
見れないことはないけど、特別面白くもない、比喩や象徴的な表現に終始したブラジル映画。国際的に評価されるほどのものではないです。55点
シークレット・エージェントのあらすじ
1977年、軍事独裁下のブラジル。元教授のアルマンド・ソリモンエスは、カーニバル休暇中にレシフェに到着する。息子フェルナンドは、亡き妻ファティマ・ナシメントの死後、母方の祖父母と暮らしている。アルマンドは、元アナルコ共産主義活動家のドナ・セバスチアナが経営する宿に迎え入れられ、政治的異端者たちと共に暮らす。彼らの中には、アンゴラ内戦の難民カップルも含まれる。
一方、腐敗した州警察のエウクリデスとその息子セルジオとアルリンドは、休日中に捕獲されたサメの中から人間の足が発見された件を調査するため呼び出される。
アルマンドの反体制派ネットワークは、彼を「マルセロ」という偽名で州警察の身元確認所に配置する。そこではエウクリデスによる歓迎と保護を受けるが、アルマンドはエウクリデスの傲慢さに苛立つ。アルマンドの新しい職は、ほとんど覚えていない亡き母に関する資料を探す機会も提供する。
そんな中、サンパウロでは、殺し屋ボビーとアウグストが、軍事政権の元大臣でエレトロブラスの幹部エンリケ・ギロッチに雇われ、アルマンドを政治的・個人的な理由で暗殺しようと計画する。
シークレット・エージェントのキャスト

- ワグネル・モウラ
- カルロス・フランシスコ
- マリア・フェルナンダ・カンディド
- ガブリエル・レオーネ
- アリシ・カルバーリョ
シークレット・エージェントの感想と評価

「バクラウ地図から消された村」のクレベル・メンドンサ・フィーリョ監督による、政治サスペンススリラー。権力者と揉めたことで、国家ぐるみの暗殺計画のターゲットにされる一般市民の男の人生を描いた物語で、前半退屈、後半まあまあ、全体的にはやや惜しい映画です。アカデミー賞ノミネート作品。
ブラジル映画で話題になるのは、ギャング(もしくは警察)ものか軍事政権ものの二つしかないのかよっていうぐらい、ほぼほぼこの二つのテーマに絞られます。本作は後者で、軍事政権化のブラジルで、元教授で研究者の主人公が、国営電力企業の幹部と対立したことで、反逆者とのレッテルを張られ、暗殺のターゲットになってしまう、という話です。
シークレット・エージェントというタイトルとは裏腹に、実は主人公はいわゆる典型的なスパイではなく潜入捜査をするわけでもなく誰かを失脚させようという目的もありません。ただ、身を守るために、身分を偽って警察内部に入り込み、逃亡のチャンスを伺うだけという設定になっていて軍事政権化ではしがない一般市民が、ときとしてスパイのように命がけで身分を偽ってコソコソ生きなければならなかった現状を描いています。 そこがこの映画が従来のスパイ映画とは違う点でしょう。
主役を演じたワグネル・モウラは、そこそこいい演技しています。やっぱり彼はどんな役をやっても存在感ありますね。ちなみに本作でアカデミー賞男優賞にノミネートしています。
物語の設定や背景はいいとして、無駄なシーンが多すぎるのが本作の最大の難点です。ちょっとしたエピソードがメインストーリーとつながっていくのかと思いきや、ただ軍事政権化で起こっていたあるあるエピソードで終わっていて、それが伏線だけ敷いて回収していないような違和感を残していました。
例えばガソリンスタンドで転がっている遺体。サメに食べられた人の「脚」。それぞれが国家権力による暗殺が日常であることを描写するには至っても、メインのストーリーとリンクしていかないんですよね。そのくせメインキャラクターと絡めてるから、見てる方からすると、で、あれはどうなったの?としか思えないんですよね。
「脚」に関しては、身元を奪われた人間、真実の切断、新聞の虚偽報道によって死が別の物語に置き換えられるといった象徴的な役割を果たしていたとも考えられるんでしょうが、あんまりピンと来なかったですね。
日常の会話とか無駄が多いから尺も2時間40分と長いし、もっとハイペースで、ドキドキハラハラのスパイ映画に仕上げてたらかなり違ったでしょう。
散々主人公が命を追われる様子を最初からつづっていたくせに、主人公の最期をちゃんと描かないのも謎でした。あれなら絶対、最後に死ぬまでの瞬間を見せないとダメでしょ。いつどこで誰に殺害されたのかを。それを新聞の切り抜きを見せられて終わりっていうのはちょっとなあ。あえてドラマチックにするのを避けたのか、どういう意図なんでしょうね。
あと、ちょくちょく入ってくる、「現在」のパートいらないよなあ。息子が父親の記憶がないというのを強調して、軍事政権下では人々の存在そのものが消されていたということを言いたかったのか。映画館がクリニックになっていたのも書き換えられた歴史を表しているのか。そういう象徴的な表現が多すぎて、あんまり入っていけなかったですね。残念。


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