在します。

特に日本人にとっては誰がレバノン人で誰がパレスチナ人であるかも見ていて分かりづらいうえ、レバノン人とパレスチナ人の微妙な関係性を理解するのは至難の業でしょうう。

そのためざっとでいいのでパレスチナ人に対し強硬姿勢を貫いたイスラエルのアリエル・シャロン首相やレバノン内戦といった出来事のことは軽く調べておくといいかもしれませんね。

>>アリエル・シャロン首相のプロフィールはこちら

>>レバノン内戦の背景

かくいう僕も中東の情勢、歴史、人種問題のことはよく分かっていないんですが、それを踏まえても、この映画はなかなか見ごたえがありました。

人種同士の摩擦があるだけにちょっとしたことが大問題に発展する様子には説得力があるし、両者のプライドの高さと意地の張り合い、そして面子を守ろうとする姿は、どこか日本社会にも通じるところがあるように思えました。

はっきり言って部外者からしたら、それぐらいのことどちらかが折れればいいじゃんって言いたくなるようなどうでもいい口論なんですよ。

でも本人たちはお互いに虐殺や差別の歴史をくぐってきてるから敵対心をむき出しにして一歩も引けなくなるんですよね。

また、裁判が進むに連れて争っている本人たちよりも周囲のほうがヒートアップしていく様子がリアルです。あんな場面を見ていると、そりゃ戦争も起こるわって思います。

最後は上手くまとめていたけど、実際のところレバノン人やパレスチナ人がこれを見てどう思ったのか気になるところですね。映画では丸く収めても視聴者の中では反発もあっただろうなぁ。

中東に限らず、人種問題を取り上げる映画って綺麗に終わりがちですよね。それが視聴者に受けるということもあるだろうけど、中東映画に関してはそうしないと暴動や面倒なことが起こるから、仕方なく中立の立場を取ってストーリーを締めくくっているのかなあ、なんて勘ぐってしまいます。

いずれにしてもテーマがデリケートだから作り手は気を使って大変でしょうね。本当にご苦労さまです。

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