2017/05/15

この世界の片隅に

戦時中を逞しく生きる女性の半生を描いた人気アニメーション。前半はボロボロで後半からだんだん面白くなっていく、もったいない作品です。59点(100点満点)

あらすじ

1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。

シネマトゥデイより


読者の信ちゃん、るおんごさん、ぽんたさんのリクエストです。ありがとうございます。

文句

第二次世界大戦中の広島呉市を舞台にした戦争家族アニメ。映像や編集が雑で、ストーリーも荒削りのところがあるものの、少しずつ物語に引き込まれていく不思議な魅力のある作品です。

もっとちゃんと作れば名作になっていたでしょう。しかしながら色々なミスを犯していて残念です。冒頭からストーリーが唐突なところがあり、説明不足が否めなかったですね。

例えば画面に度々表示されるこんな日付。

「8年12月」

8年って西暦8年なのか、昭和8年なのか、大正8年なのか、平成8年なのか分からないじゃないですか。

原作を読んだ人、この映画がおおよそどんな話か知っている人、歴史背景を知っている人ならいいけど、予備知識なく見る人だって少なくないだろうし、外国人だって見るんだし、いきなりあれはないですね。

むしろ「昭和8年(1933年)」ぐらいの詳しく書いてもいいぐらいです。ストーリーの伝え方にも全体的に当然わかってるでしょ的な進行が多く、日本の戦争の歴史が頭に入っている人には分かっても、そうじゃない人には分かりづらくできていました。

そもそも日本の市場しか見据えていないんですかね。視野が狭いなぁ。

原作を基にした映画の問題は、日本市場どころか既存のファンをターゲットにしているようなところがあって当然原作も読んでて知ってるでしょ的な傲慢なストーリーテリングに終始するところです。だから原作を知らないと、取り残されるような時間帯が必ずあるんですよ。

ヒロインの北條すずは女優のんが演じています。なんで広島弁で話す女の子を関西出身ののんにやらせるんでしょうか。幼年時代のすずも大人になったすずも同じのんが担当しているせいで、大人の声をした少女が大きくなってもやっぱり大人の声のままという摩訶不思議な現象が起きていました。

なにより最大のミスは各シーンがブツ切りで次のシーンへと移行する編集の下手さとパラパラ漫画かよっていうぐらい登場人物たちの動きがカクカクしていたところです。回想シーンがいきなり割り込んできたり、見せ場の大事なシーンまで尺が短すぎたり、色んな意味で損をしています。

なんでもこの映画を製作するにあたって資金が不足したことからクラウドファンディングでお金を集めたそうですね。

もしかしたら単純に制作費を削って削ってやっとできた結果仕方なくあの4コマ漫画風飛び飛び映像になったのかもしれません。

この映画を好きになるか、嫌いになるかは女性視聴者ならヒロインのすずに好感を持つかどうか、男性視聴者なら彼女に惚れるかどうかが鍵になりそうです。

すずは可愛くて、能天気で、天然ボケで、優しくて、嫌味がなく、健気で、愛情溢れるいい女という設定の上に成り立っていて、二次元のキャラに平気で心動かされる男子たちが絶好の餌食となるでしょう。

逆に結婚に理想と夢を描く女性の場合は、自分とすずを重ね合わせたりするのでしょうか。いずれにしても作品の80%はすずのキャラに支えられています。

女優のんのゴリ押しなのか、すずのゴリ押しなのかは微妙なところです。どっちにしても僕からすると、幼馴染の男を旦那の住む実家に連れていくような女の神経が分からないし、旦那が寝ているすぐ隣の建物で他の男に抱かれるかどうか寸前のところまでいくあんな無神経な奴、嫌ですけどね。

旦那も旦那で家の中から鍵をかけたりして、戦場に向かう海兵隊員に自分の嫁を差し出したみたいな感じになっていましたね。どっちもひどいな。

ちょっと笑えたのが、アニメにしてはちょくちょくキスシーンとかイチャイチャするお色気シーンがある点です。嫁いでいく女はどんな気持ちで旦那に抱かれるのかをリアルに描いてくれればもっと良かったんですが、さすがにそこまでは冒険はしないみたいです。

僕にとってこの映画が面白くなったのは、すずが右手を失った下りからです。それまで可愛いだけだったヒロインがあれを機に可愛いだけじゃなく、心も身体も傷ついた人間として立ち上がっていく展開には意外性がありました。

絵を描くことが好きだったヒロインが筆を持てなくなったとき、料理が得意だった彼女が米をとぐのも満足にできなくなったときに彼女の真価と人間性が浮かび上がるようでした。

一番好きなシーンは空襲を受けて家を燃やされたとき、すずが怒りとやるせなさに身体を震わせながらブチ切れたシーンです。雄たけびを挙げ、片手で水の入ったバケツを放り投げ、火の中に飛び込んでいく彼女のワイルドな姿にちょっとキュンとなりました。

二次元のキャラに平気で心動かされる男子たちの気持ちがちょっとだけ分かった瞬間でした。ちょっとだけですよ。本当にちょっとだけですよ。だからほんの少しだけだってば。

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