アメリカン・ドリーマー 理想の代償(原題A MOST VIOLENT YEAR)

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ブラック企業が当たり前の石油業界で、クリーンなビジネスをすることを信念とした男が、ライバル会社や検事からの必要な嫌がらせを受けながらもピンチを乗り越えていく企業ドラマ。不信に満ちた独特の雰囲気を味合う作品です。55点(100点満点)

あらすじ

1981年のニューヨーク。モラルを無視したつぶし合いが平然と行われている石油業界に乗り込み、公明正大なビジネスを経営理念に掲げた会社を夫婦で立ち上げたアベル(オスカー・アイザック)とアナ(ジェシカ・チャステイン)。全財産を投げ打って事業拡大に必要な土地の購入に取り掛かるが、それを待っていたかのようにオイルの強奪、脱税の嫌疑といった思わぬ問題が降り掛かってくる。アベルたちの悪評が広がり、銀行の融資も絶たれ、アナとの仲も揺らぎだす。

シネマトゥディより


文句

マフィア映画ともいえそうな石油業界の裏側を捉えた企業ドラマです。ライバル会社との駆け引き、ユダヤ人との不動産取引、検事との牽制のし合い、社員との衝突などが社長目線で描かれていて、物語は終始不気味なまでに静かに進んでいきます。

主人公は石油会社を一代で築いたやり手社長アベル。つぶし合いが当たり前の業界で彼はずっとクリーンな戦略で会社を運営してきたものの、全財産を投げ打って事業拡大に乗り出した途端、検事から多額の脱税容疑をふっかけられるは、何者かに石油を強奪されるはと不運が続き、一気に倒産の危機に立たされます。

何者かが会社の石油を狙ってタンクローリーを強奪する事件が多発したのを受け、会社の運転手たちは自衛のために銃を携帯したいとアベルに懇願します。しかしアベルはそれを受け入れず、あくまでもクリーンなやり方に固執します。同時にその信念が彼の首を絞めることになる、というのがおおまかなストーリーです。

テーマはずばり人生において正攻法が最善なのか、ときには裏の手段も使うべきなのか、という究極の選択じゃないでしょうか。ライバル会社がマフィアとずぶずぶの関係で、裏取引を当たり前に行っている中で、自分だけが合法的な道を進むと決めて譲らないアベルの信念は尊敬に値します。

しかしその一方で、「正しい」方法にばかりとらわれて、家族や社員たちを危険な目にあわせてしまっている、という矛盾と本末転倒が見ていて歯がゆいです。

日本人の大部分は基本的に正攻法タイプなので、アベルに共感できるでしょう。ただ、会社経営者が見たらまた違った感想を抱くかもしれません。「会社経営はそんなに甘くないんだよ」と思うんじゃないでしょうか。みんなが健全な会社運営をしているような社会ならまだしもブラック企業、脱税、汚職、強奪が当たり前のような世界で正攻法の道を突き進もうとすると、どうしても無理が生じるからです。

そんな正直者のアベルに長年付き添ってきた妻のアナが実は隠し財産を持っていたというのがこの映画の面白いところですね。あれはアベルにとっては完全にアウトで離婚してもいいぐらいの過ちですが、奥さんの言い分は言い分でまた分からないでもないから、どうしようもないですね。

実はアナの父親が暗黒社会の人間で、そのせいか彼女はどんなことをしても生き延びてやるという根性の座った人間でした。そんな肝っ玉奥さんだからこそあの夫といいバランスを保って、会社経営が成功していたと言えなくもないです。そういえばふと昔の職場の経営者の人がこんなことを言っていたのを思い出しました。

「刑務所に入るぐらいの覚悟がなかったらお金儲けなんてできない」

まさにこの映画にぴったりの言葉です。

>>「アメリカン・ドリーマー」はU-nextで視聴できます。

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