2017/04/03

ホームレス ニューヨークと寝た男(原題HOMME LESS)

一見、金持ちそうで成功してそうなファッションカメラマンが実はビルの屋上で生活するホームレスだった、というドキュメンタリー。NYを通じて成功と失敗、華やかさと質素さの両側面を映し出している、とてもアメリカ的な物語です。59点(100点満点)

あらすじ

アメリカのニューヨーク。52歳のマーク・レイはファッションモデル兼フォトグラファーとして活動し、ブランドスーツとスマートな身のこなしが板についている。ところが、豪勢なパーティーに出席した後にマークが帰ったのは、雑居ビル街のアパートの屋上だった。家を持たず、家族や恋人も作らないマークの日常に、カメラは3年間密着する。

シネマトゥデイより


文句

52歳のイケメンでダンディーなカメラマン兼俳優マーク・レイの日常を追いかけた、ちょっと笑えて、ちょっと悲しい、人生を感じさせる記録映画。アメリカンドリームの現実をこれでもかというぐらい見せ付けてくれます。

マーク・レイは元ファッションモデルで、若いころは世界中でモデルの仕事を経験し、やがて写真家に転身。舞台の裏側で働くようになります。

NY生活が長いマーク・レイは街にもファッション業界にもたくさんの知り合いがいます。世界中のトップモデルの写真を取り続け、常に華やかな世界の中にいる彼自身、スタイリッシュな洋服に身を包み、現役時代を彷彿させる優雅な身のこなし方をします。その姿は誰の目から見ても、いわゆる成功者です。

仕事やパーティーを終えてすっかり夜が更けた頃、マーク・レイは友人が住むアパートのビルに向かいます。行き先は友人宅ではなく、その屋上にある寝床。防寒のために何枚ものセーターを着込んでから、彼は冷たい地面の上で眠りにつくのです。

まるで一日の中で成功と転落を凝縮したような人生を送っているのがこの男マーク・レイで、興味深いのは彼が麻薬や酒に溺れたり、あるいは仕事をすることを拒んだりして、社会から外れていったホームレスとは一線を画することです。

仕事もしているし、知り合いも友人も家族もいる。でも住む場所がない、または家を借りるほどの経済力がないという状況なのです。

そんな彼に同情や共感できるかどうかによってもこの映画の評価は変わってきそうです。50代になるまで自由きままに生きてきて、節約も貯金もせずにここまで来たんだから、自業自得だという見方もできるでしょう。

僕は彼に同情や共感はできませんでした。まず家が借りられないくらい経済的に困ってるのになんでタバコを吸ったり、酒やコーヒーを飲むんだよって話なんですよ。嗜好品なんて一番最後でいいだろ。

普段付き合っている人たちが華やかな芸能人ばかりなのと、マーク・レイにセレブのイメージが付きまとっていることもあってか、強い見栄や虚栄心があるんじゃないかなあとも思いましたね。

職業的にきれいな格好をしなくてはならないとか、業界の人たちとなにがなんでも付き合わないといけない、といった感じではなく、自ら成功者や金持ちを演じることに酔っているような印象を受けました。

ただこれはマーク・レイに限ったことじゃないですよね。日本人にも高級車を乗り回してるくせに狭いアパートに住んでる人とか、ブランド品で身を固めた女子高生とかいますからね。その極端で、ユニークな例がマーク・レイなのかもしれません。

彼に対してはちっとも共感は得られませんでしたが、この映画を通じて一人の男の生き様が見れたのには満足しています。すごくNY的だなあと感じたのは、みんな忙しくて誰もマーク・レイが何者で、どこに住んでいるのかなんて気にしていない点です。

それはビルの屋上で寝ている男をありのまま受けいれてあげるといった寛容さではなく、ただ他人に対して極力無関心なだけで、都会特有の寂しさがまざまざと感じられましたね。

人々の出入りが激しいファッション業界に身をおいているというのももちろんあるでしょう。しかしマーク・レイがときおり言葉を交わす街の人々とも一見つながっているようで、結局は誰とも深い関係性を築けない壁と孤独がそこにありました。

マーク・レイがフレンドリーで、誰とも気さくに話しができるのも今目の前にいる人と自分が無関係だからこそできるのでしょう。

それにしても52歳独身で、YMCAのジムでシャワーを浴び、アイロンをかけ、地下鉄にタダ乗りし、屋上で眠るなんて、想像するだけでも、しんどいですよね。

寝床であるビルの屋上からは、成功の象徴とも言える摩天楼がそびえ立ちます。年末年始やイベントの日にはそこからきれいな花火が見えます。手を伸ばせばアメリカンドリームがすぐに掴めそうな場所にいながら、現実は成功とはほど遠いというなんとも皮肉な環境があの場所でした。

ラストに流れるエンドソング(Cat Power – The Greatest)も悲しげで、しんみりしますね。

マーク・レイはこの映画のせいであの場所から立ち退かなければならなくなったそうです。今では週の半分を実家で過ごし、もう半分は無料で泊まらせてくれるNYのカウチサーフィンの家を転々としているそうです。

この映画でどれだけのギャラを得たのかは分かりませんが、これ一本で一生食べていけるほど甘くはないようです。これからもマーク・レイのしんどい人生は続いていくのでしょう。まあ、それは誰の人生も同じですが。

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