さよなら、アドルフ(原題: LORE)

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なんだか面白そうな雰囲気を持ちつつ、思わせぶりな感じで終わっていく芸術路線戦争映画。

ナチス対ユダヤ人戦争映画には珍しく、ナチス側の人々の目線と敗戦後の状況が描かれている興味深い一本です。46点(100点満点)

さよなら、アドルフのあらすじ

1945年、敗戦して間もないドイツ。ナチスの幹部だった両親が去り、14歳の少女ローレ(ザスキア・ローゼンダール)は、妹と弟と共に南ドイツから900キロ離れたハンブルクの祖母の家へ向かうことに。途中、貼り出されたホロコーストの写真を見たローレは困惑する。翌日、連合軍兵士に呼び止められたローレはユダヤ人青年のトーマス(カイ・マリーナ)に助けられ……。

シネマトゥディより

さよなら、アドルフの感想

ベルリン・シンドローム」で知られるケイト・ショートランド監督による戦争ドラマ。

ナチス映画といえば、いつもユダヤ人、つまりは被害者目線オンリーの映画ばかりを見せられてきたような気がしますが、これは逆です。

実際にユダヤ人が多大な苦しみを受けてきたのは事実ですが、多くの映画がどれだけユダヤ人が苦しんだ、という点しかフォーカスしてこなかったことには物足りなさを感じていました。

その一方でこの映画はナチスの幹部を両親に持つ少女がナチス側の人間として戦後を生き延びていく様子を伝えています。戦争に負け、両親は連合軍から身柄を追われ、子供たちと離れ離れになる。両親を失った14歳の長女ローレは弟と妹たちを連れながら、命からがら祖母の家を目指します。

幼かったローレが突然一家の主になり、弟と妹の面倒を見ていくうちにみるみる大人の顔になっていく過程が見事です。

戦争に敗れたことでさまざまな事実が明るみに出て、価値観もアイデンティティーもあっけなく崩れていく。そんな中ユダヤ人青年と出会い、ひょんなことからローレは彼と行動を共にします。はるか遠くの祖母の家を目指すノリは「母をたずねて三千里」風ロードムービーといったところです。

常に何かが起こりそうな緊張感もいいです。そしてときおり見せる官能的、性的なシーンも期待を沸かせます。ただ、そのどれもが結局は脅し、騙し、見せかけであることに少ながらずがっかりさせられました。

ローレは生命の危機を感じて、なんとか子孫を残そうといった本能に任せてユダヤ人青年とセックスするべきでした。やりたいけど、ユダヤ人だから嫌だ、汚い、という根強い遺恨と葛藤がところどころに表れていたのはよかったけれど、それを乗り越えた末のセックスシーンこそが視聴者が望むものであり、この映画に欠けていた最大のスパイスです。

そこを見せないなら、最初からセックスを匂わす伏線を張るべきじゃなかったですね。ラブホテルまで行ったのにやらせない女の感覚で映画を撮るとこういう映画ができるんです。

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