クロッシング(原題Crossing)

脱北者をネタにして感動を狙って外しまくった失敗作。映像も演技もストーリーもしょぼすぎて、わざとらしい演出の数々にあくびがでました。17点(100点満点)

あらすじ

中国国境に近い北朝鮮の村で妻子と幸せに暮らすヨンス(チャ・インピョ)だったが、ある日妻が肺結核を患う。風邪薬さえ手に入らない状況に彼は中国へ出稼ぎに行くが、不法な現場が発覚し警察に追われる身に。その間に病状が悪化した妻は亡くなり、一人残された11歳の息子ジュニ(シン・ミョンチョル)は父を探しに家を離れる。

シネマトゥデイより


文句

キム・テギュン監督による感動ポルノ。脱北者の問題を身近で感じているはずの韓国人が撮ったというのに本気度とリアリティーがこれっぽっちも感じられず、北朝鮮の実情を伝えたいというより、視聴者を泣かしたいという意気込みしか伝わってきませんでした。

ストーリーは2002年に脱北者25人が北京のスペイン大使館に駆け込んだ事件をモチーフにしたようです。ただ、大使館に駆け込む部分は全体のほんの一部で、そこから話を膨らませて膨らませて、北朝鮮に関する残酷で悲惨なエピソードを並べてるだけに過ぎません。

主人公を正義感が強く、勇敢な男のように描写しているのが痛いです。彼が愛する妻のために薬を買いに国境を越えて中国へ行くまではいいでしょう。

ところが大事なお金を落したり、空港で暴れたり、息子を自分のところまで呼び寄せる際には密入国の真っ最中に大声で朝鮮語で携帯で話したり、実際はリスク回避の感覚が薄い、ただの無計画男でした。

その感覚は日ごろから表れていて、そもそも薬も買えないぐらい貧困に苦しんでるのに犬を飼ったりしてるし、挙句の果てにはちゃっかり二人目の子供を妊娠させちゃってるからね。それで昔はサッカー選手でしたとか言われてもね。今ゴール決めてどうするんだよって。

何かあるとすぐ取り乱すし、病気の奥さんの前で大声で子供を叱ったり、自制がとにかく利きません。そんな男を格好良い男みたいな描き方をしているのが共感できなかった最大の理由です。お父さん役、息子役を演じた俳優も二人とも下手で、いちいち泣き方がわざとらしかったですね。

一方でクオリティーうんぬんではなく、北朝鮮の現状を伝えることに意義があるんだよといった意見もありそうです。確かにそうかもしれないけど、実際に面白くないし、それほど話題にもなっていないからからほとんど人々に伝わってないはずです。

大義名分だけでいい映画が撮れるならそれでいいけどそうはいかないのが現実で、やっぱりどうせ撮るなら面白く撮らないと。

この手の映画は題材が題材だけに批判するのもためらってしまうようなマジな雰囲気がありますよね。悪口を言おうもんなら、非人道的だとさえ言われてしまいそうで怖いです。

しかし強い批判を受けない分、賛否両論も巻き起こらないし、話題にもならないからやっぱり多くの人に見てもらえないという性質が見え隠れします。

今、世界に衝撃を与えるには逆に脱北者の問題をコメディータッチで撮るのがいいかもしれませんね。ちょうどナチス映画にユーモアを加えた「ライフ・イズ・ビューティフル」が大成功したように。涙ものじゃなくて、今こそ朝鮮人のユーモアの真髄を見せてもらいたいものです。

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