哀しき獣(原題THE YELLOW SEA/黄海)

韓国の男たちがナイフや斧で格闘する、痛くて、エグくて、ちょっと面白いクライムアクション。ストーリーは複雑にしすぎた感はありますが、全体的にはクオリティーの高い作品です。59点(100点満点)

あらすじ

グナム(ハ・ジョンウ)は、中国延辺朝鮮族自治州でタクシー運転手としてまじめに働いている。だが、妻を韓国に出稼ぎに出した際に作った借金はかさみ、頼みの綱の妻からの送金も連絡さえもすでに途絶えてしまっていた。そんなとき、彼は地元を牛耳る犬商人のミョン(キム・ユンソク)から借金清算の代償としてある条件を出されて……。

シネマトゥデイより


文句

チェイサー」、「哭声/コクソン」でお馴染みのナ・ホンジン監督によるバイオレンスアクション。中国延辺朝鮮族自治州に住む韓国系中国人を扱った犯罪ドラマで、殺しては逃げて、また殺しては逃げてを繰り返す復讐の連鎖を描く物語です。

韓国系中国人を主人公にしたのはアイデアとしてとても面白いですね。中国延辺朝鮮族自治州なんていう地域があることすら僕は知りませんでした。なんでもそこには80万人の韓国系中国人が住んでいるそうです。

また、彼らは中国朝鮮族と呼ばれ、韓国にいる50%以上の中国朝鮮族が犯罪で生計を立てているといった衝撃的なテロップと共に物語の幕が上がります。

同じ朝鮮民族でありながら、韓国系中国人が韓国ではアウトサイダーとしてみなされている背景や歴史は、韓国人じゃないとなかなか理解できないでしょう。

欧米の人が見ても日本人が見ても、その辺の彼らが抱えるアイデンティティーの問題や闇にまでは気が回らないはずです。僕も一番最初にこの映画を見たときはただのバイオレンス映画としてしか理解していませんでした。

今回、もう一度見直したら、主人公のグナム(ハ・ジョンウ)や悪役のミョン(キム・ユンソク)などは韓国系中国人として中国語のセリフを話したりしているんですね。

二人共素晴らしい俳優ですが、リアリティーを出すなら二人の役は本物の韓国系中国人を探してくるか、中国人俳優がやるべきでしたね。韓国と中国の合作にしても面白かったと思います。

ストーリーは、ギャンブルや喧嘩三昧の生活に明け暮れる暴れん坊のグナムに目をつけた、地元のギャングのボス、ミョンがある男の殺人を依頼し、韓国にグナムを送り込むことで本題へと入っていきます。

グナムは事前にターゲットの行動を抑えて、いざ殺人を実行しようとするものの突然現場に他のマフィアたちが現れ、グナムはマフィアたちを殺してしまいます。それによって警察、マフィア、そして地元のギャングにまで追われるようになる、といった複雑な構成になっています。

グナムとミョンがあまりにも不死身すぎて、アクションシーンの数々は漫画の世界です。二十人ぐらいに囲まれても平気でその場を切り抜けるし、ミョンに関しては何回刺されても痛そうな表情すら見せないタフな男で、大分オーバーな描写になっています。

犯罪社会に生きる男たちがナイフや包丁や斧なんかをブンブン振り回すはいいとしても、誰一人拳銃を持っていないのはどうかと思いますね。冷静に考えると、武器のレベルで言ったらかなりしょぼい組織ですよね。

カーチェイスや追跡のシーンの数々は迫力と興奮に満ち溢れています。大型トレーラーを横転させたり、複数の車の衝突の様子なんかはハリウッド映画にも勝るとも劣らない撮影技術で、あのシーンだけでも相当なお金がかかっているのが分かります。

後半になるにつれ、登場人物たちがただ誰かを殺したいだけみたいな内容になるのがちょっと残念です。結局、男たちが命の奪い合いをしているのは、もとをたどれば女が原因というのがなんとも悲しくて馬鹿ですねえ。その点では邦題の「哀しき獣」は登場人物の男たちの性を表すには的を射ています。

そういえば、韓国映画の復讐ものってだいたい女をめぐる復讐ですよね。韓国の男たちは浮気や不倫を絶対許さないみたいな設定が笑っちゃいます。どうせみんなしてるくせにねぇ。

>>「哀しき獣」はdTVで視聴できます

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