2016/03/12

裸足の季節(原題MUSTANG)

truco

トルコの田舎町を舞台にした、厳しい親戚家族に育てられた5人姉妹の家族ドラマ。親戚が決めた相手と強制的に結婚させられていく姉妹の葛藤と自由への叫びを描いた芸術路線の映画で、ミニシアター系が好きな女性が見るべき一本です。67点(100点満点)

あらすじ

5人姉妹の末っ子であるラーレは姉妹の中でも人一倍気が強く頑固者。彼女は両親を事故で亡くし、しつけに厳しい祖母と叔父たちの下で暮らしていた。ある日、年頃になった長女が男性のもとへと嫁がされていくと、それを皮切りに次々と姉たちが結婚させられ、ラーレの元を去っていくようになる。ラーレはそんな家族の伝統に疑問を抱き、強く反発するになる。やがて自由を得るには大都市イスタンブールに行くしかないという結論に至る。

文句

アカデミー賞ノミネート作品」です。トルコ人の思春期の様子、田舎の家族のしきたりなど文化の違いを感じさせる人間ドラマで、興味深かったです。

物語は、姉妹たちが学校帰りに海に寄って海水浴をするところからスタートします。いきなりそこで彼女たちは水着にならず、制服のまま豪快に海に飛び込んでいきます。女の子だけでなく、男子生徒たちもまた上半身裸にもならずYシャツのままで泳ぎだします。

それだけでも結構な文化の違いに驚かされるのですが、もっと驚いたのは姉妹たちが男子生徒たちと何気なく水浴びをして遊んでいると、村人たちに変な噂を立てられてしまうことです。

「あの娘たちは男たちに肩車されたままマスターベーションしてたんだって、なんて下品なんでしょう」。

田舎町でそんな噂を流されたら親戚中の恥だ、と言って祖母や叔父は怒り狂います。それからというもの姉妹たちの「性的」な要素を排除しようと、親戚は化粧や電話を隠し、無駄な外出も禁じるようになります。肌を露出しない服を着させ、料理を覚えさせ、女として生きるとはなにかを教えていきます。

彼らからすれば普通なのかもしれませんが、村人たちの「性」に対するアンテナの鋭さが尋常じゃなくて笑えます。何よりも「処女」であることを重んじていて、新婚初夜のシーツに血がついているかどうかを叔母さんたちがチェックしにきたり、病院に処女検査をさせに行ったり、とものすごい執着を見せます。

その圧力に姉妹たちは反発し、処女を守りながらも結婚前にアナルセックスをしたり、処女なのに村中の男と寝たと嘘をついたり、結婚前にカーセックスをしたり、それぞれが自分なりの方法で反抗していきます。ひとつ疑問に残ったのが、あの姉妹たちはトルコにおいてはかなり反抗的な「不良少女」なのか、それとも今の若者はみんなあんなものなのか、どうなんでしょうかね? トルコに詳しい人がいたらぜひ教えていただきたいところです。

この映画はインスタンブールを「自由」の象徴として描いていて、不良少女の姉妹たちが家族の掟から逃れるために命がけでイスタンブールを目指すところまでを追っています。しかしそれは岩手の女子大生が東京に憧れて上京する、といったような軽いノリではなく、見つかれば最後、親戚の叔父さんたちに殴り殺される可能性も決して低くないというマジな話なのです。

そのせいか田舎に住む美人5人姉妹の話なのに「海街diary」のようなチープさと胡散臭さがありませんでした。田舎の子民家でオシャレな人生をエンジョイしている女たちの映画とは真剣味が違うわけで、世界各国の映画祭で評価されているのはそれだけグサりとささるメッセージ性があるからでしょう。

それにしても姉妹たちがトルコ人女性のイメージをひっくり返すぐらいエキゾチックな美人でしたね。あれが不細工姉妹だったら彼女たちの運命は果たしてどうなっていたのかも気になるところです。

美人姉妹だからこそ彼女たちが「しょうもない男と無理やり結婚させられた可愛そうな姉妹」といったイメージが強くなったというのはあると思います。なぜなら姉妹だけじゃなく、男たちもまた強制的に結婚させられているのは変わらず、それについてはほとんど同情の余地を残していませんね。

これは考えようによっては、女の上から目線で撮った映画といってもいいかもしれません。ちなみに監督は女性です。これが不細工姉妹だったら、結婚したくても村にもらい手がいなくて、「叔父さん、誰でもいいから結婚相手見つけてきてちょうだい」とか言いだしたりして、お見合い結婚させられても「むしろ結婚できてよかったじゃん」といった話になってしまっていたかもしれませんよ。

そういう意味では美人姉妹と不細工姉妹の両パターンのシナリオを作ったら、視聴者も彼らの結婚文化に対してもっと複雑な感情を抱いていたはずです。